フリーナンバーメンズメン
男が血だまりの床にうつ伏せで倒れている。
倒れている男の頭のほうから一人の男が慎重に歩いてくる。
その男は綺麗なグリーン色のカーペットが敷かれた廊下の後ろと前を慎重にクリアリングしながら、ゆっくりと倒れている男の元へと歩いていく。
「死んでいる」
歩いてきた男は倒れている男のそばに膝をつき、倒れている男のジャケットの胸元の内ポケットを調べた。
男は内ポケットから鍵のようなものを手にし、自分のジャケットのポケットにしまった。
そして耳に手を当てながらしゃべった。
「イレブンは死んでいた。周りで争った形跡は特になかった。しかし、首筋には銃で撃たれた跡があった。形跡から見るに至近距離から撃たれたような形跡だった」
「イレブンは残念ね。でも落ち着いて、ナイン。あなたは生きているわ」
歩いてきた男をナインと呼ぶその相手の声は、女性のようだった。
「これから、どうすればいい」
「鍵は回収した?回収したのなら、そのホテルからは離れなさい。イレブンを調べに追手が来るわ」
男は耳から手を放して、辺りを見回した。
エレベーターが動き出していたことに気が付いたナインは、忍び足で非常階段のほうへ向かった。
エレベーターが15階で止まった。
到着音とともに、エレベーターのドアが開いた。ドアの中から、キャスターのついた大きなボックスと、掃除用具を持った2人の大男が現れた。
倒れている男の前まで来ると、1人の男が倒れている男を大きなボックスに投げ入れた。
もう一人の大男は掃除機のようなものの電源を入れ、ノズル部分を血だまりに押し付けた。
大きな音と共に床から血だまりが消えていく。
掃除機のような不思議な装置は、血だまりが消えるまで動き続けた。
男たちは自らに与えられた役割を終えたのか、そのままエレベーターに戻っていった。
ナインは非常階段で1回まで下りた。
鍛え上げられた身体は、15階分の階段を下りたくらいではびくともせず汗一つ掻いていなかった。
非常階段の扉を開けて出ようとすると、開いた扉の後ろから男がサプレッサー付きのピストルをナインに突き付けた。
ナインは両手を挙げた。
「さすが、ナンバーズ。いや、それは旧称だったか。今はフリーナンバーメンズ」
青色の軍服のようなものを着た男は、ナインを知っているようだった。
「互いにコードネーム代わりに数字の番号を与えられた集団。しかし、君たちは仲間ではないのだろう? 互いが互いに敵同士。本部から任務を与えられ、互いにその任務を競ってこなしていく」
ナインは、右足の動きを相手に悟られないように確認した。右足に履いている革靴の先とかかとには仕込みナイフが入っている。
ナイフは歯の奥に仕込んであるボタンを押すと一気に出る仕組みだ。
「僕が殺した君のお仲間らしき人物は見てくれたかい。ホテルの廊下の真ん中で死んでただろう?争った形跡もなく。どうやって殺したかは、教えられないな。本人にでも聞いてみるといいよ」
軍服を着た男がピストルのトリガーに手を当てようとした瞬間、ナインは奥歯のスイッチをして男に蹴りかかった。
ナイフが付いた革靴が銃を握る男の右腕を裂き、男は銃を地面に落とした。
ナインは腰に隠していたピストルに手を手に取り、男に対して打とうとした瞬間だった。
ナインの胸元が血の色に変わり、そのまま地面にうつ伏せに倒れた。
「遅いじゃないか、ワン」
倒れたナインの足元から、一人の男が歩いてきた。
「みっともないな。イレブン」
「やめてくれ、君と僕と二人でイレブンだろう。僕は君がいなければただのワンだ」
「ああ、そうだな。これからだ。これから1人1人消していこう。俺たちの復讐は始まったばかりだ」
なんとなくあらすじを書いて投稿してみました。