ウィッチプログラム rev.9
ウィッチ...
千代田大学
ワーキングキャップにマスクをして辺りを気にしながら学舎に入る健。
「...」
階段を上る健を呼び止める慎一と直美。
「おい、色男。」
「っ!?」
二人に苦笑する健。
「また、あんたと...」
「星さん...」
苛立つ慎一の問いに冷静に答える健。
「なんで、直美ちゃんの名前は憶えてんだ?」
「あんたに名乗られた憶えはないよ。」
気を取り直して話を続ける慎一。
「ふん、まあ、いい。」
「直美ちゃんがお前ぇとじっくり話してぇてんで来たんだがよ?」
健の問いにドヤ顔の慎一。
「なんでここがわかったんです?」
「俺たちの仲間に事情通がいてよ。」
階段の踊り場に姿を現す八雲。
「どうした、健君?」
「せ、先生...」
八雲との再会に慌てる慎一を気遣う直美。
「き、貴様はっ!?」
「えっ!?」
二人を見下す八雲。
「ん、慎一君と...」
「健二君の元彼女の星泉...直美さんじゃあないかな?」
狼狽える直美と八雲の名前を思い出そうとしている慎一。
「え、なんで!?」
「何で私を知ってるんですかっ!?」
「あなたはっ!?」
「んんん、なんつー名前だったけか?」
自己紹介する八雲。
「八雲だよ。」
慎一の問いに答える八雲。
「そうだっ!?」
「お前も生き残ってたのかっ!?」
「お生憎様でね。」
「お前ぇはSealeaの手下じゃなかったのか?」
「残念ながら、SealeaJAPANは君らとSealea本社の傭兵に襲撃されて崩壊して
しまった。」
八雲は「ウィッチプログラム」創設メンバーで慎一についての研究や、健二の
誕生に深く携わっていた。
ドヤ顔で話を続ける八雲。
「そこで新たなスポンサーに売り込んだってわけだ。」
「健を連れてね。」
八雲に詰め寄る直美。
「こ、答えてくださいっ!?」
「何であなたはあたしことを知ってるんですかっ!?」
直美の問いを嘲る八雲。
「それはね。」
「私たちの手によって健二のもとに送り込まれたんだよ、君は。」
狼狽える直美を庇う慎一。
「なっ!?」
「言うなっ!」
「それ以上っ!」
激昂する慎一を見上げる直美。
「余計なこと言いやがったら、ぶっ殺すっ!」
「慎一、さん...」
八雲の言葉を堪えている慎一と直美。
「まあ、君と私たちのことは慎一君にじっくり聞くといいさ。」
「くっ!?」
八雲を問いただす慎一。
「それよりそいつはやっぱ、健二なのか?」
「どうだろうね。」
「ただいえることはウィッチの完成形ということだな。」
八雲の言葉に狼狽える直美。
「もう、直美さんの手助けもいらないというわけだ。」
「て、手助けって何ですかっ!?」
「何のことですかっ!?」
八雲の言葉に慄く健。
「思い出したんだろ?」
「君が健二君にしたことを?」
「え?」
八雲の言葉に慄く直美を見つめる健。
「な...」
「健二君の『雄』の覚醒だったんだよ、君の役割は。」
八雲の言葉に激昂する慎一。
「それ以上言うなっつってんだろっ!?」
怒鳴りまくる慎一の隣で震えている直美。
「おい、毬井健っ!」
「お前がまだ健二なんなら、こっちこいやっ!」
「いまだにそいつらはお前の事、おもちゃだとしか思ってねェぞっ!」
「うう...」
八雲を見つめる健。
「...」
八雲と健に向けて階段をダッシュする直美を止める慎一。
「くっ!?」
「な、直美ちゃんっ!?」
激昂している直美。
「毬井健っ!」
階段を駆け上がってくる直美に慄く健。
「あたしの許に帰ってこないんなら...」
「殺してやるっ!」
「っ!?」
八雲のウィッチ『グラビトン』に潰され、階段に突っ伏す直美。
「げあっ!?」
直美に駆け寄る慎一。
「な、直美ちゃんっ!?」
グラビトンは相手によって3倍以上の重力を感じさせる、らしい。
階段で突っ伏している直美の背後から、八雲にスマートボールを投げる慎一。
「この、クソ野郎ぉっ!」
スマートボールは「TONDEMO HOUSE」で市販されているもので専用の
腕時計端末か、スマートフォンアプリから着地してから360度操作できる。
慎一のスマートボールにはC4爆薬、煙幕弾、閃光弾などを実装している。
健に合図する八雲。
「健っ!」
八雲と健を巻き込み、炸裂するスマートボール。
「っ!?」
直美をかまいつつ、八雲たちを目で追う慎一。
「どうだ、ゴラぁっ!」
身をかがめ、爆発をやり過ごしている八雲と健。
「忘れたのか、慎一君?」
「健二、いや、健は精密機器にも信号を飛ばせるんだよ。」
「着弾する前にボールを起爆させた。」
二人を睨みつける慎一。
「き、貴様らっ!?」
上の階に駆け上がる八雲と健。
「はは、またな、慎一君っ!」
起き上がろうとしている直美に気をかける慎一。
「あ、な、直美ちゃんっ!?」
俯く直美の肩に手を掛け、気にしている慎一。
「い、いけるか?」
「うう...」
鼻血を流しながら答える直美。
「は、だ、大丈夫です。」
直美の状態に慌てる慎一。
「だ、だ、大丈夫じゃねだろがっ!?」
「大丈夫です。」
直美の答えに狼狽える慎一。
「こんなこと、小学生のころからしょっちゅうですから。」
「あかんやろ、それはっ!?」
片方の鼻穴を指で押さえ、血の塊を吹きださせる直美に納得する慎一。
「ふんっ!」
「あ、ああ...」
階段に飛び散る血。
「ダメなんです、アタシ...」
ハンカチで鼻血を拭う直美を見つめる慎一。
「健二...健君があたしを遠ざけようとすると...」
「直美ちゃん...」
泣き笑いの直美。
「わけが分からなくなっちゃんみたいです...」
複雑な表情で直美を見つめる慎一。
「何にも考えられなくなっちゃって...」
「...」
なんでウィッチなの、あたし?