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結城組  作者: マー・TY
13/14

13話

 俺は石田の兄貴と一緒に、日課の見回りを始めた。

 ただいつもと違うのは、黒宮の姉貴が一緒だということ。

 姉貴は半ば無理矢理、石田の兄貴と腕を組んで歩いていた。

「離れろ。歩き辛ェ」

「え〜?いいんじゃん。海星のケチ〜」

「チッ!」

 いつも以上に苛ついている石田の兄貴を、ニヤニヤした顔でからかう黒宮の姉貴。

 なんというか、凄いなこの人は。

 俺だったら即殺されてるだろう…。

 にしても、この2人の関係は何なんだ。

「あの、お2人はどういった関係なんですか?」

 気になった俺は、直接訊いてみた。

「え〜?私達の関係?」

 よくぞ聞いてくれたと言わんばかりに、黒宮の姉貴がこっちを見た。

「そうね〜…。いざ言葉にすると難しいかも〜。一言で言い表せないくらい、濃厚かつ芳醇でマリアナ海溝くらい深い関係________」

「同期だ」

 デレデレしながら語る黒宮の姉貴を遮るように、石田の兄貴が言った。

 すると言葉を遮られた姉貴がポカポカと兄貴を叩き始めた。

「もう!海星はいっつもそうなんだから〜!」

「ただの同期。それ以上でも以下でもねェだろうが」

 姉貴の拳を気にも留めない石田の兄貴は、冷めた口調でそう言った。

 同期…。なるほど。

 だからこんなに距離が近いのか。

 いや、近過ぎる…。

 黒宮の姉貴の同期愛、重くないか…。

「海星は照れ隠しでそう言ってるけど〜…」

「照れ隠しじゃねェ」

「私からしたら、暗闇の中を歩いてる時に手を差し伸べてくれた人。まさに白馬の王子様なんだよ」

「どこがだ…」

 心無しか、黒宮の姉貴の周りにキラキラしたものが見える。

 それと対照的に、石田の兄貴はどんよりしている。

 黒宮の姉貴は、元々暗殺組織に所属していた。

 もしかしたらそこを抜ける時、何かあったのかもしれない。

 そこを石田の兄貴に助けられたということなのだろう。

「俺らのことはいいだろ。そろそろ話せ」

「あ〜、……そうだったね」

 黒宮の姉貴が、自嘲気味に笑う。

 ここからが本題。

 クーガーの話だ。

「クーガーは元“HUNT”の最高戦力。殺しの技術は組織内でもトップクラスだったわ」

「マジですか…」

「えぇ。得物はナイフと銃。基本的な武器だけど、腕は一流。危機察知能力も高いし、勘も抜群。狡猾だし読み合いも強い。『完全無欠』って言葉を擬人化したような存在ね。性格は傲慢そのもので、常に周りを見下してた。だけど優秀。本当に嫌な奴……」

 黒宮の姉貴の目からは、クーガーへの殺意が感じ取れた。

「……この通り、クーガーは普通に戦ったら相当強いけど、殺しでよく使う手段があるの」

「そりゃ何だ?」

「奇襲よ。完全に気配を消して、隙を突く。相手が一流の戦闘者でも変わらない。別組織との戦闘中にいきなり襲うこともある。長がやられたみたいにね…」

 姉貴の話はここで終わった。

 クーガー…。

 ただでさえ強いって話なのに、奇襲まで仕掛けてくるのか。

 絶対に一筋縄じゃいかない。

 長とカシラが逃がした相手を、俺に殺せるのか…。

「奇襲か。だったら好都合だ」

 俺とは対照的に、石田の兄貴はこれを前向きに捉えていた。

「こっちから捜す手間が省けるじゃねェか。俺を狙った日が奴の命日だ」

 鬼みたいに目を光らせながら、兄貴はそう言った。

 この人は古流武術を得意とする、優秀な戦闘者だ。

 クーガーと渡り合えるくらいの実力はある。

「フフッ。自信満々な海星可愛い♡」

 黒宮の姉貴は、何故か殺気立つ兄貴を見てうっとりしている。

 可愛いって…。

 この人は石田の兄貴だったら何でもいいのか…。

 何はともあれ、クーガーのことは大体解った。

 あとで蓼丸の兄貴に連絡しておこう。

「そうと決まれば、いつも通り見回りね。…あら?」

 黒宮の姉貴の視線の先には、10代後半くらいの1人の女の子が居た。

 雑居ビルの隅で、その子は蹲って泣いていた。




 この時、実は“刃裟羅”のアジトでも動きがあったんだ。

「クーガー君どう〜?結城殺せそ〜??」

「問題無い。俺を誰だと思っている」

 薄暗い建物の中に、2つの影。

 1人は“刃裟羅”No.3 牧浦遊真。

 長とやり合った時の傷が治って、もう復帰してやがった。

 奴と会話してるのは、なんとクーガー。

 長の予想通り、クーガーは“刃裟羅”と繋がっていたんだ。

「まさか戦闘中にバケツとけん玉を持ち出すとはな。結城高虎。面白い男だ」

「僕の時はドアノブ投げてきたな〜。ていうかまたけん玉使ってたの〜!!?どんだけ好きなのさ〜!!?」

「武器でないものを武器する。その場にある物全て武器。悪くない発想だ。だが、解ってしまえばいくらでも対応できる。次は殺せる」

 そう言ってクーガーはニヤリと笑った。

 高次元の実力により得た、絶対的な自信。

 それが奴の動力源だ。

「う〜〜んでもでも〜。結城の病院どこか解らないけど、多分警備ガチガチじゃん?このまま襲撃するのは、ちょっとリスクあるんじゃない??」

 ニヤニヤ笑ってはいるが、意外にも牧浦は冷静だった。

 腐っても組織のNo.3。

 当然頭は回る。

「結城はしばらく動けないだろうし〜、別の奴にしてくれない??」

「なら誰を殺す?若頭の塚原か?」

「いいや。カシラさんより自由が利いて〜、それでいて厄介な奴!その名も〜〜〜……石田海星〜〜!!!」

 なんと牧浦は、石田の兄貴を的にしようと言いやがったんだ。

「ほぅ?あの若者がそんなに恐いか?」

「言っとくけど馬鹿強いよ〜〜?あの雑賀君も病院送りにされちゃったんだから!それに石田君は結城組のハブだからね〜〜。死んじゃったら、結城組の連携はドガシャ〜ンだよ!!」

「面白い……」

 話を聞いたクーガーが、口角を上げる。

 そして牧浦に背を向ける。

「おっ?早速殺っちゃう感じ〜〜〜??」

「石田海星。どこまで楽しませてくれるかな…」

 そう言ってクーガーは歩き出した。

 結城組の最高戦力 石田海星。

 そして最強クラスの殺し屋 クーガー。

 強者2人の衝突が近い。

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