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ウィッチプログラム rev.2

あたしはウィッチっ!?

昼の報道バラエティ番組。

MCの男女のアナウンサーが健の話題を紹介する。

「本日の単独インタビューに出演したケン・マリーこと毬井健さんですが...」

スタジオに据えられたパネルを前に健の情報を紹介する二人。

「YouPanelにアップしてきた曲をまとめたアルバムを...」

「来月リリースする予定だそうです。」

パネルにはユニバーサルメディアと契約とか、YouPanelのビュー回数などが

書かれている。

「契約したレコード会社がアメリカで人気に火が付いたのも海外が先だったので...」

「活動拠点を海外に移すかと思われたんですが、日本からは離れないそうですね。」

パネルの通信教育のところで半笑いの二人。

「ご本人は通信教育の大学生だそうで、それ以外のプライベートは聞かないで

ほしいそうです。」

無難にまとめる二人。

「しかし、これからはメディアへの出演も解禁するそうです。」

「楽しみですね。」


御徒町の小料理屋、「こぐま」。

テーブル席で天ぷらと玉子焼きをパクついている黒髪の少年、ウー・スンチェンの

隣で液晶ディスプレイの番組を見ている金髪の少年、ショーン・ボクサー。

皆に問いかけるショーン。

「これって、健二クンだよね?」

カウンター席でコップ酒を手にキレる慎一。

「ちげぇよっ!」

慎一を宥める秋葉原のパーツショップオーナーの青田武郎。

「落ち着け慎一。」

慎一はカウンター内で小鉢をこさえている健二の義父、香住健四郎に詰め寄る。

「な、違うよな、おっちゃんっ!」

「...」

小鉢を青田の前に置く健四郎。

「はいよ、いんげんとこんにゃくの白和え。」

「ありがとう。」

タバコに火をつける白髪交じりの短髪、ノースリーブにシーパンの健四郎。

「女と一緒になったら息子がいて...」

「しばらくたったら、二人とも騒動でいなくなって...」

健四郎を複雑な表情で見つめる慎一と青田。

「もうな。」

「浮ついた気分にゃあなれない、いや、なっちゃあいけねぇのかなってな。」

「...」


健四郎は料理対決番組でフレンチシェフとして活躍していた。

そのころ風邪で罹りつけた千代田大学病院に勤務する健二の母、響子に

ひとめぼれしてしまう。

響子を口説き落として彼女の連れ子の健二とともに家庭を築くが、ある事で

二人と離別する。

現在は第一線から退き、対決相手から学んだ日本料理の技を生かして、

小料理屋「こぐま」を御徒町で開業している。


ショーンたちのテーブルから海老の天ぷらを箸でつまみながら振り向く直美。

「え、健二クンのお父さんなんですか?」

咥えたばこで答える健四郎。

「ああ、義理だがな。」

「連れ子なんだ、カミさんのな。」

青田のコップにボトルから日本酒を注ぎながら、話を続ける健四郎に戸惑う直美。

「記憶戻ったんだってな、直美ちゃん。」

「え、私の事...」

健四郎の話に驚く直美。

「ああ、ここへも健二に連れられて何度も来てたんだぜ。」

「ええっ!?」

苦笑いの健四郎。

「まあいいやね、ゆっくり思い出せば。」

「いや。」

「思い出さないほうがいいかもな。」

健四郎を諌める青田。

「健さん。」

「あ、すまねぇ。」

青田の言葉に手を止める一同。

「ただ言えることはウィッチを操る人物が現実世界に現れたってことだ。」

青田の言葉に動揺する直美。

「表舞台にな。」

「っ!?」


青田は電子工学と生物工学の融合を研究していた。

そのキャリアから『ウィッチプロジェクト』にスカウトされ、ウィッチの

育成に携わっていたが、プロジェクトはある災害で崩壊した。

その後はIT企業を渡り歩き、リタイア後の現在は秋葉原でパーツショップを

経営している。


「3年前、いろいろあったがウィッチは世間とは隔離されていた。」

「未知の能力ゆえにな。」

青田におずおずと問いかける直美。

