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結城組  作者: マー・TY
2/8

2話

 俺の名前は結城高虎。

 敵対組織『刃裟羅』のヤサにカチコんだ、結城組の組長だ。

「結城組のトップがわざわざ殺されに来てくれるなんて〜〜!!嬉しいな〜〜〜!!組織内の遊ちゃんの評価爆上がりじゃん???」

 相対するは、刃裟羅のNo.3 牧浦遊真。

 子供のような言動とその残虐性から、“悪童”なんて云われて恐れられている。

 それから奴の手下6人。

 入ってきた時1人潰したから、あと5人だな。

 そして、椅子に縛られてる若者2人。

 緑髪の方はピンピンしてるが、金髪ニットの方は……もう手遅れだな。

 せめて緑髪は助けてやらねぇと。

「牧浦ァ。俺を殺せるってか?随分ナメてくれるねェ」

 俺は牧浦に圧を掛ける。

「うは〜〜!オーラエグいねぇ〜〜〜!!でも組長が1人で来るってことは〜〜〜、人手不足なのかなぁ〜〜〜???」

「否定はしねェが、組長でもたまには運動しなきゃだろ?てか、そもそもお前らは俺1人で充分なんだよ」

 そう言って俺はドスを仕舞う。

 それから、スーツのポケットに入れている別の得物を取り出した。

「「「「……は?」」」」

 それを見た刃裟羅の奴らと緑髪が、困惑する。

 俺が出した武器。

 それは…。

「けん玉?」

 そう、けん玉だ。

「え???けん玉??ブハハハ!!!えっ、何??どういうギャグ〜〜??」

 牧浦は俺のけん玉を見て大笑いだ。

 まぁ当然だわなぁ。

 けん玉っつったら普通は玩具。

 鉄火場に持ってくる奴なんて俺くらいだ。

 だけどなぁ…。

「ナメんじゃねェぞ〜。けん玉の可能性は無限大なんだよ」

「ど〜〜っちがナメてんのさ?まぁいいや。じゃあ見せてもらおうかな〜〜〜?けん玉の可能性ってやつ♪ねぇキミ達〜〜〜♪♪」

 牧浦が手下に語りかける。

「キミ達がやりなよ♪結城組の組長だよ〜〜♪殺せば泊つくよ〜〜〜♪♪しかも武器がけん玉♪♪♪ボーナスステージじゃん♪♪♪♪」

 それを聞いた手下達が、色めき立つ。

「たっ、確かに…!」

「結城組の組長!殺せば俺も有名に!」

「しかもけん玉だ!勝てるぞ!」

 功名心に駆られた手下共が、俺の目の前に立つ。

 なるほど、確殺できると踏んでる訳ね。

「まぁ、そういう奴から死んでくんだけどなァ」

 体感してもらおうか、力の差ってやつを。

 俺はけん玉の紐を解き、その先の赤玉を振り回す。

 そして回転が乗った玉は、予想以上のパワーを生み出す。

「ほら1人目ェ〜〜〜!!!」

 俺はけん玉の玉を、手下の1人の脳天に叩きつけた。

 「ぐぇっ___!!!」

 頭蓋骨が陥没したそいつは、短く呻き、崩れ落ちる。

 手下達の動きが止まる。

 何が起こったか解らず、動揺してやがる。

 止まっちゃダメだろ。

 その動揺が隙を生むんだよ。

「もういっちょ〜〜〜!!!」

 俺は続けるように、別の1人の顔面を玉で砕いた。

 そいつは勢いよく後ろに吹っ飛び、牧浦の足元で止まった。

「うそぉ〜〜??えげつな〜〜〜」

