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初老新米大怪盗の終わりなき探偵事件簿with見習い怪盗の阿部君とゴールデンレトリバーの明智君  作者: バスバスキヨキヨ


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体制を立て直すか。ついでに、改名を報告。給料据え置き警部は『警部補君』で真面目巡査部長は『小林』だ

 給料据え置き警部は、私の期待に応え、寝言を……発しない。うん、そういう奴だ。昔から、私の期待に応えたことなどないのだから。お前は一生安月給の寝たきり安楽椅子探偵気取りの……と給料据え置き警部の悪口ならいくらでも出てくるのに、真面目巡査部長に対しての言い訳が全く思い浮かばないと嘆いたその時、時代は動いた。

 なんと、給料据え置き警部は寝言は発しなかったが、寝返りを打ったのだ。そう言えば、あいつは頭を使うよりは体を使うタイプだったな。よし、お前は今日から『バカ警部補』だ。

 バカ警部補は寝返りを打ち、豪快にソファーから落ちた。落ちた。落ちたのに、真面目巡査部長をはじめ全員がチラッと見て、終わった。誰も心配しない。だけど、私は律儀だから、『バカ警部補』は約束しよう。それに、私には、その一瞬で十分だった。閃く時は、そういうのもだな

「わ、私は、ただの通りすがりのおしゃれで気さくな名探偵じゃないか。何を今さら」

「いえ、そういう意味じゃなくて。どうしてあなたほどの人が、万年巡査で警察を去ったのですか?」

 な、なんだ。そういうことか。それなら、最初からそう言ってくれ、真面目巡査部長。ちょっとだけ、チビってしまったじゃないか。阿部君は出口を一心に見つめているし。逃げ出さなかっただけで良しとしておくか。ここで動くと変に疑われるから、阿部君を留まらせたのかもしれないが。明智君は、言うまでもなく、私の腕の中で絶賛ヌイグルミ中だ。それよりも、万年巡査だった理由を教えてあげるか。聞かなければ良かったと後悔するだろうが、聞いてきたのはお前の方だからな、真面目巡査部長。私を恨まないでおくれ。

「それは、簡単だ。直属の上司の巡査部長が万年巡査部長だったからだ」

「それって、まさか……あの……」

「そのまさかだ。真面目巡査部長、がんばれ」「うんうん」「ワンワン」

 おっ、ヌイグルミが再起動したぞ。よし、ここらで一息入れるか。パンツを履き替えたいし。そ、そんなにチビってないぞ。さっぱりして気分転換をしたいだけだからな。それに、第一容疑者に浮上した田中太郎に話を聞かないといけない展開なのに、どうせ相手もしてくれないからな。

「これは、あくまでも仮定だ。マッサージチェアーを調べれば簡単に分かるが、だからって田中奈々が『神のゲンコツ』を盗んだ犯人とは言えない。ここは捜査を一旦切り上げて、田中太郎がどう出るか様子を見るぞ。ああいう他人を信用しない奴は、さらに何か証拠となるような物を用意して、墓穴を掘ることが多々あるからな。例え何もしなくても、捜査が進展してなかったなら、向こうから話を聞きにくるだろう。そこをカウンターパンチだ。阿部君、本当に殴ってはだめだぞ」

「はい。さすが、リーダーさん」「わ、分かってますよ。でも向こうが殴ってきたら、その時は……へへへ」「ワワワ」

「田中太郎に自由に動いてもらうためにも、田中奈々と太郎丸と五十嵐は屋敷にいない方がいいな。嫌疑が晴れそうで晴れてないから、警察に連行してもいいのはいいけど、泊まってもらうほどの証拠がないし。ああ、そうだ。私の言うことなら涙を流し喜んでなんでも聞いてくれる知り合いの医師がいるから、そこの病院に泊まってもらおう。そこの病院で、ここ2、3日セラピードッグならぬセラピータイガーをしている、私の友だちのトラの『トラゾウ』もいるから、ちょうどいい。いや、だめか。トラゾウは今日はウチに泊まる予定だったんだ。阿部君、阿部君ママは今日は休みなのかい? 真面目巡査部長、ちょっと待ってくれよ。ミッション……じゃなくて、トラゾウの歓迎パーティーがまだできてないんだ。トラゾウって、本当に優しくてかわいくて……」

