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ココの正体

 ⭐︎


 お風呂から出てくると、何やら慌ただしい雰囲気。


「何? 廊下がうるさいような……」


「そうですね、先刻から急にバタバタしておりますね」


 クリスも首を傾げ、私を着替えさせると外の様子を見に廊下へでた。


 ココが肩に止まる。


「ココお手柄だったわね」


 指先で撫でると嬉しそうに目を閉じるココ。 うふっ、かわいい。


「お嬢様、大変です! 先ほど助けた方は、この国の第3王子、サミュエル・ハノーヴァー様だそうです!」


「……なぜ?」


 頭の中が白くなった。


 なぜ王子様が、なぜフラフラして、なぜ岬の先端にいたの? なぜうちの領土に? なぜ1人で? なぜ人工呼吸などした〜〜わたし!! 王子様に、く、口付けって!! 人工呼吸なんて説明してもわからないだろうし!! 人から見たら口付けよね!! ま、まずいわ。 不敬罪? やめて〜〜せっかく悪役令嬢じゃ無いってホッとした所だったのに〜〜! こんな事で追放? 極刑? 

いやぁ〜〜〜〜〜!!


「……逃げるわよ。クリス」


「え?お嬢様、なぜ逃げるのですか?」


「決まっているじゃない。助けるための人工呼吸でも、あなた達から見たら口付けになるのよ?? 不敬罪だわ!」


「そ、そんな。……わかりました! お供します!」


 コンコン。


「ど、どなたですか?」


 と、クリスが返事をすると。


「父様だよ。開けてくれるかい?」


 おかしいわ。いつものお父様なら勝手に開けて入ってくるのに……。


「……どうぞ」と、私。


「失礼するよ。ローズ、大丈夫だったかい? こちらは、王家の家令。セバスチャン・ベルジュ殿だ。お礼を言いたいと申されてね。」


「初めまして。セバスチャン・ベルジュと申します。お嬢様に救命処置をしていただいたと聞きました。素晴らしい対応、素晴らしき知識。本当にありがとうございます。」


 救命処置って言ったわ。知ってる人がいたのね。よかった〜〜。


「いえ、救命処置とわかっていただいてよかったですわ。」


「はい、私どもの国は海に囲まれているゆえ、つい先日海を挟んだ隣国との交流時に救命処置の話を聞いたばかりでしたので私どもは知っておりました。」


 ん?なんか、含んだような言い回しね……。なぜ小娘が知っているのかって事ね。

 どうしよっかな。前世の記憶といえないし……。ん〜〜、困ったわ。

 人工呼吸は最近確立されたっぽいから本に書いてましたなんて通じないかも……。


 私が返事に困っていると、右肩に光の粒子が集まり出す。


 やがて光の塊になり輝く。


 私もだけど、周りのみんなも何事かと動けない。


『本当になぁ。助けてもらった恩人に疑いの目を向けるなど、人というのは勝手だのぉ。こやつの知識は妾が与えたものぞ。しかも、自分達の失態ではないのか? 王子があのような状態になったのは。おぉん? なんとか言えよ。』


 現れたのは可視化したココだった。なんと、お話しもできるなんて……。


 私を庇ってくれている。知識を与えたなんて言ってくれて、グッジョブよ!

 でも、……なんてガラの悪い。小さい子は泣いちゃうよ?


 どうにか口を開いたのはお父様だった。


「こ、これは? なぜローズの肩に神の使いが……?」



 神の使い?何それ。



『こやつの母御が神に縋ったのじゃ。不憫なので力を貸してくれとな。神は人の生には関われん。そこで、妾が遣いに来たのじゃ。姿を表さず、見守ろうと思っておったのに。おい、そこの。家令じゃったな。自分達の失態を棚に上げ、よもやこの娘を捕らえようなどど思っておらんだろうな! 』


 お母様が!? あぁ、そうだったのね、ココはお母様が私を心配して遣わせてくれたのね。ココは怒りが収まらない様子だけど、私は……心が暖かい。ありがとう、お母様。両手を胸に当てお母様に感謝する。


「そ、そのような事はございません。神の使い殿、どうか……」


『では、さっきの態度はなんじゃ? 命の恩人にする態度か! おおぉん!?』


 こっわ。ココちゃん体ちっこいのに圧がハンパないわー。キュキュッて鳴く愛らしい姿はどこへ行ったの〜。


「申し訳ありません。神の使い殿。私のせいで家令が失礼な態度を取ったのです」


 洗礼された綺麗な声がした。声変わり前のソプラノの持ち主。

 声のした方を一斉に見る。


 ガウンを纏ったサミュエル王子が部屋の戸口に立っていた。


「で、殿下。まだ起きられては、お身体が……」焦っている家令。


「お前が戻るのが遅いから来てみたのだ。何をやっているんだ。私は礼を言いたいからできれば連れてきてくれと言っただけだったろう。それに体は、もうなんともない」


「は、そうなのですが……。人命救助の仕方があまりに的確だったため、つい追求するような真似を……。まさか、神の使い殿がお教えになったとは。申し訳ございませんでした」


 と、深く私に頭を下げる家令。ていうか、ココに詫びてる感じかな。ははっ。


「改めて、お礼を言わせていただきたい。ローズ嬢。ありがとう。あのままだったらと思うと震え上がる気分だ。今度、改めてお礼をさせて欲しい」


「あ、いえ。もうお身体は大丈夫なのですか?お礼なんか気にせず、まだ休まれた方が……」


「本当はもう少しゆっくりと貴女と話したいのだが……。今回の件でいろいろ調べることが増えてしまって宮廷に帰らないといけなくなった。第3とはいえ、これでも王子だからね」


 最後は片目をつぶってちょっとおどけた感じで話す。


 王子様、瞳はブルーだったのね。


 ちょっとドキッとしたのは内緒。 ココがじ〜っと私を見つめる。


『ふむ。王子とやら、妾が力を貸そうか?』


「神の使い殿がですか!?」


「ココちゃん?急にどうしたの?」


『今、ちょっと未来が見えてしまったのじゃ。ふふふふふふふ』


 ……引くわ〜。笑い方、怖いってば。

 あぁ、キュキュッて声が懐かしぃ。


「神の使い殿が味方になってくださるなら、大変心強い!私からもお願いいたします!」 と、さっきまでしょんぼりしてた家令のセバスチャンが目を輝かせた。


『妾が手を貸せば、問題など、あっという間に片付くであろう』


「ココちゃん、何をするのかわかっているの?」

『うむ、宮廷に着くまでに聞くので大丈夫じゃ』


「ココちゃん、王子様に迷惑かけちゃダメなのよ?」

『うむ。迷惑はかけん。大丈夫じゃ』


「ココちゃん…………さびしぃ」

 1歳からずっと一緒だったんだもの。

『……寂しくなったら呼ぶといい。すぐに来る』


 と、言いながら右の頬にすりすりしてくれるココ。うう、泣いちゃうってば。


 涙ぐむ私の頭を王子様がぎこちなくそっと撫でる。

「すまない。できるだけ早く終わらせるから。泣かないで?」

「ぐすっ。はい。泣きません。待ってます。ココ……、行ってらっしゃい」


 それからすぐに王家の御一行は支度し王都に向かって出立していった。

 ココを連れて。


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