表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

第1話 獣の遠吠え

「行ってくるよ」

フィナンシェは、いつも通り、注文されたお菓子を乗せたスクーターに、エンジンをかける。

電気のスクーターは、静かなエンジン音だ。

『チーズ菓子店バスク』。

お菓子屋のロゴがついている。

フィナンシェの視線の先には、幼なじみのマドレーヌがいる。

マドレーヌは、お菓子屋の娘だ。

茶髪の長い髪が美しい、娘。

フィナンシェの恋人でもある。

告白してきたのは、彼女からだ。

奥手なフィナンシェからでは、ない。

「いってらっしゃい、フィナンシェ」

強気な彼女は、フィナンシェのほっぺたにキスをする。

フィナンシェは、顔が赤くなる。

「い、行ってくるよ!」

もう一度言って、電気スクーターを走らせる。

今日の配達は、三件だ。


第1話 獣の遠吠え


東の都。イーストエリア。

管理された街並みと、美化された空気。

自然と人の暮らしが調和された美しい街だ。

街には、森が多い。

しかし、自然動物の類は、いない。

動物は全て、管理された動物園にいるからだ。


「後は、フランケンさんの家だけだな…、良し」

二件のお菓子の配達を完了したフィナンシェは、スクーターを再び走らせる。

フランケンさんは、動物研究をしている科学者。

昔から、家にこもってばかりいるオジサンだ。

オジサン…。

いつかは、フィナンシェも、そう呼ばれるかもしれない。

フィナンシェ・サザン。20歳。

紺色髪の青年だ。

髪はショート。

自覚しているが、少し内気な性格。

強く言われると、断れない性格。

恋人のマドレーヌには、自分からアプローチもできないシャイなのだ。

「…こんな僕の、どこを気に入ってくれたんだろう」

いつも、疑問に思っている。


キャーオ…


「ん?」

スクーターで走る途中で、気になる音がした。

何の音だろうか?

音は、一度きり。

「…まあ、いいか」

スクーターで進む。

検問があった。

「止まってください。この先、立ち入り禁止です」

軍服の検問官だ。

よく見ると、レーザー銃を持った軍服の人の姿もある。

「…うわっ」

フィナンシェは、すぐ止まった。

「何かあったんですか?」

「こちら、把握していません。とにかく、これ以上、進まないでください」

「…あ、は、はい」

フィナンシェは、肩をすくませる。

本物のレーザー銃を、はじめて見る。

怖い。


キャオー…


近くで、変な音がした。

「うわー…!」

「モンスターだ…!」

「小さいのか…?」

軍服の人たちが、口々に騒ぎはじめる。

何事か?


キャオ…


フィナンシェの足元に、紫色のかたまりがとんできた。

30センチメートルくらいの、かたまり。

「…ん?」

紫色のかたまりは、すぐにフィナンシェの足にくっつく。


「ぐわああ…!」


激痛に、悲鳴をあげるフィナンシェ。

足が、凄まじく痛い。

紫色のかたまりに噛まれていた。

「噛まれたのか…!」

軍服の一人が、駆け寄ってくる。

「離れろっ…」

紫色のかたまりをすぐに蹴飛ばす。

しかし、その足も、噛まれてしまう。

「ぐぬ…!」


「何をしている…!」

「…モンスターに二名が噛まれました!」

「何だと…!」


「痛いよ…っ…」

薄れゆく意識の中で、フィナンシェは、ただ激しい痛みだけを感じていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