すき間の話
怖い話? ああ、それなら一つあるわ。実際にオレが体験した話。
ウソじゃねーって。作ってねーって。マジもんマジもん。
あのな。お前がここに来る前の話な。
お客さんの中に、『○○商会』ってお客さんがおってな。
森本の山んとこ行った先にあったがいけど、そこの社長が大分年やったし、誰も後継ぐもんおらんし、店閉める事にした訳よ。
んで、在庫しとった商品とか、使えそうなもんタダでくれるって言うから、Nさんって人と――まあ、今辞めてしもておらんげんけどさ、その人とオレの二人でトラック乗って引き揚げに行ってんぜ。
その倉庫って言うががさ、店から少し離れた所にあってな。民家改造して倉庫みたいながにしてあったげんけど、オレらカギ貸してもらって引き揚げに行ってん。
周り田んぼやったし、倉庫の前とか横とか庭になっとるし丁度よかったからトラック前に付けて中入ったんよ。
民家改造してある言うても、ぶち抜きになっとる訳でもないし、ほとんど家そのまんまやったわ。
そう。ふすまとかタタミ外してあるだけって感じ。元々は社長らち住んどったげんと。
そんでな。Nさんと二人して一度中さっと見て回ったがいけど、Nさんは何ていうか霊感的な何か持っとる人でな。
奥の部屋入った時に急に「あかんわ」って言ってん。
オレが笑って「またですか? 勘弁して下さいよ」って言ったがいけど、真剣な感じで、「そこにある押入れの戸、見たらあかんよ」って言うげん。
そんな事言われたら、「え? どれ?」って見てしまうやん。なあ?
ボロボロになっとる押入れの戸が十センチくらい開いとったわ。
そう。そや。そやな。
他の部屋の戸は全部とっぱらってあったけど、そこの部屋の押入れだけは戸がついとったわ。
なんか仏間みたいやった。
オレ見てしまったから、押入れん中一回見て、中に何も無いが確認して閉めた。
ちょっと建付け悪かったけど、ちゃんと閉まった。
オレが「大丈夫っすよ」って言ったら、Nさん何か言いたそうやったけど、何も言わんだわ。
そんで引き揚げ作業始めてさ。三時間くらいかかったんやったかな。
終わった時夕方になっとったわ。
戸じまり確認して、鍵掛けたらさ、小便したくなったし、家の横に回り込んだがいぜ。
んで、Nさんと二人して田んぼに向かって小便しとったらさ、ふと気になって終わったら家の方見た。
そしたらさ。窓開いとんげん。
別に暑くもなかったから窓開けとらん。換気しようとも思わんかったオレは。つうか、横回った時は閉まってなかったか?
Nさんに「窓開けました?」って聞いたら、「なん開けとらん」って言うからNさんでもない。
Nさんビビってダダこねるから、オレが閉めに行くしかなかった。
一回掛けた鍵外して中入りながら、最初からあの窓は開いとったんやって思った。閉まっとったがも見間違いやったがいろうと思った。
開いとる窓は台所の窓やった。
オレは窓閉めて鍵掛けて戻ろうとした。
別に気になった訳でもないし、見ようと思って見た訳でもない。
台所の隣の部屋は、Nさんが「あかん」って言ったあの仏間やった。
その押入れの戸が少し開いとった。
ホンマにビックリした時って悲鳴ちゃ出んがの。息止まんがの。
オレでも分かったわ。
「ああ、あかんわ」って。
走って家出て、玄関の鍵掛けてトラック乗ったわ。
社長に鍵返してないが気づいたが会社帰って一服してからやったわ。
車ん中でもNさんと一言もしゃべらんかったし。
これが、オレが体験した話な。
アレは多分、マジもんやと思う。
―― 了
2009年9月頃に書いた作品。
先輩がおススメの怪談本を読んでみて、
「別にどうってことない事を書いてみよう」と思って書き始めた気がします。
が、途中でどうでもよくなって、「完全に方言でやる」「休憩時間に誰かと雑談してる感じ」の二つだけが支えになりました。
作中の方言は、北陸地方のものを使用しています。
おそらく、北陸以外にお住まいの方には読み辛くて仕方ないと思います。
申し訳ありません。




