表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【歴史ランキング1位達成】 累計323万9千PV 僕の戦国時代  作者: 虫松
第五部  中国地方編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

157/177

第10話 籠城しました。

【上月城】

山城というものは、

ただ高いだけではない。


尾根を削り、谷を穿ち、

人の足と心を折るために造られている。


上月城こうづきじょうは、

その典型だった。


深い空掘り。

折れ曲がる虎口。

登れば矢、下れば石。


一般的に、城攻めに必要な兵は、守る側の三倍。


籠城。

それしか、道はない。


……そう、思っていた。


「……え?」


報せを聞いたとき、耳を疑った。


信長様、京へ帰還。


理由は

「これ以上の消耗は無益」。


だが本当の理由は

負けて、拗ねて、帰った。


「……帰っちゃうの……?」


しかも、追い打ち。


木下藤吉郎。後の秀吉。


別所氏(赤松家)制圧を命じられ、

三木城攻略へ転進。


戦線離脱。


僕の戦国時代は終わった。


城には、僕の中田軍と、

尼子軍だけが残された。


尼子の兵が、こちらを見る。


何も言わない。だが、分かる。


(お前らが無茶やったからや)


その視線。


責任が、重い。


「逃げるが勝ち」


そんな言葉、今は毒でしかない。


城内は、敗戦後の国のようだった。


誰も、顔を上げない。

誰も、未来を語らない。




毛利軍は、急がなかった。


城を囲み、掘る。


深い空掘り。さらに塹壕。


柵。竹槍の垣根。


一重、

二重、

三重。


「攻めぬ」


殺さず、

削る。


夜になると、

法螺貝ほらがい


低く、長く、

腹に響く音。


太鼓たいこ


どん、

どん、

どん。


眠れぬ夜が、

続く。


兵は、目の下を落とし、

槍を握る手が震え始めた。


士気低下。


このままでは

戦う前に、死ぬ。


僕の決断

「……この城は、墓になる」

そう思った。


優れた軍将とは、勝つ者ではない。


生き残らせる者だ。


僕は、尼子の将たちを集めた。


「撤退します」


怒号。


「腰抜けが!!」


「尼子は、ここで死ぬ!」


説得は、命懸けだった。


そして決まった。


(繰り引きを成功させ、最小限の兵の損害で撤退させる。)



【繰り引き】《くりびき》

本隊をスムーズに撤退させるされる為2つの遊撃部隊が交互に

敵の追撃隊を攻撃(片方が攻撃すると片方は撤退する)

本隊がある程度進むと、また遊撃隊が交互に攻撃を加え。

全軍を無事、撤退させる戦術。



上杉謙信が伝えたとされる、

伝説の撤退戦術。


賭けだ。


その頃、信長


京御所近く。


信長は、報せを聞いた。

上月城、撤退準備。


毛利、包囲継続。


そして、自分が帰った後だ。


信長

「……はぁ?」


次の瞬間。


「なに勝手なことしとるだぁぁぁ!!」


杯が、壁に叩きつけられる。


「わしが!

 わしが戻れ言うたか!?」


家臣が、

震える。


「あの城は捨て石じゃ!!

 耐えとれ言うたじゃろが!!」


畳を踏み鳴らし、

信長は吠える。


「負けたで帰った思われるじゃろ!!

 舐められるんじゃ!!

 毛利に!!」


歯ぎしり。


「藤吉郎もおらん、 兵もおらん……

 じゃがなぁ!!」


目が、獣のそれになる。


「それでも守らせるのが将じゃろが!!

 逃げるな!!

 逃げるな言うとるんじゃ!!」


誰も、返事ができない。


信長は、怒り狂い、

叫び続けた。


だが。


その声は、

もう、上月城には届かなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