王様への報告
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ージノ海洋国ー 王都の宮殿 謁見の間
宮殿に着いた私は、早く報告がしたくて急ぎ父上に会うことを申し出た。
「父上、只今戻りました」
「あぁ、お帰り。随分時間がかかったようだね。何があった?」
後ろに控えていた家令のセバスチャンが一歩前に出て話す。
「ご報告させていただきます」
ニグ王国の視察団を無事に見送った事。
第3王子が毒を盛られ、行方知れずになった事。ここで周りがざわめくが、話し続けるセバスチャン。
第3王子の発見と体力回復のため、帰還に時間がかかった事。
以上でございます。と、礼をとり、下がるセバスチャン。
「随分大変な思いをしたようだね。それでも無事に帰ってきてくれた」
「っは!父上、どうか内密に報告したいことがございます」
「うむ、よかろう。では、私の執務室に移動しようか。他の者は下がってよろしい」
王様が片手を上げると退室していく家臣達。
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「さぁ、座って。どうしたんだい? 内密になんて」
父上に促され、ソファーに座る。
「父上!お願いがございます!」
「ふふ、大きな声だね。大丈夫、2人だけなんだから言ってごらん?」
2人だけと言うが護衛はいる。まぁ、当然だが……。
「はい、こ、こんやくをしたいのです」
「ん? もう一回」
父上、楽しんでないか?
「父上、婚約です! どうかお願いします」
「あははは、ごめん、ごめん。そうか、見つけたんだね」
「は、はい」
「今回の視察団を送ってきたってことは……。む、そうか!ローズ・ベルタンであろう!」
な、なんて察しがいいんだ。
「は、はい。その通りです」
「ん〜そっかそっか。あと2年ほどで学園に入るであろう?確か其方と同い年であったな。」
「はい、ぜひその前に婚約を申し込みたいのです」
「ん〜あのこは第2王子の婚約者候補にしようかと思っておったのだが……」
「!!だ、だめです!!(あんな下半身王子)女性遍歴が多すぎます!」
「ふふ。意地悪だったね。大丈夫。すぐにでも婚約申し込みを行おう」
いたずらが成功したみたいな顔の父。ふ〜ドッキリさせないで欲しい。
「はい!ありがとうございます」
すると、間延びした声がした。
「なに〜?第2とか女性遍歴とか聞こえたんだけどぉ〜」
振り返ると、金髪で長髪を肩で一結びにした、ほっそりした体型の第2王子が戸口に寄りかかりながらこちらに向かって話していた。
「シュバルツ、急に話に割り込むなど、失礼ではないか?」
王様は一瞥すると、やや冷ややかに言った。
「え〜〜、陰口も失礼なんじゃ無いの〜?」
「兄上、陰口など言ってはおりません」
「もう話し合いも終わった所だ。シュバルツは出かけるのか?」
「そうだね〜、来年デビュタントだから、その相手でも探してこようかな〜なんて」
「王子なのだから、節操のある付き合いをするのだぞ」
すると、そこへココが現れた。
父も兄も気づかないと言うことは魂化している。
「父上、すみません、もう少々お時間をいただけますか?」
「ん? いいだろう。なんだい?」
「ええと、兄上、申し訳ありません。父上と2人だけにしていただけますか?」
「ふ〜ん。いいよ〜。その代わり、陰口はやめてね〜。じゃぁね〜」
立ち去る兄上を見送る。
「父上、先ほどの話に続きがあります」
「うん。婚約者の件?」
「いえ、視察団の王女の件です」
「あぁ、なんとかしないとね、彼女の場合、来るなと言っても来そうだよね」
「はい、そこで、ローズ嬢に出会った時に、神の使者のココ殿にも会ったのですが」
「ん? 今、さらっと凄いこと言ったね。神の使者と言った?」
「はい、今から呼ぶので護衛の騎士の方々は驚かれませんよう、お願いいたします」
「「……」」 護衛の騎士2人は、半信半疑な様子だ。
「ココ殿、実体化して欲しい」
すると、父上と私の間にあるテーブルの上に光の粒子が集まり、コバルトブルーの小鳥が現れる。
『終わったぞ。あの小娘、幽閉されたわ』
父上も騎士も目を丸くしている。
「お疲れ様です。ココ殿。此度の件、父上に話す前に、紹介したいのですが」
『うむ。其方が第3王子の父君じゃな。妾は神の使者であり、ローズの守護者じゃ』
「これはご丁寧に。お初にお目にかかります。ジノ海洋国 国王をしております。ルーク・ジノ・ハノーヴァーと申します」
さすが父上は動じない。すんなりと受け入れた様子だ。
『それでじゃ、彼の国に行ってきて話をつけてきたのじゃよ。あの娘、最初は父親の話も聞かず、またこの国にこようとしてたからのぉ。だから言ってやったのじゃ。』
「……なんと申されたのです?」王様は身を乗り出して聞いた。
『ジノ海洋国へ足を踏み入れたらニグ国を消すと言ったのじゃ』
「「「「!!」」」」その場にいた私、国王、騎士2人は言葉を失った。
『おどしに決まっておろう? まぁ、本気で消せるのは城ぐらいかの』
「城だけでも凄いのですが……、もし私が言われたら、眠れなくなりそうですな」
と、若干青ざめて言う国王。
『そうじゃな。ニグ国の国王もすぐに小娘を幽閉しておったよ』
それはそうだろう。神の使者に消すと言われれば確実に安全になる方法を選ぶ。
『さて、妾はそろそろローズの元へ帰るが、婚姻の話はどうなった?』
「はい、先ほど婚約の許可をいただいた所です。誓約書を作り、すぐにでも伺います」
『人間は面倒じゃのぉ。さっさと結婚してしまえば良いのに。婚約からか』
「はい。婚約からです」
苦笑いになるが仕方ないだろう。だが、婚約だけでも嬉しい。ローズは喜んでくれるだろうか……。
『わかった。できるだけ早く来い。あまり長いとうっかり口が滑りそうじゃ』
「はい。2〜3日中にはベルタン領に伺います」
『ではな』シュンと消えるココ殿。
「父上、誓約書を作って参ります」
「そうだね、急いだほうがよさそうだ」