表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/30

ひとつめ

「——人って、いつ死ぬかわかんないんだなって、本気で考えさせられました……だから、これからは後悔なく生きていこうって、思ったんです」


 旅行先の島で遭遇した殺人事件の話をした後、真海まみはそう締めくくった。いつになく真剣な顔つきで、長い黒髪をかきあげる。


「——やり残したことがないようにしたいんです」


 真海の言葉に年長者らしく微笑み、相槌を打ちながら、高森の心はざわついた。

 結婚でも切り出す気かと、真海の隣に座るパーカー姿の男が気になる。


 男の名前は増田克己ますだかつみ

 真海が夢中になっているゲームキャラの声優をしているが、本業だけでは食べていけず、バイトに明け暮れているようだ。

 富豪の娘との結婚は、この男にとって願ったり叶ったりの幸運だろう。


 だが真海の次の言葉は、克己との結婚以上の衝撃を高森に与えた。


「私、多恵子さんの家を処分します」


 多恵子とは、亡くなった真海の母親の名だ。


「今まで見ないふりしてきたけど、あのまま放置出来ません。私が継いだ土地ですし、責任があります」


 高森は平気を装い、微笑んだ。


「……あそこを、売るんだね」


「あの家があったら無理ですから、取り壊して更地にします」


 でもあの家はと、高森が言いかけた時、横から克己が口を出してきた。


「除霊してもらうんですって! 真海さん、すごい霊媒師を紹介してもらったんですよ。僕、立ち会いたいな。その家に何が取り憑いてるのか、見てみたいな!」


 興奮状態の克己には目もくれず、高森は「本気なの?」と、真海だけを見た。


 真海は高森を見て、しっかりと頷く。

 高森は、そっと視線を逸した。

 

 鼻筋の通った品のいい顔は、母親譲り。

 髪型も全く同じ。

 だが目が違う——。

 真海の目は高森が理想とする母親のように慈愛に満ちている。


 そうだ、この子はあの女とは全く違う……。


「——その霊媒師って、本物なの?」


 高森が言うと、真海はにっこりと笑った。


「島で起きた事件を解決した刑事さんからの紹介なんです。絶対、間違いありません!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