「リーダーさん、大丈夫ですよ。全然待つので。それに容疑者の監視は本官がするので、トラゾウ君とたくさん遊んでやってください」

「真面目巡査部長、ありがとう。それで、阿部君、阿部君ママは来れそうかい?」

「しーっ。今、電話で聞いてるでしょ。あっ、ごめんね、バカリーダーがうるさくて。……うんうん、そうなんだよね。……。しようがないよ。……。明智君がいるから大丈夫だよ。……大丈夫だって。……」

 まさかとは思うが、私の悪口を言ってないよな。言ってるのだろう。怪盗団に入れてくれるように私に散々頼んだくせに。その熱意に負けて2軍に入れてやった私の悪口を平気で言えるなんて、まさに阿部君のママだ。おっ、終わったな。

「あ、阿部君?」

「監督を脅して、今日と明日の撮影を休みにしましたよ。リーダーの言いたい事は分かります。だけど、一切何も言わないでください。特に、ママに。私たちは、ただミッション……パーティーを楽しめばいいんです。あっ、一つだけ、ママは何があっても需要は尽きないので」

「あ、ああ」

「よし、真面目巡査部長、田中奈々と太郎丸と五十嵐は病院に連れていこう。それと、この屋敷にお手伝いさんとかいるなら、捜査の邪魔になるからとかなんとか言って、今日は全員帰ってもらえ。その方が田中太郎も何か企むなら都合が良いから喜ぶだろうし。もちろん警察も完全撤退だぞ。といっても、もともと給料据え置き警部改めバカ警部補とお前だけか……」

「バカ警部……補?」

「ああ、説明してなかったな。あの居眠り安楽椅子探偵殿は、さっきから警部補になられた。正式に辞令が降りたわけではないが、まず間違いないだろう。給料は上がるはずだから喜んで受け入れる、というか断れる立場ではないし。問題は、呼び名だな。『バカ警部補』と面と向かって呼ぶのはほんの少しだけ心苦しいから、何か名案はないか?」

「そ、そうですねえ……。ああ見えて憎めないところもあるので、『警部補君』なんてどうですか?」

「おおー! それはいいなあ。文字数も随分少なくなったし、個性的だし、考えようによってはちょっと見下してるし……ちょっとではないか。まあ、あいつは気にしないだろう。それに、この先どんどん降格した時にでも汎用性があるしな。例え『巡査君』になっても、給料を上げてやると言えば、絶対に喜んで受け入れるぞ。あっ、これ以上警部補君の話題で時間を無駄にしてられない。そんな訳で、気を利かせて付近のパトロールなんかしないでくれよ。容疑者たちが病院から逃げ出さないように見張ってくれればいい。と言っても、起きてなくてもいいぞ。逃げ出すはずがないからな。逃げたら犯人だと疑われるだけだし、見つけられるのは確実だから」

「分かりました。ひまわり探偵社のみなさんも、監視や様子見に来ないのですか?」

「あっ、あっ、あったっりまえだろー。なあ、阿部君明智君?」

「そっ、そっ、そっですよーん」「ワワワワンッ!」

「あー、トラゾウ君歓迎パーティーがありますもんね?」

「そう、それだ。阿部君ママも忙しい中来てくれるんだから、私たちは今晩ここには来ないぞ。だから今晩ここから何かがなくなっても、私たちは一切合切金輪際関係がない。あー、パーティーが楽しみだなー」「楽しみー」「ワオーン」

 よし、これで、今晩のこの屋敷は手薄になったぞ。あの鍵のかかってない超厳重な大きな金庫から、脱税で貯めた大金を簡単に盗ってやるか。簡単すぎて面白くもなんともないかもな。余裕があるから、田中太郎が捏造を企てるのを、しばらく監視するのも悪くないか。

