サミュエルの告白
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翌日、第3王子様がやってきた。
王都と我が領地は隣接しているけれど、宮廷とこの邸までは馬車で2日はかかると聞いた。昨夜、ココが帰ってきたばかりなのだから、早くても明日来るのではと思ってたところだったので、異例の速さだとお父様が少々呆れ顔で言っていた。
「昨日、ココ殿にあまり待たせると口を滑らせると言われてね、馬を走らせてきたんだよ。私は君に伝えたいことがあるんだ」
「そ、そうなのですね」チラッと父を見ると顔を横に振っていた。……知らなかった事にするらしい。
「庭に2人で行きたいのだが、ベルタン殿よろしいですか?」
「はい。こちらでお茶の準備をしております」
第3王子のエスコートで庭に出る。
この地は暖かく、一年を通して花が咲いているの。
今日もひまわりやハイビスカス、プルメリアたちが庭を彩っているわ。
って、お花を見て気を紛らわせようとしたけれど、ドキドキが凄いわ。どうしましょう……。
「……ローズ嬢、あなたとはもっと話してから、私をもっと知ってもらってからと思っていたのですが……。自分の気持ちに気づいたら、居ても立っても居られなくなったのです」
私の右手を両方の手で包み、自分の口元に持っていくと、愛おしそうにキスし、そして祈るように頭をたれ、そのまま跪いた。
目を見上げ、じっと私を見つめたまま。
「愛するローズ・ベルタン。どうか、私と生涯を共に歩んでほしい。寝ても覚めても君のことが頭から離れない……。一目見た時から君の虜になってしまった、この哀れなサミュエル・ハノーヴァーを愛してはくれまいか?」
私はすぐにでも返事をしたかったのに、心がいっぱいで、なかなか言葉が出てこない。
嬉しさのあまり、唇が震え、涙が溢れる。
「は……は、い」
もう、これが限界、精一杯。
「あぁ、ありがとう」
抱きしめられ、そしてキスをされる。
あぁ、もう、気を失いそうだわ……。
何も考えられず、ほわほわした気持ちのまま腰を支えられ歩き出す。
「ローズ……いや、ロージーって呼んでいい?」
「ロージー? うふふ、かわいい響き。ええ、嬉しいわ」
「ロージー、では私のことはサミーと呼んで?」
「はい……。サミー?」
再び、バッと抱きしめられる。
「あぁ〜こんなに嬉しいものだったなんて、ロージー、ロージー。愛している」
「うふふ。えぇ、私も、最初から愛していました」
「!! ほ、本当? う、嬉しい! 大切にする。君も、家族も」
「私も、大切にします。あなたも、ご家族も」
「ん〜〜私の場合は、私だけ大切にしてくれればいいよ?」
「まぁ。うふふふ」「ふふふ」
2人で見つめ合い、笑う。
それから父に報告をし、3人でお茶を楽しんだ。ココは少し離れた場所から見守ってくれていた。




