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The end of world


 世界と少女を天秤にかけた。

 ボクはどこにでもいる普通の大学生で。

 少女は壊れかけたこの世界を救える唯一の存在で。

 世界を救うためには少女の命が必要らしい。

 世界中のみんなが少女の犠牲を望んでいる。

 だけどボクは彼女を愛していて。

 彼女もボクを愛してくれた。

 ボクと少女は手を取り合って逃げた。

 もうボクらには安住の地は無いことも。

 世界中のすべてが敵に回ることも。

 知っていた。

 愛し合う二人の前には色んな困難が待ち受けていたけれど、ボクらはそのことごとくを乗り越えた。

 逃避行を続けるうち、ついに世界が滅びる日が来た。

 地球最後の日だ。

 ボクと少女は立ち寄った町で、小さなスーパーマーケットに入った。

 電気の消えたスーパーの中に従業員はいなかったけれど、ボクらは事務所にあったテレビを三番レジの上に乗せて電気を点けた。

 地球最後の日だと言うのに、テレビ関係者は真面目に仕事をしていた。

 素直にエライな、と思った。

 チャンネルを回し、いつも見ているニュース番組に合わせる。

 見慣れたニュースキャスターが、ヤケクソ気味にニュースを読んでいた。

 会いたい人もいるだろうに。

 一緒にいたい人もいただろうに。

 それなのにこの人たちは、自分の仕事を優先したのだ。

 最後まで誇りを貫いたのだ。

 尊敬に値する。

 生まれ変わったらテレビ関係で働く人になりたい、と本気で思った。

 カウントダウンが始まった。

 大晦日みたいだ。

 ある意味間違っちゃいないのだけど。

 カウントがゼロになれば、人類の歴史が終わるんだ。

 人が築いてきたもの、その全てが失われる。


「私のせいかな」


 隣にいた少女が、テレビから目を離さずにポツリと言った。

 ボクは少女の肩をやさしく抱き寄せる。


「キミのせいじゃないさ」


 本気じゃない、歯の浮くようなセリフが出てきた。


「キミが死ななければ救われない世界なんて、無い方がマシだ。ボクらは正しい事をしたんだ」


 そうだろうか。

 ボクらは正しい選択をしたのだろうか。

 もしも彼女が犠牲となっていたら。

 今、人類最後のテレビ放送を行っている人たちは、今日も普段と変わらずに、事件のリポートとか、新作映画情報紹介とか、グルメリポートとかしていたのではないのか。

 仕事が終われば普段と変わらずに、少し疲れた顔して家路についていたのではないのか。

 少女の肩を強く抱きしめる。

 今更だ。

 ボクは少女の手を握り、逃げる事を選んでしまった。

 もう戻れないところまで来てしまった。

 カウントダウンが終わろうとしている。

 終われば、世界は滅びる。


「――世界なんて滅びてしまえ」

 

 誰に言ったのでもない、独り言。

 でも。

 多分。

 少女を慰めるために言ったセリフよりも。

 こっちの方が数段マシなセリフだったんじゃないかな。

 




――カウントダウンが終わる。




 


              

――World  end

記憶がさだかでないのですが、おそらく03年から04年ごろに書いた作品ではないかと。

作った時期は不確かなのですが、書こうと思った経緯はよく覚えています。

私が、大学で文芸サークルに所属していた頃、世はまさに『セカイ系』ブームでした。

そんな『セカイ系』に反発を覚え、

「なら、オレは世界を滅ぼすどうしようもない話を書こう」

と言い出したのが始まりです。

「他人が何冊も使って世界を救うなら、こっちは原稿用紙四枚で世界を滅ぼしてみる」

 そんなどうしようもないコンセプトでこの作品は生まれました。

 救い難いですね。当時の私が。

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