「では、病院へ向かおう……。その前に、居眠り安楽椅子探偵の警部補君を起こしてやるか。ああ、真面目巡査部長は、いい。明智君、頼む」

「ワーイ……ワオンワオー?」

「うん? どうした? 遠慮なくドロップキックをかましてあげなさい」

「ワオーン」

「グエッ……」といううめき声に誰も構わず、私たちは会話を続けた。明智君はドロップキックの後にすぐに戻ってきたので、警部補君は自分の身に何が起こったのかは知らない。ちなみに、警部補君になったことも、まだ知らない。伝える役目は真面目巡査部長に任せるか。他意はないが、ちょっとした憂さ晴らしにはなるだろう。

「では、真面目巡査部長、田中奈々と太郎丸と警部補君を乗せて、病院へ向かってくれるかい? 五十嵐さんは、我々が連れていくから」

「ひまわり探偵社のみなさんも車で来られたのですね? 分かりました」

「あっああー。タクシーで来たんだった。領収書、領収書っと。もちろん精算してくれるよな? 金額としては全然大したことはないが、こういうのは、きちんとしておかないといけないからな。それが信用に繋がるし、ひいては事件解決にも大きく貢献するんだぞ。それと……」

「大丈夫ですよ。では預かりますけど、またタクシーを呼ぶくらいなら、パトカーを一台呼びましょうか?」

「おおー、助かる。やっぱり、真面目巡査部長は頼りになるなあ。警部補君の改名ついでに、真面目巡査部長というのも堅苦しいから、名前を教えてくれないかい? こんなに仲良しになったのだから、いいだろ?」

「はいっ! 本官は『小林』と言います」

「よし、小林、今後もよろしくな。それと、パトカーを呼んでくれるのは嬉しいが、どうせなら、警視長を呼んでくれないか?」

「えっ! け、警視長ですか? 警視長は忙しいかと。だから、今日は来れなかったんです。それに送り迎えのために、警視長を呼ぶのも……」

「大丈夫だ。警視長なら、もう仕事を片付けてるはずだから、むしろ待ってるだろうな。携帯電話とにらめっこしているかもしれないぞ。万が一今日の仕事がまだ終わってないにしても、明智君の名前を出すと、喜んでやって来るに決まってる。警視長の電話番号は、小林なら知ってるだろ? 我々担当の小林ならな。それとも、私が電話しようか? 別にどちらでも構わないが、電話をすればポイントが上がるぞ。明智君が待っている、と言えばだけどな。あっ、それと、パトカーでとか言うなよ。迎えにきて、それから病院に連れていって欲しいとだけ言えばいい。それで、ヘリで来てくれるだろう。あっ、でも、ヘリでとかなんて絶対に言わないでくれよ。催促する卑しい奴だと勘違いされると悲しいから。あっ、明智君がケガしたと勘違いされると困るから、容疑者を病院で監視するためだというのは、しっかりと伝えた方がいいかもな。あー、明智君を含め4人乗れないと非常に困ると付け加えておくれ。でないと、私が……いや、誰かが置いてけぼりになってしまう」

「分かりました。気を使っていただいて、ありがとうございます」

「気にするな。落ちるだけ落ちたお前が、警視総監まで這い上がる手伝いができたら嬉しいだけだ」

「そ、そんなに、本官のことを……」

 後の警視総監に散々恩を売っておけば、きっと良いことがあるからな。例え警視総監に一歩届かなくても、警察関係者の一人とズブズブの関係になっておけば……なんてあざとい考えは小林に失礼か。こいつは、二度と正義を曲げないからな。え? ということは、我々が怪盗だと知られたなら……。その時はその時だ。逃げ足だけは、世界で一番二番三番の我々の本領を発揮してやる。

「私は誰に対しても優しいだけだ。小林が特別ではない。警部補君に対しても……。まあいい。それよりも早くヘリを……じゃなくて、警視長を呼んでくれないか。分かっているとは思うが、警察無線で呼ぶんじゃないぞ。警視長が仕事をさぼるのが、全警察官に知られてしまうからな」

「大丈夫です。警視長の電話番号だけが登録されている携帯電話を支給されているので」

「なるほど。さすが警視長だ。抜かりがない」

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