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結城組  作者: マー・TY
7/8

7話

 俺の名前は苗木宗佑。

 蓼丸の兄貴、それから夏目と共に、梵罵のアジトに乗り込んだ結城組の舎弟だ。

 アジトでは、既に戦闘が始まっていた。

 既に4人も死んでるし、爆発の跡がある。

 それから長尾と、血塗れの竹之内、それと10数人の手下と思われる奴ら。

 さらには、山鎌を持ったピエロみたいな見た目の不気味な男まで居る。

 それに相対するように、石田の兄貴は立っていた。

 この人数相手に、今まで1人で粘っていたのか。

「よっ、海星。救援来たで」

「石田の兄貴!助けに来ました!」

 蓼丸の兄貴と夏目が声を掛けた。

「蓼丸の兄貴、少々ややこしかったんで、助かります。ですが……」

 石田の兄貴は、俺に視線を向けた。

「ガキィ……。なんでテメェがここに居んだ。破門っつったよな?」

 その目は怒りで燃えている。

 当然だ。

 兄貴からしたら俺は、私情で組を利用しようとした挙句、負傷したカタギを見捨てて主犯を追って、返り討ちに遭ってノコノコ帰ってきた…。

 弱い上に自分勝手。

 カタギを守る気もない。

 石田の兄貴にとって、俺はそんな奴だ。

「鉄火場でテメェに何ができンだ。先にぶち殺すぞ!!」

 石田の兄貴から、明確な殺意を向けられる。

 恐い。

 メチャクチャ恐い。

 全身から汗が噴き出る。

 ……けど。

 それでも、俺にはやることができたんだ。

 結城組でやることが。

「石田の兄貴!俺________!!」

 俺がそう言いかけたとき……。

“ダン!!”

