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発端

 十月に入り、ようやく残暑も一段落。

 夏に二つの殺人事件が起こり大騒ぎとなった自修院も、落ち着きを取り戻した。


 高等科一年の秀一は、坂になっている芝生の上に寝転び、青い空を見上げていた。

 中間考査も終わり、今日は体育祭。

 すり鉢状になっている坂下の運動場では、同じクラスのハルや怜司れいじ達がサッカーの試合をしている。


「バスケ、準決行ったって」


 秀一の横で、未央がスマホを見ながら言った。


「応援行こうよ。篤人くんと多聞くんが出てるよ」


 秀一と未央が出場したバレーチームは、二連敗。

 午後の敗者復活戦待ちだ。


「秀ちゃん、行くよ!」と未央が秀一の腕を掴んだ時、「チュータ!」と坂下から秀一の二歳違いの甥っ子、中等科二年の賢人が駆け上がってきた。


「仕事の依頼が来ましたよお!」


 賢人は幼い時、『秀ちゃん』と言えず『チュータ』と秀一を呼んだ。長じた今もその呼称を使い続けている。


「秀ちゃん、バイトするの?」と未央が訊くと、秀一は複雑な顔をした。


「俺たちの実家、ひいじいちゃんがやらかした冤罪事件のせいで慰謝料請求されてるんです」と賢人は秀一の横に腰を下ろした。

「でもお金がないから、チュータが働くんです」


「大変だね」と未央は秀一を見ながら再び芝生に座った。


「……コータは、お金なんか要求しないよ」と不満顔の秀一。


「コータさんはよくても、コータさんのバックには町長がついてるんです。それにチュータには特殊能力があるんですから、秒で稼げますよ!」


「……オレは、死んだ人と話しなんか、したくない」と秀一は芝に寝転び、賢人に背中を向けた。


「秀ちゃん、そんなこと出来るの! すごい!」と未央が目を丸くする。


「俺たちは霊媒師一族なんです。俺は実家にいかないと力、出せませんが、チュウタは死者となら、どこでも誰とでも話しが出来るんです!」と、賢人は自分のことのように自慢気だ。


「——オレは、やらない。断って」と秀一は背中を丸める。


「宇佐美さんからの紹介ですよ」


「誰からのでも、イヤだ」


「ダメだよ秀ちゃん!」と未央。「宇佐美さんにはお世話になったじゃないか! 頼みをきいてあげて!(僕、あの人に何度も蹴り入れようとしたし……)」


 秀一は目を開けて未央を見た。


「秀ちゃんにしか出来ないことなんでしょ? 頼られてるんだからこたえてあげようよ!」


 チュータと、賢人がボソリと言った。「未来の主からのお言葉ですよ」


「どんな仕事?」と秀一は身体を起こした。


「幽霊屋敷の除霊ですって」と賢人はニンマリ。「『滅びの魔女』の得意分野じゃないですか。チャッチャと消し去っちゃいましょうよ」


「……屋敷って……」とまた秀一は嫌な顔をする。「オレ、知らない人の家、一人で行くのヤダ……」


「僕、行きたい!」と未央が手を上げた。「秀ちゃんが除霊するとこ、見たい!」


 分かったと、秀一はうなずいた。「引き受けるよ。宇佐美さんに連絡して」


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