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ウィッチプログラム rev.5

ウィッチプロジェクト

こぐま。

ディスプレイのニュースに見入っている健四郎、青田と常連客達。

「さきほど、民政党党首の稲庭氏が乗っていた車が首都高1号線、

浜松町出口で...」

民政党本部ビルに入る、こわばった表情の都が映し出される。

カウンターに突っ伏して寝入っている慎一。

「...」

番組を見ながら会話する青田と健四郎。

「この七井って先生、昨日、健二とテレビにでてた姉ぇちゃんじゃねぇの?」

「ああ。」

「民政党の広報本部長だ。」

青田の説明に呆れ顔の健四郎。

「三役じゃあないが、次期党首候補らしいな。」

「ふふん、そうきたかい?」

画面を睨みつける健四郎。

「健二とテレビ出た次の日に党首が事故死って...」

「茶番もここまでくりゃ、欠伸も出ねェってよ。」

青田の問いをいなす健四郎。

「稲庭さんは殺されたってことか?」

「まあ、妙なことにならなきゃいいがよ?」


おずおずと店の引き戸を開ける直美。

「...」

遠慮気味の直美に声をかける健四郎。

「こ、こんばんわ。」

「おう、直美ちゃん。」

「ひとりかい?」

戸惑う直美を招き入れる健四郎。

「は、はい。」

「いいですか?」

「はは、美人は大歓迎だぜ。」

健四郎と常連客とのやり取りに慌てる直美。

「なに、健さんの知り合い?」

「まあ、俺の自慢の義理の娘ってとこかな?」

「ええ、なんでっ!?」

「なな、なに言ってんですかっ!?」

カウンターに突っ伏している慎一に驚く直美。

「うおっ!?」

狼狽える直美に答える健四郎。

「し、慎一さんっ!?」

「おう、6時くらいから飲み始めてこのざまだ。」

席を詰めた青田と慎一の間におずおずと座る直美におしぼりを出す健四郎。

「で、どしたんだ、今日は?」

「...」

告白する直美の言葉に目を開ける慎一。

「全部、思い出しちゃったんです、あたし。」

「っ!?」

直美の告白に沈痛な面持ちの青田と健四郎。

「あたし、健二君に酷いことしたって...」

「そうか...」

お茶を健四郎から受け取る直美。

「でもその後、健二君が事件に巻き込まれて行方不明になったってことは...」

「インターネットの過去のニュースで知りました。」

「爆破テロの共犯者だとか、爆発でバラバラになって死んだとか...」

俯く直美を見つめる青田と健四郎。

「酷い事ばかり書き込まれてるSNSとか、いっぱい見ました。」

目を潤ませて懇願する直美。

「でも、何が本当のことなんですか?」

「教えてほしいんです。」

寝ぼけ眼で起き上がる慎一に驚く直美。

「教えてやれよ、青田さんっ!」

「ひやっ!?」

青田の前に小鉢を置く健四郎。

「はいよ、イカとねぎのぬた。」

「健二はウィッチの完成体となるべきに産みだされたんだ。」

驚く直美に答える青田。

「っ!?」

「産みだされたっ!?」

「そう、人工授精でね。」

青田の話を聞く直美。

「人工授精...」

「彼を生んだチームは不幸なことにあの震災で無くなってしまったが...」

青田に問いかける直美。

「出資者たちはウィッチの研究を続けることを望んだ。」

「出資者って?」

青田の問いに答える直美。

「Seeleaって知ってるね?」

「え、はい。」

直美の返答をフォローする青田。

「洗剤とかティッシュとか...」

「そう、表向きは世界最大の消費財メーカーだが、子会社は食料生産や

エネルギー関連の事業もやっている。」

「世界を牛耳れるほどの規模の企業のひとつだ。」

青田の言葉に驚く直美。

「彼らは健二のウィッチ、『魅了』の力で世界の覇権を握ろうとした。」

「ええ、それってっ!?」

苦笑する青田。

「はは、漫画や映画の話みたいだろ?」

真顔の青田に固まる直美。

「だが、彼らは本気だったんだ。」

「健二のウィッチがあれば、それが可能だと考えた。」

「っ!?」

青田を見つめる直美。

「今の毬井健の人気を見ればわかるだろ?」

「その健二を奪い合うのがことで、あの爆破テロ事件は起こったんだ。」


