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【歴史ランキング1位達成】 累計322万1千PV 僕の戦国時代  作者: 虫松
第二部 中部地方編

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第2話 謀反がおこりました。

1556年 5月


信長の弟、織田安房守秀俊が信長を那古城を訪れた際、城主、林美作守が謀反を企てるが失敗。6月織田安房守秀俊が家臣に殺される。8月信長の弟、織田信行は那古城城主、林通勝、林通具、柴田權六勝家(柴田勝家)の支援を得て、謀反が起こる。弟、織田信行の謀反。稲生の合戦によりこれを打ち破る。


稲生にて、弟・織田信行の謀反は打ち破られた。

捕らえられた信行は、縄を打たれ、清洲へと引き立てられる。


その夜

信長のもとへ、母が現れた。


母の嘆願

「信長……信長やぁ……」


声は震え、膝は崩れ落ちる。

「頼むで……

あの子を……信行を……殺さんといてちょぉ……」


大粒の涙が、畳に落ちる。


「愚かなことをしたのは分かっとる……

けど、あの子は……あんたの弟だがや……」


「腹を痛めて産んだ……

わしの……わしの子だで……」


信長は、何も言わず立ち尽くしていた。


拳は固く握られ、

歯を噛みしめ、視線を落としたまま


信長の沈黙


「……母上」


低く、かすれた声。


「分かっとる……

分かっとるがや……」


「じゃがな……

国を乱す者を許せば、

また血が流れる……」


「この尾張を……

この国を守るには……」


言葉が、途中で途切れる。


「……わしは……

鬼にならにゃ、ならんのだがや……」


母はすがりつく。


「鬼にならんでええ!

あんたは人でええ!

信長、あんたは……人でおれ!」


信長の肩が、わずかに震えた。


信長様は、僕に視線を向けた。


「中田玄白……

お前なら、どうする……」


戦国の現実。

一度起きた謀反は、必ず繰り返される。


僕は、苦しみながら答えた。


「……切腹が、最善かと存じます」


「内乱は国を疲弊させます。

天下統一のためには……避けられませぬ」


信長は、目を閉じた。


「……そうか……」


それだけだった。





翌日。


信長は、弟・信行を許した。


誰もが驚いた。


「……逃がすがか……?」


「殿……正気か……?」


だが信長は言った。


「一度きりだでな……

次は……無い……」


その声は、あまりにも静かだった。


1557年 

信長に嫡男・奇妙丸(信忠)が生まれる。


そして

信行は、再び謀反を起こした。


信長は病に伏せったと偽り、

弟を清洲城へ誘い出す。


城内で


信行は暗殺された。


信長の慟哭


夕刻。

稲穂の波が、風に揺れる。


沈みゆく夕日が、

田を血のような橙に染めていた。


信長は、ぽつりと言った。


「玄白……」


「虚しいのぉ……」


「血の分けた弟だがや……

笑っとった顔も……

子供のころの声も……」


「全部……

わしが終わらせた……」


拳が、震えている。


「未来でも……

兄弟は……殺し合うんか……?」


僕は答えた。


「……はい。

兄弟であるが故に、

恨みは深く、修復は難しゅうございます」


信長は、空を見上げた。


「……そうか……」


それ以上、言葉はなかった。


夕暮れ


風が吹き、

稲穂が一斉に揺れる。


信長は、背中で泣いていた。


文明が進もうと、

時代が変わろうと


人の恨みは、消えない。


だが、

一度だけ弟を許したその選択は、

間違いなく「人間・織田信長」の証だった。


信長様は、それ以上、何も言わなかった。


沈みゆく秋の夕日が、

広大な稲穂の田んぼをオレンジ色に染めていく。


風に揺れる黄金色の波は、あまりにも美しく、

つい先ほどまで人が人を殺し合っていた現実が、嘘のように思えた。


文明がいかに発達しようとも、人が人を恨む気持ちは、いつの時代でも変わることはない。恨みは恨みを呼び、やがて争いとなり、戦へと発展する。


兄弟であろうと、親子であろうと、一度生まれた歪みは、容易には消えない。


それでも

信長様が、一度だけ弟を許したその選択は、

紛れもなく人間らしい行動だった。


だから、僕は何も言わなかった。


◇◇◇


そして僕は、今回の城攻めを通して得た教訓を胸に、

新たな兵器の開発に乗り出した。


城を落とすには、兵の勇だけでは足りない。

血を流さず、時間をかけず、確実に門を破る力が必要だ。


投石機。


巨大な石を、

振り子の原理で遠くへ飛ばす兵器。


ローマ時代に使われていた投石機の記録を思い浮かべながら、

僕は図面を引き始めた。


狙うは、

分厚く閉ざされた城門。

守りを誇る城壁。


力で押し潰すのではない。

理で破る。


戦を終わらせるために、

また一つ、戦の道具を生み出そうとしている自分に、

わずかな皮肉を感じながらも


僕の手は、止まらなかった。


天下統一への道は、

まだ、始まったばかりなのだから。

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