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【歴史ランキング1位達成】 累計326万7千PV 僕の戦国時代  作者: 虫松
第七部 中国地方・九州地方編

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第1話 鞍替えしました。

1573年

京は静かだった。


将軍・足利義昭が挙兵したという知らせが入ったとき、

信長の側に動揺はなかった。


理由は単純だ。

もう、将軍に味方する勢力が残っていなかったからだ。


三好も、六角も、浅井も、朝倉も

将軍を担げそうな者たちは、すでに信長に刈り取られていた。


義昭は、ようやく悟ったのだろう。


(信長には、足利家を復興させる気などない)


だが、気づくのが遅すぎた。


京から追い出される将軍の行列は、

かつての威光とはほど遠いものだった。


この瞬間、

室町幕府は歴史上、滅亡した。


将軍の行き先は、もう一つしかなかった


足利義昭が頼ったのは、

西国最大の大名、毛利元就。


幕府再興の御内書。

もはや、それを受け取る場所は、そこしか残っていなかった。


信長にとっては、明白だった。


また毛利か。

そして、前回の毛利との戦いの敗因も、はっきりしていた。

宇喜多家が、裏切らなかったこと。


ならば次は「味方」では足りない。

属国にする。


備前。岡山城。


今回の交渉には、二人が立っていた。


木下藤吉郎から名を変えた羽柴秀吉。

そして明智光秀。


秀吉は笑う。

光秀は黙る。


その沈黙が、何より重かった。


「今や、信長様の世の中だでな」


秀吉は鼻で笑い、唾を吐くように続けた。


「毛利に付く?

 あんな沈みかけの舟に、まだしがみつく気かや」


一歩、詰める。


「そのままおったら、

 城も首も、まとめて海の底だわ」


にやりと歯を見せる。


「生きたいなら、こっち来い。

 死にたいなら、好きにせえ」


「百姓のわしでも分かるでな。

 勝つ方に付くのが、賢い生き方だがや」


最後に、突き放すように。


「さあ直家殿、 首を洗うか、飯を食うか、どっちだ?」


宇喜多直家は答えない。

目を伏せ、ただ聞いている。


そこで、光秀が口を開いた。


「裏切りとは、申しますまい」


声は低く、感情がない。


「これは、選択です」


「毛利に付けば、 いずれ織田と戦い、

 最後は“討たれる側”になる」


「織田に付けば、 汚れ役を引き受ける代わりに、

 家は残る」


光秀の言葉は、刃物だった。


情ではなく、

理で斬る。


宇喜多直家の沈黙


直家は知っていた。


自分は、善人ではない。

英雄にもなれない。


暗殺もした。

毒も使った。

主君も、親類も切り捨ててきた。


だが

ここで毛利に殉じれば、

宇喜多家は「忠義の名」と引き換えに滅ぶ。


それだけは、選ばない。

直家は、ゆっくりと顔を上げた。


「……子は、いずれ大人になる」


その一言で、全てが決まった。


僕は、そこで口を挟んだ。


「お子様たちの将来も、お考え下さいませ」


わざと、少し嫌味を込めて。


心の中では思っていた。


断ったら、

また人質交渉かな。

誘拐ビジネス、儲かるし。


直家は、その目を見て、理解した。


脅しではない。

これは、現実だ。


この前の身代金で、

宇喜多家の財政は、すでに限界だった。


金がない。

兵も足りない。

毛利に付いても、先はない。


「……織田に、付こう」


その声は、震えていなかった。


感情を切り捨て、

誇りを捨て、

家を生かすための決断。


秀吉は笑い、光秀は、わずかに頷いた。


「では――」


「宇喜多家は、織田の傘下に入る」


すぐに資金援助が決まった。

事実上の救済だ。


属国。だが、生存。

時代は、流れる

時の流れに、身を任せるしかない。


次は、毛利元就。毛利軍。

今度は、宇喜多家も、こちら側だ。


宇喜多秀家の鞍替え


それが、

この戦国乱世を生き延びる者の、

最も正しい選択だったのだから。



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