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【歴史ランキング1位達成】 累計326万7千PV 僕の戦国時代  作者: 虫松
第六部 四国地方・越前編

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第10話 両家が滅びました。

比叡山焼き討ち後に再び、朝倉へ

朝倉家は、すでに傷ついていた。


姉川で主力を失い、浅井と結んだことで信長の怒りを一身に受け、

比叡を頼った選択が、完全に裏目に出ていた。


兵は集まらぬ。米も足りぬ。

そして何より気がない。


「……織田が来る」

「今度は、逃げ場がない」


一乗谷の城下町は、

かつて“第二の京”と呼ばれた面影を失い、

戸は閉ざされ、声は潜められた。



信長の軍勢は、もはや“戦”ではなかった。


隊列は整い、補給は切れず、

背後を突く敵もいない。


朝倉義景は、決断を先延ばしにした。


「まだ、交渉の余地はある」

「時を稼げば、何かが変わる」


だが、変わるものは、何もなかった。


城は包囲され、支城は一つ、また一つと落ちる。


援軍は来ない。浅井は、もう“存在しない”。


小谷城。


かつて難攻不落と謳われた城は、

主を失っていた。


浅井長政は、そこにいない。


彼のいない城は、

ただの石と土の塊だった。


「殿が……殿がおられぬ」


その言葉が、

家中を静かに殺していった。


抵抗はあった。

忠義もあった。


だが、未来がなかった。


やがて城は落ち、浅井家は、歴史の表から消えた。


朝倉義景は、逃げた。


それが彼の選んだ、最後の選択だった。


だが、逃げる先に、もはや“守る朝倉”はなかった。


裏切り、

通報、

そして包囲。


義景は自刃した。


静かで、誰にも看取られぬ死だった。


そして、残ったもの


朝倉家は滅び、浅井家も滅んだ。


比叡の炎から始まった流れは、

一切、止まらなかった。


だが一人だけ、

歴史の“余白”に逃げ込んだ男がいる。


変えられた、ひとつの運命


浅井長政は、生きている。


本来なら、小谷で自刃し、

信長の酒宴で首が飾られるはずだった男。


だが、それは起きなかった。


僕が戦場の隙間に手を突っ込み、

歴史の歯車を一枚だけ、ずらしたからだ。


国は救えなかった。

家も残らなかった。


それでも一人の人間の生は、残った。

浅井長政を生きながらえさせることができた。


それだけで、この血の戦国時代においては、

十分すぎる“反逆”だったのかもしれない。


歴史は、大きくは変わらない。

だが、確かに、少しだけ、歪んだ。


それでいい。

すべての人を救うなど、最初から、できはしないのだから。




◇◇◇



越後。

雪の気配が、空に混じり始めた頃。


使者が、密かに訪れた。


「……比叡山、焼き討ちに遭いました」


浅井長政は、黙っとった。


「信長様の言葉が……伝わっております」


使者は、震えながら言う。


「生きとっても、歴史にはおらんと」


長政、しばらく沈黙。


やがて、ぽつり。


「……そやけ」


、静かに落ちる。


「わしは、 あの男の世界から、逃げたんや」


拳を膝に置く。


「情を選んだ時点で、 もう武将やあらへん」


目を閉じる。


「せやけど……」


小さく息を吐く。


「市を、地獄に引きずり込まんで済んだ」


遠くを見る。


「それでええ」


雪が、静かに降り始める。

炎とは逆の、冷たく、白い世界で。




【第五部 完】

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