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13/20

ヒールが効かなかった理由

 ⭐︎⭐︎⭐︎


 無事に婚約者同士となった私とサミー。


 今日は、今後の事を話し合うために王城に来ていた。


 同行者はもちろんお父様とココ、侍女のクリス。護衛の騎士達は馬車と一緒に待機。


「いらっしゃい! ロージー!」


 出迎えてくれたのは、我が……婚約者様。キャッ、まだ恥ずかしぃわ。

「サ、サミー! お待たせしたかしら?」

 赤くなっているだろう頬に手を当てながら、サミュエル様に歩み寄る。


「ううん、君が来てくれるのを私が待てなかっただけ。ふふふ。途中何事もなかった?」


「ええ、何も。とても快適だったわ。ね?お父様」


「ご機嫌よう、殿下。あぁ、何事もなかったね。皆様はもうお待ちですか?」


「ご機嫌よう、ベルタン殿。いいえ、まだ集まっておりません。そろそろかと。あの、ココ殿は今、魂化ですか? 私も見えるようにしてもらったので実体化してるのか魂化してるのかがわからなくて」


「キュッキュ」


「魂化ですよ。ふふふ。王城に来る時はこの方がいいらしいので」


「そうか、ココ殿は覚えていてくれたのですね。王城は人の出入りが激しいので、実体化していると大騒ぎになるでしょうから」


 そんな風にのんびりと挨拶を交わしていた時。



「きゃーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」



 と、女性の恐怖が混じった叫び声が響いた。


 周囲にもたくさん人がいる中、サーッと分かれていく人の壁が見える。


「あそこだわ。誰かが倒れている」


 急いで駆け寄ると、細身の男性?が倒れていた。遠巻きに人々は見ている。


「あ、兄上!!!」 「え?お兄様?」


 側には真っ赤な返り血を浴びた女性がナイフを握り締め、顔面蒼白のまま立っている。


「兄上ーーー!!しっかり!!」


 男性のお腹から流れ出る血を抑えようと手を当てるサミュエル王子。


「サミュエル様! 落ち着いて! 私がヒールをかけます!!」


 前回、サミュエル様が溺れた時は効かなかったけど、今度はどうか効いて!!


「ヒーール!」全神経を手のひらに集中し、唱える。


 途端に光が傷口に集中していく。シュシュシュシューーーと音が聞こえそうな程。


 傷口は塞がった様だけど、出血がかなり多いわ……。男性はまだ気を失ったまま倒れている。


「ありがとう、ローズ。あぁ、よかった……だけど、目を覚ましてくれるだろうか」

 つぶやくサミュエル王子。


 見ると、先ほどの女性が騎士に連行されて行くところだった。

「その男が悪いのよ!!殺されて当たり前だわ!!!人でなしよーー!」

 血だらけで叫ぶ女性の顔は正気を失っていた。目をぎらつかせ、ギャーギャーと喚き散らしながら連れて行かれた。

 次に医療班らしき人たちが倒れている男性を担架に乗せて運んで行った。

 血溜まりの中、私とサミュエル様は呆然と立ちつくしていた。



 その後、予定通りになるはずもなく、その日は王城に泊まる事になった。


 私も、サミュエル王子も血だらけだったので、それぞれ部屋に連れて行かれ、王城の侍女達に洗われた。父は別の部屋だ。


 部屋で髪を乾かしていると、ノックの音が。


 コンコン。


「どうぞ?」


「今、いい?」


 ドアから顔を覗かせたのはサミュエル様だった。


「ありがとう、もういいわ」と、クリスに言うと下がっていく。


 サミュエル様は私の横に椅子を持ってくると、そこに座り、私の手を握った。


「さっき倒れていたのは、第2王子なんだ。私のお兄様」


「まぁ、あの方が……」


「あぁ、まだ目が覚めないらしい」


「そうなのですね……。やっぱり、ヒールが効かなかったのかしら……私、前回サミュエル様……サミーが溺れた時、ヒールをかけたのです。でも全く効果がなくて、それで人工呼吸を」


『当たり前じゃ。溺れて水を飲み、意識を失ってるだけの身体のどこをヒールで治すのじゃ』


「あ、ココちゃん。……言われてみれば。ヒールは傷を治すものだわ」


「あぁ、確かにそうだね。そうか、ロージーは私にヒールもしてくれていたんだね」


『ローズのヒールが効果がなかったなどと思われるのは心外じゃ、第2王子はヒールで治っているはず。目覚めないのは精神的な問題じゃと思うぞ? ローズのためじゃ、また記憶の中に入ってくるか』


「ココちゃん! ありがとう」「ココ殿、感謝します」


 ココはシュンと消えた。もう第2王子の記憶に入っているのだろう。


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