表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/15

ウィッチプログラム rev.3

ドームの夜。

東京ドーム。

左翼外野席の最前列に佇むスタッフジャンパーとキャップ姿の慎一と直美。

何かを念じている直美。

グランドを見渡しながらつぶやく慎一。

「まあ、妙な事はしねぇと思うが...」


綺麗だねって言えっ!

「万が一のことがあったら...」


綺麗だねって言えっ!

ウィッチを使おうとしている直美に気付く慎一。

「な、何かやってんの直美ちゃん?」

「ええ、ダメなんですか?」

落胆する直美を気にする慎一。

「何がだよ?」

「いえ、いいです...」

「大丈夫かよ?」


なんだ。

ウィッチだなんていってもなにもできないんだ。

それともそれは健二クンの記憶とそれもなくしてるから?


前日の星泉家。

「お母さん。」

「え、なに?」

リビングでドラマを見ている両親に問いかける直美。


「ウィッチなの?」


帰宅した直美の問いかけにあっけにとられる両親。

「え?」

深刻な表情で顔を見合わせる両親。

「...」

父の問いに狼狽える直美。

「それは伊万里健二君に関係ある事か?」

「うっ!?」

直美を諭す父。

「そのことは、もう忘れろ。」

「健二君のご家族からは気遣いしないでほしいと言われてる。」

父の言葉を振り切り、自室への階段に向かう直美。

「お前は彼のご冥福だけを...」

「っ!?」

直美が立ち去ったあと沈黙する両親。

「...」

不安げに切り出す母に答える父。

「やっぱり、何かあったんじゃ...」

「ああ、そうだろうな。」

母を諌める父。

「俺たちのたった一人の娘だろ、あいつは?」

「何度も何度も揉め事に巻き込まれて...」

「守ってやりたいんだよ、俺は。」

憤る母に微笑む父。

「あ、あたしだってそうですよっ!」

「そうだよな。」


東京ドーム。

慎一の問いかけに狼狽える直美。

「ウィッチを使えないんだろ?」

「えっ!?」

慎一の言葉に慄く直美。。

「健二の記憶と一緒に無くなったんだろな。」

「だが、これからそれを取り戻すかもしれないぜ?」

「ええっ!?」

大歓声に顔をあげる慎一と直美。

「っ!」

ステージに現れる『ザ・ディーバ』、アレサ・ジェファーソン。

「!!!」

手を振り観客に応えるアレサ。

「コンバンワっ!」

感極まっている直美に囁く慎一。

「っ!?」

「わかるか、直美ちゃん?」

「えっ!?」

観客に手を振るアレサ。

「ヤツもウィッチだ。」

「っ!」


アレサは十代前半で自作の曲をメジャーレーベルに売り込み、16歳の時に

デビューした。

その後は黒人女性ながらあらゆる人種、世代にうけ、長くエンターテイメントの

頂点に君臨している。


アレサの言葉に熱狂する観客。

「キョウハ、ボクノ、トモダチガキテルヨっ!」

健を呼び込むアレサ。

「C'mon Maryっ!」

観客席の最前列から立ち上がる健。

「...」

振り返り客席からの大歓声に手を広げて応える健。

「...」

舞台にあがる健を見つめる慎一と直美。

「ふん、クソガキが。」

「英雄気取りかよ?」

「...」

アレサとハグ、頬にキスをする健。

「...」

舞台に用意されたピアノの前で自己紹介する健に沸く観客。

「初めまして。」

「毬井健です。」

大歓声のなか、お辞儀する健。

「...」

ピアノの椅子に座る健。

「今日はアレサとセッション出来るって聞いてます。」

「ね、お姉様?」

観客を煽るアレサ。

「Yes,My Puppyっ!」


鍵盤を爪弾く健。

「...」

雄たけびをあげるアレサ。

「C'mon Maryっ!」


間違いない、健二君だ。

佇まいは少し違うけど。


連弾しながら叫ぶ健。

「Can you tell me where I might find the wicht?」

雄たけびをあげるアレサ。

「Yeaっ!」

鍵盤を叩き、観客席に目をやる健。

「Has she still lived there?」


健二を見つめる直美。

どこか自分に自信のない、健二君。

でも、それが、どこか...


アレサとユニゾンで歌い続ける健。

「I can tell by the look in her eye.」

「You've never seen the woman with nothing to say.」


口を押えて震えている直美を気遣う慎一。

「大丈夫か、直美ちゃん?」

「ダメ、です。」

上気して慎一の胸に寄りかかり、見上げる直美。

「健二クンとアレサさんの歌声が共鳴して...」

「で?」

「それがどんどん私の中で膨らんでいって...」

直美の肩を抱いて健を睨む慎一。

「そう、それがあいつのウィッチ...」

「え?」

「『魅了』だ。」

寄り添い、見つめあう健とアレサ。

「I can tell by the look in her eyeっ!」

平気な慎一のことを不思議がる直美。

「し、慎一さんは平気なんですか?」

「ん?]

「ああ。」

慎一の答えに驚く直美。

「俺は元ウィッチだからな。」

「えっ!?」

「耐性はあるらしい。」

「ええっ!?」

元ウィッチてっ!?

何者なの、このヒト?