 牧浦は冷や汗をかく。

 残った3人の手下も震えてやがる。

 俺のけん玉の速さは銃弾並みだ。

 奴らからすれば、何が起きたのか解らないようだな。

 けどなぁ、これはまだ序の口だぜ。

「うっ…うぉおおおおおお!!!」

 1人が雄叫びを上げて突っ込んできた。

 俺に向かってナイフを振り下ろす。

「当たるかよ」

 俺はそれを難なく躱す。

 そして後ろに回ると、そいつの延髄にけん先を突き刺した。

「ぐべっ……!!!」

 何が起きたか解らねぇまま、奴は絶命。

 すると同時に背後から足音が聞こえた。

 もう1人突っ込んできてんな。

「俺相手に特攻する勇気は認めてやるよ」

 俺は瞬時に振り返り、素早くそいつの懐を取った。

 こうなるとは思ってなかったんだろう。

 奴の顔が青ざめる。

「だが場数が足りねェなァ!!!」

 俺はけん玉の大皿でアッパーをかました。

 金槌で顎を殴られるようなもんだ。

 顎が砕けたそいつも、白目を剥いて前のめりに倒れた。

 手下は残り1人。

 両手でナイフを構えてはいるが、ビビリ散らかしてんなぁ。

 それを見かねてか、牧浦が助け舟を出す。

「きみ〜、これ使ってみ〜〜〜???」

 奴が最後の手下に渡したのは、拳銃チャカだ。

 手下はそれを受け取る。

「ハハッ、これならやれる…!!」

 これでいけるとでも思ったのか、そいつの青ざめた顔が少し明るくなる。

 そしてそいつは、俺に銃口を向けた。

「死ねぇエエエエエエエエエエエ____!!!!」

 俺に向かって撃ちまくる。

 だが狙いは不正確、拳銃を持つ腕もブレブレ。

 明らかに素人だ。

 そんなもん俺には当たらねぇ。

「ッ!!?」

「ガキィ、死んでみるのも経験だぜ」

 俺は至近距離まで近づくと、そいつの首にけん玉の紐を巻きつける。

「グッゲゲゲゲゲ……!!!」

 奴はカエルみてぇに呻く。

 このまま窒息すればいい。

 俺がそいつを絞殺しようとしたその時…。

「ッ!!!」

 僅かだが、背後に殺気を感じた。

「いただき〜〜〜!!!」

 牧浦が後ろから奇襲を掛けてきたんだ。

「もらうかよォオオオオオオオ!!!」

 俺は瞬時に振り返り、手下を盾にする。

 そして牧浦のタクティカルナイフが、そいつの腹に突き刺さった。

 まさに命に届く一撃。

 牧浦の最後の手下は、奴自身の手によって葬られた。

「おいおい酷ぇなァ。自分の部下を殺してんじゃねェよ」

「酷いのはキミじゃん???大人しく刺されとけば良かったのに〜〜〜」

 そう言って牧浦は、ナイフをもう1本抜いた。

 空気感からして、やはりコイツは他と違う。

 本番はここからって訳だ。

 警戒すべきは、奴のナイフだな。

 左右で形が違うのが気になる。

「とりあえずさぁ、首頂戴よ!!!」

 牧浦が笑いながらスタートを切る。

 けん玉はコイツの手下の首に絡まったままだ。

「結局ドスが至高だよなァ!!!」

 俺はドスで迎え撃つ。

 そこから激しい斬り合いに入った。

 互いの刃がぶつかり合い、金属音がこだまする。

(なんだよこれ…。俺はアクション映画でも観てんのか……?)