 一発の銃声が鳴り響いた。

 石田の兄貴が体を逸らす。

 その隙を、銃弾が通り抜けた。

「ほぅ、なかなかの集中力じゃないか」

 見ると山鎌の男が拳銃を向けていた。

 石田の兄貴は、無言で忍者刀を構える。

「おや?弟分とのお話はいいかい?」

「弟分じゃねェし……、話はテメェを殺してからだ」

 その瞬間、石田の兄貴と山鎌男が激突する。

 忍者刀と山鎌の、斬撃の嵐。

 石田の兄貴もそうだが、あの山鎌の男もただ者じゃない。

「あいつ、“首刈り”雑賀やな」

 蓼丸の兄貴がボソリと呟く。

「首刈り…?」

「せや。雑賀譲二さいかじょうじ。あいつも刃裟羅の幹部や。山鎌で人の首を刈ってコレクションしとるから、付いたあだ名は“首刈り”雑賀」

「……あいつも?」

「あぁ。梵罵は刃裟羅の下部組織。幹部が居てもおかしくないわな」

 雑賀譲二…。

 あいつも、牧浦と同じく刃裟羅の幹部。

 それに、人を首をコレクションにしているだと…。

「蓼丸の兄貴、あいつが人の首をコレクションにしてるっていうのは…?」

「あぁ、文字通りや。無関係のカタギを襲って首刈っとる。今すぐにでもぶち殺したいくらいや」

 蓼丸の兄貴の額に、血管が浮かぶ。

 俺も雑賀に対して怒りが湧いてきた。

 しばらく2人の戦闘を見ていると……。

「クソがァアアアアア!!俺を無視すんじゃねェええええええええ!!!」

 竹之内が、石田の兄貴に後ろから襲い掛かった。

 まずい。

 俺は自然と走り出していた。

 そして竹之内の手が石田の兄貴に届く前に…。

「オラァアアアアアアアアアア!!!」

 俺は拳で竹之内の顔面を打ち抜いた。

「ゴハァアアアアアア______!!!!」

 不意を突いたのもあってか、竹之内は派手に地面に転がった。

「ほぅ?」

「テメェ……」

 俺の行動が予想外だったのか、雑賀と石田の兄貴が動きを止めた。

「ッ……!!…ガキコラァ!!邪魔すんじゃねェ!!!」

 血を撒き散らしながら、竹之内が吠える。

 コイツの目標が俺に変わった。

 それでいい。

 石田の兄貴の邪魔はさせない。

「クソガキ!邪魔すんな!!」

 また石田の兄貴に怒られる。

 俺を叱責した隙を見て、雑賀が山鎌を振るった。

「ッ!!」

 石田の兄貴は間一髪、忍者刀で止めた。

「石田君、話は私を殺してからじゃなかったか?」

「言われなくとも……そのつもりだ!!」

 石田の兄貴が力尽くで忍者刀を振り切る。

 その勢いを利用し、雑賀が後ろに跳んだ。

 再び2人に距離ができる。

 その隙に俺は口を開いた。

「石田の兄貴!!」

「邪魔すんなっつってんだろ!!」

「俺、結城組でやりたいことができたんです!!!」

 俺は思い切って、そう叫んだ。

「……」

 石田の兄貴は、ジロリと俺を見る。

 その間、何故か雑賀も手を出してこなかった。

 俺は言葉を続ける。

「俺は、何も見えてませんでした!復讐のために、結城組の皆さんやカタギの皆さんを踏み躙りました!ですが、蓼丸の兄貴と話して、初心に帰って……目が覚めました!だからもう、間違えません!!俺を、結城組に居させてください!!!」

「…………」

 石田の兄貴の目が、俺の目をジッと捉える。

 やっぱりこの人達は、目の中をじっくりと見る。

 相手の本心を知るために。

「……話は後だ。まずこの鉄火場で生き残れ」

 石田の兄貴は、俺に背を向けてそう言った。

 そして視線を雑賀に移した。

「はい!!」

 俺も竹之内に向き直る。

 奴は拳を鳴らして立ち上がっていた。

「ガキィ、昼間俺にボコられたこと、忘れちまったのかァ?」

「あんなんどうってことはねェ。俺は負けず嫌いなんだよ。お前みたいな外道に、もう2度と負けねェ!」

 俺も拳を握りしめた。

 それを見た蓼丸の兄貴の目が、少し険しくなる。

「苗木ィ。お前にとっては初めてのカチコミやけど、俺らにとって粛清ってのは殺しや。さっき言った通り、しっかり殺りや」

 命が懸かっているからだろう。

 その口調は厳しいものだった。

 そして俺の上着のポケットには、蓼丸の兄貴から貰ったドスが入っている。

 ビビってないなんて言ったら嘘になる。

 俺は今まで人を殺したことがない。

 俺に殺れるのかっていう、不安もある。

 だけど、腹を括るしかないだろう。

 刃裟羅に踏み躙られる人間を、これ以上出さないために、奴らを殺す。

 俺は、そういう道を選んだんだ。

「……はい!コイツは必ず殺します!」

 俺の応えを聞いた蓼丸の兄貴が、満足げに笑った。

「えぇやん。よく言ったで苗木。……さてと」

 蓼丸の兄貴も前に出る。

 右手に握られているのは、ククリナイフ。

 兄貴は長尾とその手下達に向かって、ゆっくりと歩み寄る。

「ヒヒャヒャヒャ!化石極道が3人増えたところで、結果は変わらないのですよ!全員派手に吹き飛んで地獄行きです〜〜〜」

 笑いながらそう宣言する長尾に対し、蓼丸の兄貴の額に血管が浮かぶ。

「やかましい。しょうもない価値観でカタギを吹っ飛ばしたお前は、壮絶死しかあらへん。夏目、援護射撃頼むで」

「はっ、はい!」

 夏目も震えながら、拳銃を構える。

 こうして各々対戦相手が決まった。

 結城組による粛清は、ここからだったんだ。

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