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 ⭐︎⭐︎⭐︎


ー 少し前のサミュエル視点です ー



 ここはベルタン領の港町。

 

 私、サミュエル・ハノーヴァーは王家を代表し、隣国の大使を見送りに港に来ていた。朝早くに視察団が出国したのを見届けてから宿屋に戻り、朝食を食べていた時だった。


「ぐ、う、……うっ」 急激な吐き気で胸が気持ち悪い。くそ! 見送ったと思って油断した……あの王女……。


 立ち上がり、トイレに向かおうとして足元を見ると黒いウネウネしたものが巻き付いている。


「な、なんだ、これは……」


 ここにいては危険だ。外に出なければ!


 ドアを開けると知らない人ばかり。さっきまでいた宿屋でもない。


「に、逃げなければ」


 わけがわからなくなり、飛び出す。走る。


 ここはどこだ。怖い。怖い。怖い! 追っ手が来る! とにかく走れ! 走れ!


「はぁ、はぁ、はぁ、……」


 もう、走れない……。黒いウネウネも全身にまとわりついている……。


 これを取り除くには……水に入るしかない……。


 あぁ、う、うみだ……。ヨロヨロと足を引きずり岬の先端にたどり着く……。


 ドッボーーーン!!


 海の中は静かだった…。


(誰だ……腕を掴むのは……)


 うつろな目に映ったのは。


(なんて美しい……人魚はいたのか……)


 そして意識を失った。


 次に気がついた時、驚いた。


「ゲホッ、ゲホッ!!」


「ふ〜〜、よかった。君、大丈夫? クリス、人工呼吸よ? 口付けじゃないわ?」


 ……人魚がいる。……夢じゃなかった。 口付け? 私に?……なんで覚えてない!同じぐらいの年齢か? っは! 下着姿ではないか。む、胸が少し膨らんで、水に濡れて肌に張り付いて……。 ぼーっと見てしまった! すると騎士殿が現れて私を横抱きにする。


「殿下、鼻血が出ております……」


 耳打ちされ、見ると私に同行していた護衛の騎士だった。……異変に気づき後を追ってくれたのか?

 全身をタオルで包み、ついでに顔にもタオルをかけてくれた。……気がきく護衛だ。


「う、す、すまない」


「いえ。幸いこの地の領主邸がすぐそこだそうです。お運びします」


 ⭐︎


 邸では領主のハリスン・ベルタンが出迎えてくれて、客室で休ませてもらった。


 事情を説明したが、私自身、何を口にしたのかわからない。


「ふむ、それは幻覚を引き起こす毒薬ですな。味は覚えていらっしゃいますか?」


 ベルタン殿に聞かれ思い出すが、


「いや、どの料理に仕込まれていたのかさえわからぬほどだった」


 そこまで話した時、家令のセバスチャンが慌ててやってきた。


「殿下!! あぁ! どうなることかと! よかったです! いや、よくない! 何があったのですか?」


「まぁ、落ち着け。毒薬で幻覚を見せられたのだ。海に落ちた所をこのベルタン殿の御息女に助けてもらったんだ。……き、救命処置をしていただいたようだ」


 後半は顔が赤くなるのが自分でもわかったが、仕方ないだろう……。


「おほん。……殿下、薬を仕込んだ者の心当たりはございますか?」


「うん、ベルタン殿。確証は得ていないが……。ある。」


「殿下……。ここで話してしまっても良いのですか?」


 家令のセバスチャンは心配そうに尋ねるが、


「ここまで迷惑かけてしまっているのだ。事情は説明するべきであろう?それに、こちらの領土は海を渡って来る国の玄関となる港を保有しておられるのだ。我々が気をつけていても今後も迷惑をかけてしまう可能性が高い。ならば、説明して協力を願うべきではないのか?」





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