 緑髪はこれを見て息を呑む。

 それを横目に、俺は牧浦を追い詰める。

「オラオラオラァ!!!」

「うわぁ〜〜!!ヤバ〜〜〜い!!!」

 牧浦が血飛沫を上げる。

 ナイフが2本あろうが、俺は抑えられねェ。

 このままねじ伏せたいところだが、コイツまだ余裕そうだ。

「ヤバいから逃げよ〜〜!」

 牧浦がバックステップで距離を取った。

 そして徐ろに左手のナイフを俺に向ける。

 すると突然……。

「顔面ドーナツになっちゃえ〜〜〜!!!」

 なんとそのナイフの刃が、俺の顔に向かって飛んできやがったんだ。

「うおっとォ!!」

 警戒しといて良かった。

 俺は間一髪でそれを躱す。

 だが牧浦はその隙に、一気に距離を詰めていた。

「どてっ腹〜〜〜!!!」

「チィッ!!!」

 牧浦が放ったのは刺突。

 それに対し、俺は瞬時に体をズラす。

 だが避けきれず、脇腹を抉られた。

「やってくれるなァ」

 俺は一旦後ろに下がり、距離を取る。

「スペツナズナイフか。珍しいモン持ってんなァ。だがそれで仕留められなかったのが運の尽きだ」

「殺れたと思ったのに〜〜。動体視力どうなってんのさ?まぁいいや。まだ1本あるもんねぇ〜〜」

 奴の右手にはタクティカルナイフ。

 まだ1本あるとか抜かしてるが、他に搦め手があってもおかしくねェか。

 だったらやられる前にやるだけだ。

 俺はズボンの左ポケットの拳銃を抜く。

「余計なことする前に逝っとけ」

“ドドン!!”

