マジックボックス
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学園都市は下三角形の形に作られた新しい都市なので、道が整備されていて歩きやすい。侍従や侍女を連れてくる家もあるけれど、私たちは2人でいろいろやりたかったので連れてきていない。
「何を買おう。お鍋や食器は持ってきているから、食材だけでいいわ」
「そうだね、肉は食べたいな」
「うふふ、野菜もよ?お肉ばかりだと身体に悪いわ」
「え〜肉だけでいいのにー」
うふふふ。じゃぁ、サミーのお肉は大きめにしてあげましょう。
塩、胡椒、砂糖、を買い、お肉、野菜を買っていく。
お米があるわ!……家畜用なんてって怒るかしら。
「ね、ねぇ。サミー……あの、お米買っていい?」
「米?何するの?」
「ええと……ナイショ! 夕飯までのお楽しみ!」
あ、トマトがある。ん?あれは昆布だわ。煮干しもある!さすが海洋国ね!
流石に鰹節はないわね……残念。あと、鶏ガラかな。
たくさん買い込み、寮へ戻ると、サミーに出来たら声をかけるわと言い、私はすぐに支度にかかる。
「考えてみたら冷蔵庫って欲しいわね……何か方法を考えましょう。とりあえず、野菜や鶏ガラを煮込んで出汁を作っていきましょう」
おっと、ケチャップも煮込まないと。玉ねぎをみじん切りにし、ニンニクも刻む。砂糖、塩を入れてトマトを入れて煮込んでいく。
煮込んでいるうちにお米をとぎ、鍋でご飯を炊く。ブクブクいったら弱火にして……。
「魔道具のコンロがあるんだもの、絶対冷蔵庫もできるはずよ」と、また冷蔵庫が欲しくて独り言を言う。
ご飯が炊き上がると、フライパンに入れ、炒めておいた刻んだピーマンと玉ねぎとひき肉と合わせ、塩胡椒して炒める。煮込んだトマトケチャップを投入し炒める。余ったケチャップは瓶に入れておく。卵は1人3個を溶いてフライパンへ、じゅ〜っと焼きながら真ん中をフォークでくるくる。半熟になったら予熱で裏を固める。ケチャップライスにふわふわの卵焼きを乗せる。さっきとっておいたケチャップを乗せればオムライスの完成。
出汁で野菜スープを作り、ニンニク醤油のステーキを焼いていく。
出汁を取るのに時間がかかっちゃったけど、とりあえずできたわ。
「お待たせ〜本当は白いご飯が合うのだけど、どうしてもオムライスが食べたくて、作っちゃった」
「何?これ、すごくいい匂い。オムライス? え? 中はお米?」
「うふふ、食べてみて。いただきます!」
「いただきます? 今まで言ってた?」
「ふふふ、転生者って告白したら、気が緩んだみたい。生前言ってた、ご飯食べる時の感謝の言葉なのよ」
「へ〜では、私も。いただきます!」
「召し上がれ」
「う、うまい……。え? すごい。すごく美味しいよ!」
「よかった〜。うん、おいしぃ〜。お米をいつ食べるか、考えていたの」
「どうして? モグモグ」
「だって、家畜用って言うんだもの……生前は主食だったのよ?お米」
「こんなに美味しいんだ。主食って納得だよ〜おかわりしていい?」
と言いながら、野菜スープの入れ物を渡してくる。
「うふふ。はい。いっぱいあるわよ。オムライスだけは卵焼くのに少し時間かかるけど、言って?」
その後、オムライスとお肉もおかわりしたサミーはお腹が苦しそう。
「ん〜困った。こんなに美味しいなんて。太らないように考えないと」
「うふふ、そうね。私も一回の食事の量を計算して出すようにするわ」
「え〜〜〜おかわりしたいけどな〜〜でも、太りたくないし〜〜剣術を頑張るか」
その時、小鳥が窓から入ってくる。
「まぁ、ココちゃんだわ」「あ、ほんとだ」
ココは、ぽんっと、人間の姿になると
「久しぶりじゃの〜。実はな、伝える事があってのぉ。食材などを収納しておける異次元空間魔法なんじゃが」
「まぁ!!それよ、それ。ココちゃん!教えて〜!」
「よし、では、イメージするのじゃ。手をかざし、空間に30cmほどの穴を開けるつもりでマジックボックスと唱える」
「マジックボックス」
ドゴン!!
「ば、バカもん! 3mではないわ! 30cmじゃ!」
「うわ!!コワッ!」 「ヒ〜〜ごめんなさい。間違えたわ!」
ドキドキドキドキドキドキドキ
「ご、ごめんね。ふ〜、もう一回」
3mの大きな空間を消すと、深呼吸をする。
「マジックボックス」
ブウンと音をたて、空間が割れる。
「よし、上出来じゃ。さすが魔力が多いだけあるのぉ。すぐ習得するとは」
早速、瓶詰めケチャップや余ったチキンライスを収納する。
「ココ殿、それは私でも出来ますか?」
「む〜〜、そうじゃなぁ、……婿殿も使えそうじゃな。今は10cmの空間魔法ならいけるかも。唱えてみよ」
「10cmでもありがたい! やってみます。集中して……マジックボックス」
ぽこん!
「キャ、可愛い音。開いたわ!」
「あぁ、やった。中はどのくらい入るのですか?」
「それ、そこの段ボール3個ぐらいかの」
「結構入りますね。うれしぃなー」
さっきの3mの穴はどのくらい入るのか……怪我人が出るわ、気をつけましょう。
「ただな、あまり人前で使わぬようにな。適正があるので使えぬもののほうが多いのじゃよ」
「では、カバンかポーチで誤魔化しますか? 確か、空間魔法が付与されたものが売ってたような気がします。ロージーはそれでいい?」
「ええ、もちろんよ。ねぇ、ココちゃん、もし人が落ちたらどうなるの?」
「……恐ろしいことを聞くのぉ……」
「「……」」
「お、そうじゃ。マジックボックスの中は時間停止するから、食材は新鮮なままじゃ。ではな、あまり長居するとあやつが泣くのでな」
そういうとまた青い小鳥になり、ココは窓から出て行った。あの様子なら、仲良くやっていそうね。
「でも、嬉しいわ。いっぱい食べ物を作って保存しておくね」
「うん、そうだね。いつでも君の手料理を食べられるなんて最高に幸せだよ」
それから2人で片付けをし、サミーは名残惜しそうに自分の部屋に戻って行った。
明日は入学式なので、今日は早めに休もうということになったのです




