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結城組  作者: マー・TY
9/14

9話

「おはよ〜さ〜ん」

 俺の名前は結城高虎。

 事務所に出社してきた結城組の組長だ。

 中に入ると、海星と箒を持った苗木が居た。

「箒は木目に沿って捌け」

「はい!」

 舎弟達の1日は掃除から始まる。

 海星には昔、掃除のいろはを叩き込んでいる。

 故に教えるのも完璧だ。

「よぉ。新人研修ってやつか?」

 俺は2人に声を掛けた。

「長、おはようございます」

「おはようございます!」

 冷静に頭を下げる海星と、元気よく挨拶する苗木。

 苗木の顔は、初めて会った時より良くなっていた。

 吹っ切れたというか、憑き物が落ちたというか。

 とにかくそんな感じだ。

「苗木、ちょっといい顔になったんじゃないか?」

「はい!昨日のカチコミで、心を入れ替えさせて頂きました!」

 それについては蓼丸から聞いている。

 昨晩、苗木と海星、蓼丸、夏目の4人が、半グレ梵罵を壊滅させた。

 苗木にとっては初のカチコミ。

 『刃裟羅』幹部雑賀も混ざり、激しい戦いとなった。

 だが苗木は、そんな中でも気合いを見せた。

 梵罵の竹之内を、タイマンで破ったんだ。

 戦いの前、苗木は自分自身と向き合った。

 そしてカチコミの後、海星に思いをぶつけた。

 こうして苗木は、結城組に残ることとなった。

「俺、強くなります!町の皆を守るために!」

「いいじゃねェか。頑張れよ」

「はい!!」

 本当に良い気合いだ。

 舎弟の中じゃ戦闘力が高いし、覚悟も決まってる。

 コイツの将来が楽しみだ。

 だが舎弟ってのは、やる気があり過ぎるあまり視野が狭くなる。

 故にミスりやすい。

“ドッ”

「あっ……」

 苗木の肘が花瓶に当たる。

 そして花瓶は床に落ちて、割れた。

 中の水と差さっていた花と破片が飛び散る。

「うわぁあああ!やっちまった!」

 苗木が頭を抱えて狼狽する。

 そんな奴に待っていたのは、海星による拳骨だった。

「目ェ付いてねェのかテメェは!!!」

“ドゴッ!!!”

