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学食

実験も終わり、凛は由香里と彩と彩の彼氏と学食に来ていた。学食は去年、立て替えられたばかりのお洒落な都会のカファの様な雰囲気である。お昼どきの学食内は人で賑わっていた。


「へぇ~、それで浅瀬君が怪我しちゃったんだ」


由香里は学食のカレーライスをグルグルとかき混ぜながら、言った。


「うん、そのあと早退したんだけどね。でも機嫌悪かったんだよね」


「何でだろうね」


由香里は首を傾げた。


「ねぇねぇ、それよりこの前、マッチングアプリで会った人が凄く物忘れが激しいの。顔は良かったんだけど、ついさっきまで話していたこととかすぐに忘れちゃうの」


「でも顔が良いならいいじゃない。ねぇ、ゆっきー」


彩は彼氏の幸也に話をふった。

幸也は、カレーライスを一口も口にしていなかった。

バスケットボールのように丸々とした大きな醜い顔から、よだれがポタポタと落ちて小さな水溜りをつくっている。


「そうかもね。ねぇ、彩ちゃん。僕カレーライス一人で食べれないからアーンしてよ」


幸也、甘えた声を出すと、つぶらな瞳をパチパチしながら太い体を左右に揺らした。


「いいよ。はい、アーン」

 

「うーん、美味しい。やっぱり彩ちゃんに食べさせてもらうカレーライスは最高だよ」


幸也は、満面の笑みを浮かべた。

二人のイチャイチャに凛と由香里は、気持ち悪さを覚え、ため息をついた。二人はいつもこんな感じだ。


「由香里、その人の顔写真見せてよ」


彩は、幸也に嫌そうにカレーライスを食べさせながら言う。


「はいはい、これよ」


彩には断っても無駄なので、由香里は渋々見せる。


「可愛い系か。私はイケメン系が好きなのよね。凛はどうだったの?」


凛は携帯に目をおとしマッチングアプリを開いた。


「えっとね、かなりいい感じかな」


「顔はカッコいいの?」 


「う、うん。結構カッコいいよ」


「見せてよ」


「いいけど、はい」


凛はアポロさんの写真を彩に見せた。


「えー! 凄くカッコいい! 私好きになっちゃった!」


彩はびっくりしたようにその場を立ち上がり、両手で口元に手をあてて叫んだ。

幸也が半べそをかきはじめる。


「えー、ちょっと困るよ。彩ちゃんは僕の彼氏ななんだかれね。でも僕がこんなんだから、振られても仕方がないのかも……」


「もう! ゆっきー! 貴方はキープよ」


「彩ちゃん! 僕のことを捨てないでよ〜」


幸也はクネクネと体をよじらせながら、大泣き始めた。彩は浮気をすることで有名だ。彩には顔写真を見せるべきではなかったのかもしれない。


「ねぇ、凛。今度遊園地でダブルデートしない?」


由香里は声をひそめながら、凛に話しかけてくる。


「ちょっと! 聞いたわよ! デートなら私も誘いなさい!」


彩は幸也を床へと突き飛ばし、話に割り込んてくる。

幸也は、床の上をコロコロと転がった。


「そう、私達でトリプルデートをしましょう。凛の彼氏にも会いたいし」


彩は目を輝かしながら、人さし指を立てて右手を掲げた。

凛と由香里は思わずのけぞった。

トリプルデートと聞き、幸也は床の上で涙でぐちょぐちょの顔で嬉しそうにしている。


「「えぇ」」


凛と由香里は声を揃えて言い、肩を落としながらため息をついた。

波乱の予感がしていた。

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