Seelea日本支社爆破テロ事件。

Seelea日本支社でテロが発生、爆破、建物は倒壊した。

爆破までに最上階付近で銃撃戦があったため、一般社員は避難し、

死亡者は無かったが、多くの行方不明者が発表された。

Seeleaの活動方針に反対する国内のテロリストの犯行と片付けられた。

そのテロリストのメンバーに健二の名もあげられた。


話を続ける青田。

「実際は健二の独占を図ったSeelea日本支社に...」

Seelea日本支社の屋上にパラシュートを背負い降下する民間軍事会社の

傭兵達。

「それを阻むためにSeeleaアメリカ本社は民間軍事会社の傭兵を送り込んだ。」

エレベーターに乗り込む緊張した表情の青田達。

「奴らに拘束されていた健二を取り戻すために、私たちはもSeelea日本支社に

乗り込んだ。」

倒壊するSeelea日本支社ビル。

「Seeleaたちの企みは阻止できたが、肝心の健二がいなくなってしまった。」

「彼を見守っていたウィッチの正一や晶、母の響子さんもね。」


青田の話に反応する直美。

晶っ!?


コップをカウンターに置く青田を見つめる直美。

「彼らは自分の意志で身を隠してるのか、だれかに攫われたのかは...」

「分からないのが今の状況と真相だよ。」

晶って、あの子も言ってた。

「そうなんですか...」

また飲みだした慎一が直美を問い詰める。

「そんなことより、お前ぇの気持ちはどうなんだよっ!」

「え?」

「健二とヨリを戻したいんか、どうかだよ?」

涙目で訴える直美。

「あ、え、ええ...」

「ヨリとか何とかはわかりません。」

涙を流しながら告白する直美。

「でも、あたしの人生に大きな影響を与えた人に...」

「どうなのか...聞きたいだけです。」

直美の告白を笑い飛ばす慎一。

「どは、はははっ!」

慎一に食って掛かる直美。

「直美ちゃん、お前ぇは根っからのドSみてェだな?」

「ど、ど、ドSっ!?」

慎一の言葉に怒りをため込む直美を気にする青田と健四郎。

「ようするに、パツイチ決められた男に『アタシ、良かったでしょ?』って...」

「...」

「お、おい...」

ウィッチ最大出力で慎一に怒りをぶちまける直美。

「言いたいだけなんじゃね...」

「※▼□Z●X!?っ!?」

慎一をタコ殴りする直美。

「な、そ、そんなんじゃないっ!?」

「いたたた、やめ、悪かったよっ!?」

背後では直美のウィッチで青田と健四郎を含めて、店内の客たちが

グロッキー状態になっている。

「...」

周囲に気付く直美の本心を確認する慎一。

「あれ、ど、どうしたんですか?」

「分かった。」

「え?」

コップ酒を口にする慎一。

「直美ちゃんも健二がどうなったかを知りたいんだな?」

「え、あ、はい。」

回復した青田の問いに答える直美。

「これからキツイことになるが、いいんだね?」

「は、はい...」

気付けに酒の入ったグラスを煽る健四郎。

「だがよ、毬井健が健二だって保証はねぇだろ?」

「そう簡単に決めつけて嗅ぎまわっちまっていいのかよ?」

健四郎の懸念に同意する青田。

「こっちの手が後ろに回ることもあるかもだぜ?」

「そうだな、慎一たちがドームで派手にやってくれたからなおさらだ。」

狼狽える慎一を置き去りにする青田。

「あ、あれはショーンたちがな...」

「そこは慎重に行こう。」

青田に説明に聞き入る直美。

「あの頃に担当してくれた刑事さんたちにも事情を話して協力してもらう。」

不機嫌そうに調理を続ける健四郎をよそに話を続ける青田。

「それにセレブや政治家まで巻き込んで、すでにコトは進行している。」

「...」

青田の言葉に不機嫌な慎一。

「3年前の事件のように非合法な手段を当たり前のように使ってくるだろう。」

「ふん。」

あれこれ議論している3人のなか、グラスを握り締める直美。

「どこまで警察が動けるかは別だが、やれるだけ働きかけてみよう。」


みんな会いたいんだ、健二君に...

思い出した健二クンとのこと。まだ、なにかあるのっ!?

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