 一瞬で2発。

 俺は牧浦の頭部目がけて速射する。

「危なっ!!!」

 それに対し、牧浦が超反応。

 顔をズラすが、1発が奴のこめかみを掠めた。

「剃り込み入れないでよ〜〜〜!!」

 こめかみから血を流しながらも、牧浦は軽口を叩く。

「暴れんな。楽に死ねねェぞ」

「極楽浄土に行く予定無いし〜〜!!てか銃ズルすぎ!!ムカつくな〜〜〜!!……こういう時は〜〜〜〜」

 牧浦は緑髪の方を見て、ほくそ笑む。

「ッ!!?」

「雑魚を殺して憂さ晴らしだ〜〜〜!!!」

 なんと奴は、緑髪目がけて走り出した。

「やらせるかよ!!」

 俺は牧浦の後を追った。

 拳銃じゃ下手すりゃ緑髪に当たる。

 ドスしかねェ。

 だが、誰かを気にかけながらの戦いってのは、隙を生むもんだ。

「なんてね」

 俺が追いつく瞬間、牧浦が振り返った。

 それと同時に横薙ぎが飛ぶ。

 やっぱ罠か。

 まぁこんなもん、解ってても引っかかるしかねェがな。

 けど罠と解ってりゃあなァ……。

「止められるんだよォ!!!」

 俺はドスでナイフを受け止めた。

「嘘でしょ!!?」

 流石に牧浦も予想外だったのだろう。

 驚いている隙に、俺は左手で奴の右腕を掴む。

「とりあえず上下逆になっとけ」

「うあっ!!?」

 俺が繰り出したのは、合気道の投げ。

 牧浦を頭から床に叩きつける。

「ぐっ!!!」

 奴は左腕を入れ、なんとか受け身を取ってみせた。

 だがまだ続くぜ。

「首くれよ」

 俺は牧浦の首を踏み折りに掛かる。

「えげつな〜〜〜!!!」

 奴は必死に転がって俺の足を避ける。

 それからすぐに立ち上がり、後ろに下がった。

 俺はふと緑髪の方を見る。

 コイツは口を開けてポカンとしていた。

「すまねぇなァ。恐かったろ?」

「えっ…?いやまぁ…、別に……」

「……兄ちゃん、名前何てんだ?」

「えっ……。苗木…宗佑……」

「そうか。安心しろ苗木!お前だけは必ず助けてやるからよ」

 苗木を背中で隠し、俺は再び牧浦に向き直った。

 奴の顔が若干険しくなっている。

 最初の余裕はもう無いんだろう。

「ねぇ〜〜!僕の作戦全部台無しにするのやめてくれるかな〜〜〜!!!」

「バレバレの作戦ばっか披露するのが悪ィんだろ?まぁ、そろそろ終わりにしようや」

 俺はそう言いながら、床に落ちたドアを掴む。

「何それ!!?ダンゴムシでも探す気〜〜〜!!?」

 隙ができたとでも思ったのか、牧浦が襲い掛かる。

 だが正直、近づいてくれるのはありがたい。

「俺にとってはなァ……」

 俺は完全にドアを起こした。

 ドアが陰となり、牧浦の目から俺が消える。

 そして……。

「周りのもの全部武器なんだよォオオオオオオ!!!!」

 俺はドアを思いっきり蹴り飛ばした。

 金属製のデカい板が、牧浦に迫る。

「危なっ!!?」

 牧浦はそれを横っ飛びでギリギリ躱した。

 だが、避け方が美しくねェ。

 俺は既にドアの後ろから飛び出していた。

「折れたドアノブ!!!」

 ここで牧浦に向かってドアノブをぶん投げる。

 実は蹴り破った時に折れてたんだよ。

「ぐぅ!!!」

 ドアノブは牧浦の脛に当たった。

 奴の表情が、痛みで歪む。

 脛ってメチャクチャ効くんだよな。

「さぁ、逝こうぜ」

「ヤバっ____!!!」

 この隙を突き、俺は一気に距離を詰めた。

 そして次の瞬間、奴に袈裟斬りが入る。

「地獄の閻魔によろしくなァアアアアアアアア!!!!!」

「ぐぅウウウウウウウウ_____!!!!」

 俺のドスが、容赦無く胸を斬り裂いた。

「ゴフッ……!!」

 牧浦は激しく吐血する。

 だが、食らう直前で体をズラしたんだろう。

 奴は致命を免れていた。

 とはいえ、今のは間違いなく深手だ。

「ヤバいなぁ…ゴホッ!…結城高虎……化け物だ〜〜」

「生への執着は褒めてやるよ。だがもう限界だろ。お前の負けだ」

 牧浦にトドメを刺すために、俺は歩み寄る。

 だが、絶体絶命の状況にも関わらず、奴はニヤリと笑った。

「それは、どうかな〜〜〜?」

 牧浦は懐に手を入れる。

 そして取り出したそれを、俺に向かって軽く投げた。

「ッ!!?テメェ___!!!」

 飛んできたそれは、なんと手榴弾だった。

「なんちゅうところで出してんだ!!!!」

 俺はドスを振るい、それを打つ。

 手榴弾は窓の方へと飛んでいく。

 それから俺は、急いで苗木の下へと走った。

“パリン_____”

 窓ガラスが割れ、手榴弾が外に飛び出す。

 それから少しして……。

“ドカァアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!”

 激しい爆発を引き起こした。

「うぉおおおお____!!!?」

「ぐぅゥ!!!」

 俺は苗木を椅子ごと抱えて距離を取っていた。

 だが、それでも後ろから吹き飛ばされる。

 俺も苗木も、激しく床に叩きつけられた。

「ガハッ……!!おい、苗木!!大丈夫か!!?」

「痛っ……まぁ、なんとか…」

 意識はある。

 だが頭を打ち、出血していた。

 そうだ牧浦は…!!?

 俺は瞬時に振り返った。

「チッ……逃げやがったか」

 そこにはもう、牧浦の姿は無かった。




 その頃牧浦は、廃ビルを脱出していた。

「ゲホッ……。いやぁ〜危なかったな〜〜。でも逃げるが勝ちだもんね〜〜」

 軽口を吐いて笑っているものの、出血が止まっていない。

 傷を止める腕からも、血が滴っている。

 だがそんな状態でも、コイツは弱音を吐かなかった。

「これ、しばらく戦えないな〜〜〜。でも楽しかったかも〜〜。結城高虎、次殺る時が楽しみだ〜〜〜」

 そう言って牧浦は狂気的に笑う。

 そして、俺達結城組と刃裟羅の戦いは、より激しいものになるんだ。

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