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翌日

(昨日はごめんなさい)


翌日、アポロからそんなメッセージがきていた。

あのあとはろくに話もせずに別れてしまって、凛も気に病んでいたところだった。

いきなりヘビコーナからいなくなってしまったので、由香里達からもメッセージが何通もきていた。


「気にしないでね。でも、もうあんなことしちゃ駄目だよ」


「気をつけるよ」


昨日の疲れを癒そうと、ベットに転がった凛だったが、その途端スマホの通知音が鳴る。


(アポロさんからの連絡かな)


凛はウキウキとしてスマホの電源をつけて確認してみると……。


「ん? 朝瀬君からの連絡?」


浅瀬君から連絡がきていた。そういえば、彼が初めて話しかけてくれた時に、友達登録したことを凛はすっかり忘れていた。浅瀬君から連絡が来るのは初めてだ。実験以来会っていないこともあり、少し様子が気になっていた。


(春風さん。突然なんだけど、今日って時間ある? 中学生の妹が今度誕生日で、よければプレゼントを一緒に選んで欲しいんだ)


メールの内容はそんな内容だった。

凛はあまり乗り気がしなかったが、前に実験で助けてもらった恩もあるし、何となく断りづらかった。


(いいよ)


(やった! ありがとう、16時に〇〇駅の前で待ち合わせでもいいかな?)


(それで大丈夫だよ)


(じゃあ、待ってるね)


凛は疲れていたが、起き上がると服を着替えて待ち合わせ場所へ向かった。


待ち合わせ場所に辿り着くと、浅瀬君はすでに待っていた。手に巻いていた包帯はもう取れている。


「ごめん、待たせちゃった」


凛はペコリと軽く頭を下げた。


「俺が早く来すぎただけだよ。行こう」


満面の笑みを浮かべながら浅瀬君は言った。

  

「うん、怪我はもう大丈夫なの?」


「すっかり大丈夫! 気にしないで!」


浅瀬君はガッツポーズをすると、ニカッと笑ってみせた。


「お店はもう決めてるの?」


「うん、あそこのショッピングモールに行くつもり。色々あるからさ」


浅瀬君は駅近くにあるビルを指さした。

少し高めの商品を扱っている店だ。

妹にあげるのに、少し値段が高めではないかと思ったが、凛は何も言わなかった。


ショッピングモールに辿り着くと、辺りはだいぶ混んでいた。人がガヤガヤとしていて、気を抜くとはぐれてしまいそうだ。 

浅瀬君はショッピングモール内を進むとジュエリーショップへと入っていった。

凛も慌ててあとに続く。


「何か気になるものある?」


浅瀬君が凛の顔を覗き込み言った。

キラキラと輝く宝石がついたネックレスや指輪に凛の目は釘付けになる。


「うーん、あ! これは? 凄く可愛い! あ! でもちょっと高いかも」


凛が指差したのはピンクのパールがついた金の指輪だった。

値札を見ると29800円と表示されている。浅瀬君がどれくらいの予算で考えているのかが分からないが、これは少し高過ぎだろう。


「うん、いいかもね。他には何か気になるものはある?」


「一通り見てから決めてみるね」


「うん」  


浅瀬君は嬉しそうに頷いた。きっと、妹さんのことが大好きで、プレゼントを渡すのが待ちきれないのだろう。凛は気がつくとプレゼント選びに夢中になっていた。色んなものを候補に加え、最初に選んだ指輪のお店へ戻ってくる。


「今まで見た中でどれが一番良かった?」


「一番いいのはこのピンクのパールがついた指輪だけど、値段で考えるのなら、あっちにあった小物入れかな。まあ、私の趣味になっちゃうんだけどね」

 

「なるほど、分かった! 指輪にするよ」


「え、高いのにいいの?」


「いいの、いいの」


浅瀬君はそう言うと、指輪を会計に持っていった。

そして会計が終わると満足気に帰ってきた。


ショッピングモールを出て2人は大通りを通り過ぎると、人通が少ない小道にはいった。

日が暮れ出して、夕焼けが差し始めていた。

その時、浅瀬君が申し訳なさそうな表情をして謝ってきた。


「この前は俺、機嫌悪くてごめん」


「え、全然気にしてないよ」


「春風さんのそういうとこ、俺好きだな。ねぇ、ちょっと目をつぶって左手を出してくれないかな?変なことしないから」


「いいけど」


凛は首を傾げながらも目をつぶって左手を浅瀬くんの方へさせだした。浅瀬くんの手が触れた感触がつたわってきて、凛はビクッとして目を開ける。


「えっと……。これって」


左手の薬指にピンクのパールのついた指輪がつけられていた。先程、浅瀬君が買っていた指輪だ。


「プレゼント。妹の誕生日っていうのは嘘なんだ。嘘ついてごめんね」  


「……」


「あれ? 嫌だった?」


「ううん! 凄く嬉しいし、ありがとうって思ってるんだけど、何で私に?」

 

「本当に分からない?」


浅瀬君の目がいたずらっぽく光る。


「分からないから聞いてるの!」


浅瀬くんが凛の左手を力強く引っ張ると、彼の右手が凛の腰に回っていた。

浅瀬くんの唇が凛の唇に重なる。

凛は突然のことに目をまん丸に見開いたままキスされていた。

浅瀬くんの唇が凛の唇から離れると、彼は顔を真っ赤に染めながら言った。


「俺……春風さんのことずっと好きなんだ」


「えっと、えっと……」


凛はパニックに陥っていた。男性に告白されるのもましてや、キスをされるなんて生まれて初めてだ。戸惑いながらも凛は……。


「ご、ごめんなさい!」


と叫んで、帰り道をダッシュで逃げ帰っていた。



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