王家との晩餐
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『ただいまじゃ〜』
振り返ると、ここが戻ってきていた。
「「ココちゃん・殿、おかえり!」」
『きっともう目覚めたと思うぞ』
うふふ、ドヤ顔の鳥って見たことないわ。うまくいったのね。
「ありがとうございます! ちょっと行ってくるね」
「ええ、行ってらっしゃい」
急ぎ足で部屋を後にするサミュエル様を見送りながら、私はココにお礼を言った。
「ココちゃんもお疲れ様。いつもありがとう。」
『いいや、疲れてなどない。……が、今日はちと寝るかな』
「珍しい。ココちゃんが眠るなんて」
よほど疲れたのね……。
私も少しお昼寝しようかな、馬車で移動して、血まみれになってヒールかけて、お風呂で洗われて疲れたかも。
ココちゃんと一緒にベッドに向かった。
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晩餐の席、父と私は王様に招かれ、ご一緒することになった。
ほんとうは、昼食を一緒に取りながら婚約の話を進める予定だったのが、夜に移行したので晩餐の席となった。
席に着くと、すでに王様、王妃様、第1王子? 第3王子が席に着いていた。
王妃様、ここで初めてお目にかかったわ。すごい、いるだけで半径1mにお花が咲き乱れてる感じがする。
「ようこそ、ハリスン・ベルタン殿、ローズ・ベルタン殿。此度は到着早々愚息の騒ぎに巻き込んでしまい、申し訳なかった。」
と、謝罪の言葉を口にする国王様に、父が慌てた。
「そんな、国王様が頭を下げるなど、おやめください。私どもは大丈夫ですので」
「うむ、だが、愚息はローズ殿に命を救われておる。重ね重ね、本当にありがとう」
と、いうと、なんと、王様だけではなく、王妃、第1王子、第3王子までもが立ち上がり、一斉に頭を下げた。
「「!!」」
こちらも慌てて立ち上がり、頭を下げる。
……なんとも、おかしな構図になっている。王家と侯爵家がお互いに頭を下げているのだ。
『さて、もういいじゃろう。今日は妾もローズからパンをもらおうと思っておるのじゃ』
と、呑気な声でココが話し出す。
「は! これはココ殿。あはは。ココ殿には敵いませんな。ベルタン殿、実はココ殿には助けてもらった事があるのですよ。」
「はい、娘から簡単な経緯は聞いております。」
「そうであったか、おっと、その話はまた後でだ。まずは、家族の紹介をさせてくれないか。左隣から王妃のイザベル、第1王子のロナルド、第3王子のサミュエルはもう知っておるな」
すると、王妃様がこちらへゆっくりと進み、私の手を取る。
「あなたが第2王子にヒールをかけてくれたのですね。ありがとう。女性に恨まれるようなバカな子だけど、私にはかけがえのない子なのです。あれから目覚めたのですがまだフラフラするようで、寝かせております。会えるようになれば真っ先にお礼を言わせますので。本当に、ありがとう」
そして、そっと抱きしめて下さった。
「い、いえ。持って生まれた力を使ったまでです。で、でも。お役に立てて良かったです」
と、緊張しながら返事をする。と、今度は第1王子が握手をしてくる。
「私からもお礼を言わせて。母上のようにハグしたら第3王子に殺されるので、できないけど、弟を救ってくれてありがとう。心から感謝しています」
みると、いつの間にかサミュエル様が私の後ろに立っていた。
「……当たり前です。私の大切な方なんですから……」と言って、私の両肩を掴んでい引き寄せた。
「はいはい、席に着いて。おっと、サミュエルはローズ殿の席の隣にしてやってくれないか?」
と、王様が言ってくださり、サミュエル様と並んで食事会が始まった。
婚約の話はとんとん拍子に進み、結婚式の話までに至った。成人を待ってサミュエル様が我が侯爵家に入り、同時に公爵に陞爵する事が決まった。
それから、なぜかココは私からパンを食べるようになっていた。
今まで実体化しても食事をとった事なんてなかったのに……。
少し心配。具合でも悪いのかなって気になっちゃう。こっそりヒールかけちゃおうかな。