演奏を終え、繋いだ手を上げ観客に応えるアレサと健。

「...」

抱き合う二人。

「...」

観客に手を振り、舞台袖に引き上げる健。


袖に引き込む健の前に佇む慎一と上気している直美。

「いよう...」

「...」

二人に慌てながら嘲るような表情の健。

「誰?」

「人、呼びますよ?」

慎一の言葉に狼狽える直美。

「んな、水臭ぇ事言うなよ?」

「お前ぇの兄貴と、元カノだろが。」

「も、あ、兄貴っ!?」


慎一と直美の背後に降り立つ日本刀を携え、黒の細帯で目隠しした

ブレザー服姿の少年とセーラー少女剣士二人。

彼らに動揺する慎一と直美。

「っ!?」

切っ先を向ける目隠し少年に憤る慎一。

「健二君をこっちに渡してもらえますか?」

「んだ、手前ぇらっ!」

混乱する直美。

なんだこれ、なんだこれっ!?

あ、あたし、どうなんのっ!?


迫りくる少年少女たちに観念した直美の頭に響く声。

「っ!?」


深く息を吸って。


声に怯える直美。

え?


直美の異変に気付く慎一。

「はあぁ。」

「え?」


落ち着いて。

あなたの出来ることを考えて。


俯く直美。

「...」


健の手を取る直美。

狼狽える健。

「えっ!?」

健の手を取り、舞台へ向けて走り出す直美に慌てる慎一。

「っ!」

「なっ!?」

「な、何やってっ!」

「な、直美ちゃんっ!?」


クリスマスソングを歌うアレサの舞台に飛び込む直美と健。

「コイビトハサンタク...」

舞台を走り抜ける一同に慌てるアレサ。

「エエっ!?」

殿を務める慎一に切りかける少女剣士。

「って!?あぶねぇだろがよっ!?」

舞台を駆け抜ける一同にあっけにとられる観客たち。

「...」


舞台袖に駆け込む一同を追う、少女剣士たちに立ちはだかるモップを

手にした作業着姿のショーンとスンチュン。

「あとは引き受けるよ。」

目隠し少女の剣をモップの柄で受けるショーンとスンチュン。

「っ!?」

健に日本刀を振り下ろそうとする男子生徒に、ショップの売り物を改造した

キーリールホルダーを投げつける慎一。

「くのっ!?」

手元に巻き付くキーリールホルダーに驚く男子生徒。

「なっ!?」

直美と健に叫ぶ慎一。

「今のうちに逃げろっ!」

「は、はいっ!」


混乱する舞台袖を駆け抜ける直美と健。

「ちょ、ちょっとっ!?」

健に引き止められ、立ち止まる直美。

「君、誰っ!?」

健に見詰められ、汗だくで答える直美。

「ほ、星泉、星泉直美です。」

「星、泉さん?」

「は、はい。」

あきれ気味の健に失望する直美。

「僕のファンなの?」

「無茶苦茶だったけど、まあ、助かったよ、泉さん。」


覚えてない、私のこと。


緊張が解け、健の胸に身を預ける直美。

「あ...」

「泉さんっ!?」

肩を抱く健を見上げる直美。

「大丈夫?」

「ご、ごめんなさい。」

健の胸の中で微睡む直美。

でもウィッチが、まだ、続いてる...

自分を引き離そうとする健に狼狽える直美。

「ありがとう。」

「改めてお礼はするよ。」

「え、え?」


俯く直美を気に掛ける健。

いやっ!?

このまま行ってしまう?

「え、どうしたの?」


うつむきながら白目をむく直美。

もう、あたしのこと好きじゃないんなら...


健の首に手をかける直美。

「犯してやろうかっ!?」

「あの日みたいにっ!?」


ウィッチ最大出力の直美を引きはがそうと狼狽える健。

「ぐ、うわあっ!?」

「な、なにっ!?」

鬼気迫る表情の直美に首を絞められ、圧されていく健。

「な、なんだ、こ、これ...」

「やってやるっ!?」


「え、?」


自分と健のウィッチが緩和されていくのを自覚する直美。

「なっ!?」


切羽詰まった健と直美に声をかける健の女性マネージャー、

マリー・ペニー。

「ケン。」

マリーを振り向く健と直美。

「っ!?」

モデル立ちで健を諫めるマリー。

「ファンサービスがすぎるのはよくなくってよ?」

恨めしそうな直美から身を離す健。

「う、ん。」


なんだ、これっ!?

この女もウィッチなの?

マリーを凝視する直美。


肩で息をする直美に名刺を差し出すマリー。

「このお礼は十分にさせてもらいます。」

名刺を受け取り、虚ろな表情でマリーを見つめる直美。

「何かあったら私に連絡くださる?」

「...」


立ち去る二人を涙目で見送る直美。

「じゃあ、泉さん。」

「...」


直美に駆け寄る慎一。

「直美ちゃんっ!?」

虚ろな表情で涙を流す直美の肩に手をかけ慌てている慎一。

「大丈夫か?あいつに何かされたんかっ!?」

首を振る直美。

「い、いや、べつに...」


でも、思い出してしまった。

あの事は本当だったんだ。

涙ぐむ直美を抱きしめる慎一。

「ぐうう、慎一さん...」

「ほんまになんもなかったんか?」


ダメだ、ホント、アタシ...

これが、ウィッチ?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