「おぼぉオオオオオオオオオオ!!!!」

 苗木の頭がハート型に凹む。

 その後床に崩れ落ちた。

 舎弟ってのは、こうやって兄貴分にシメられながら成長するモンだ。

 頑張れよ、苗木。




 昼飯の牛丼を食い終わり、俺はこの後どうしたもんかと考えていた。

 俺達結城組は、現在半グレ組織『刃裟羅』と対立している。

 奴らのやってることは、完全なるシマ荒らし。

 カタギへの暴行や薬の売買、果ては殺人まで楽しむ外道の集まりだ。

 今のところNo.3の牧浦遊真、幹部の雑賀譲二に深傷を負わせてはいる。

 だが幹部はまだ残ってる。

 ましてやNo.2とトップもまだ万全だ。

 幹部が削れてる間に一気に叩きたいところだが、刃裟羅の奴らは1つのヤサに留まらない。

 幹部陣の動向だけ、なかなか掴めずにいた。

「何の情報もねェ。どうすっかな〜」

 俺はソファに寄りかかって伸びをした。

 そんな俺に近づいてきた奴が居た。

「なんじゃ、暇そうじゃな」

「おっ、塚原」

 俺に話しかけてきたのは、若頭の塚原官九郎。

 結城組の中じゃ最年長で、組の大黒柱だ。

「暇なら見回り行くぞ」

「えぇ…。俺組長なんだけど…?」

「上がサボって下がやる気出せるか。いいから行くぞ」

 塚原は組長の俺にも容赦ない。

 だからこそ若頭に選んだんだけどな…。

 俺は塚原に引き摺られるような形で事務所を出た。

「まぁ情報も何もねェし、見回るしかねェか」

「結局は足じゃな」

 俺と塚原は、並んで町を練り歩く。

 その様は、カタギやチンピラ達の注目を集めた。

 この町を仕切る極道の、組長と若頭が一緒に歩いてるんだ。

 そりゃ目立つよな。

「こうして歩いてる分には平和なんだがなぁ……」

「いつまでも平和であってほしいものじゃな」

 今でこそ何もないが、俺達がシマにしている赤木町は治安が悪い。

 警察も手が回らない程だ。

 だから俺達任侠集団が町を守ってんだよ。

「長、我らの出番じゃ」

「あ?」

 塚原の視線の先を見ると、服屋の店長が2人の半グレに絡まれているのが見えた。

「俺らが守ってやるっつってんだろ?だから金出せ金!」

「あの、困ります……」

「お姉さん俺らのことナメてる〜?言うこと聞いといた方がいいよぉ〜」

 あの店はうちに守代を払ってる。

 俺は早足で半グレ達に近づいた。

「お客さ〜ん、迷惑だから帰ってくんねェ?」

「あァん?」

「なんだオッサン!?」

 話しかけた瞬間、半グレ2人組が凄んでみせる。

 コイツら俺の顔を知らねェのか。

「このお店な、俺達が守ってんだわ。無理矢理乗り換えさせないでくれる?」

「なんだオッサン極道かァ!?」

「化石が調子乗ってんじゃねェぞ!」

 暴対法が制定されて、極道の力は弱くなってんだよな。

 その代わりにコイツらみたいな半グレが力を付けてきてる訳だ。

 だけどな、俺達の稼業はナメられたらお終いなんだわ。

「坊や達、痛い目見る前に帰った方がいいぜ」

「おォ!?やるんだなオッサン!!」

「俺達気合い入ってるからよォ、テメェ死んだぞ!!」

 半グレ2人はそれっぽく構える。

「オラ死ねや!!」

 片方が顔面目掛けて殴り掛かってきた。

 だが、遅い遅い。

 俺は軽く首をずらして躱す。

 それと同時に、カウンターで顔面パンチを返した。

“バキッ!!!”

「ゴベッ______!!!!」

 奴はその一発で沈んだ。

 地面に倒れ、口元を押さえて震えている。

 今のでコイツの歯は、ほぼ全部折れていた。

「もう二度と煎餅食えねェな。で……」

 俺は片割れの方に目を向けた。

 奴は一発で沈んだ相棒を見て震えている。

 そして俺の視線に気づいた途端、ビクリと震えた。

「ッ!!!」

「どうすんだ?もうやめる?それとも歯ァ無くしとく?」

「ヒィ!!!やっ、やめます!!!やめますぅうううう!!!」

 奴はすっかり戦意喪失しちまってる。

 丁度いい。

 ちょっと訊いてみるか。

「なぁ、お前刃裟羅?」

「ヒャヒッ!!!ちっ、違います!!!一般的な半グレですぅうううううううう!!!」

 ビビり過ぎて変なこと言ってんな。

 だが目を見た感じ、嘘は言ってない。

 こりゃなんも知らねェな。

 最後に俺は圧をかける。

「金輪際赤木町に近寄るな。次見かけたら……歯じゃ済まねェぞ」

「はっ…はい!!!すいませんでした!!!!」

 そいつは必死に謝ると、相棒を引き摺って走り去っていった。

 後ろで見ていた塚原が、俺の隣に付く。

「まったく、どうしようもない奴らじゃ」

「どこに気合いが入ってたんだろうなァ」

 半グレに対して文句を言っていると、服屋の店長がお礼を言ってきた。

「結城組さん、ありがとうございます!」

「守代貰ってるんだ。あれくらい当然だ」

「またあのような輩が来たらすぐ呼ぶと良い」

 守代貰ってる店は必ず守る。

 それが俺達のシノギの1つだ。




 その後も俺達は見回りを続けた。

 幸いにも誰かが半グレに襲われてるなんてことも無く、ルートを周り切っちまった。

 結局、刃裟羅について有力な情報は得られなかった。

「まぁまぁ平和じゃったな」

「珍しくな。一旦帰るか」

「そうじゃな」

 俺達は事務所への道を歩き始める。

 公園近くを通り掛かった頃だった。

「さやちゃん!どこなの!?返事して!!」

 公園で1人の女性が叫んでいるのが見えた。

 どう見てもただ事じゃない。

 俺達は女性のところへ駆け寄った。

「お姉さん、どうかしたか!?」

「娘が居ないんです!目を離した隙に、どこかに行ってしまったみたいで!」

「わしらも捜そう!」

 俺と塚原も、一緒に捜索を始めた。

 娘さんはまだ5歳

 茶髪をおさげにしていて、ピンクのワンピース、赤い靴を履いているという。

 それくらいの歳の子なら勝手にどっか行って迷子になる、なんてことがあってもおかしくはない。

 だが、幼児の足じゃそう遠くまで行けない筈だ。

 赤木町の治安を考えると、誘拐の可能性も高い。

 公園の茂みから周辺を捜し回ったが、結局さやちゃんは出てこなかった。

 そして気づけば夕方だ。

「お姉さんすまねェ。見つけられなかった」

「いえ…。ご協力ありがとうございました」

「念の為じゃ。警察に連絡を入れておくと良い」

 ここに居ても、これ以上できることはない。

 俺達は一度、この話を持ち帰ることにした。

 ……この件、なんかドス黒いモンが動いてる気がするんだよな。

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