「我々が分かるくらいだから、世界中のウィッチが反応しているだろう。」

「あ、あのう...」

直美の問いに呆れる慎一。

「さっきから、その...」

「ウィッチって何なんですか?」

「なんだよ、そっからかよ?」

「まあ記憶なかったんだからしょうがねェか。」

ウィッチを説明しようとするが、まとまりが付かずに投げ出す慎一。

「まあ、なんだ、なんだっけ?」


直美の問いに答える青田。

「生体電気信号って言うのがあってね。」

「セイタイデンキ...?」

青田の解説に喰らいつく直美。

「神経内を微弱な電気が駆け巡って人間のあらゆる器官をコントロールしているんだ。」

「へぇっ!」

話を続ける青田。

「それはわずかながら体表でも感知されることがある。」

「体表の生体電気信号を受信して、人工強化外骨格、つまりパワードスーツだな。」

「こいつを身体障害者の脚や手を健常者と同じように動かしたり...」

「普通の人間じゃ持ち運べない重量物の運搬なんかに活用されている。」

青田の解説に聞き入る直美。

「神経や精神が衰弱してコミュニケーションが取れなくなってしまった...」

「障害者の支援にも活用できないか研究されている。」

青田の話に動揺する直美。

「自分の生体電気信号を自由に他人に送信できる者。」

「それがウィッチと呼ばれている。」

「え、ええ、じゃあ...」

コップを傾けながら話を続ける青田。

「そうだな、他人を完全にコントロールするのは難しいだろうが...」

「あらゆる行動に干渉することは可能だ。」

「毬井健のように他者に感動を与えたり、それはある意味...」

「感情をコントロールするってことだろうね。」

唖然とする直美。

「そんな人がいるんだ...」

一同に問いかける直美。

「え、じゃ、皆さん、ウィッチなんですか?」

呆れ顔の慎一の答えに目がテンの直美。

「なに言ってんの?」

「こんなかでウィッチなのはお前さんだけだぜ、直美ちゃん。」

「へ?」


え、あたし、あたしはウィッチ?


狼狽える直美を尻目にグラスに口をつける慎一。

「う、ええっ!?」

「まあ、おいおい思い出せばいいんじゃあないの?」


健、健二クンと同じ?


狼狽える直美をフォローする青田。

「そ、そんな、そんなっ!?」

「待ってくれ直美さん。」

直美を諭す青田。

「ウィッチはそんなに特別なものではないんだよ。」

「現に私たちは健二たちと普通に接していた。」

天ぷらを頬張りながら二人のやり取りを冷やかに見るショーンとスン。

「それはウィッチ自身、君自身の心の持ちようだ。」

「悪用も出来れば、人のためにも役立つことができる。」

青田の言葉に混乱している直美。

「君次第なんだよ。」

「うう...」


それは『6年前の事件』に関係してる?

だめだ、思い出せないし。

聞き出す勇気もないし。


液晶ディスプレイのなか、原稿に目を落とす女子アナ。

「ここで驚くべきニュースが入ってきました。」

大げさに驚いた表情の女子アナ。

「なんと、来週来日して全国のドームでイベントを行う...」

インサートされるアレサ・ジェファーソンの映像。

「『ザ・ディーバ』ことアレサ・ジェファーソンのライブで...」

「毬井健さんがオープニングアクトで共演することが決まりましたっ!」

「何でも彼女はケン・マリーの大ファンだそうです。」

誇らしげに告知する女子アナ。

「このライブはCS-TOKYOで独占生放送しますっ!」

不機嫌な慎一と不安げな直美。

「なんだよ、悪りぃ予感しかしねェな。」

「...」


都内某所。

伊達眼鏡、キャスケット帽を被って移動している健。

健に声をかけるセーラー服の少女。

「毬井さん?」

振り向く健。

「...」

同時に健に『電撃』を仕掛ける梓名弓香。

「っ!?」

咄嗟に『リフレクト』で弓香のウィッチを拡散する健。

「なっ!?」

周囲の一般人たちが感電したようによろめくさまに驚く弓香。

「うっ!?」

身構える健に擦り寄る弓香。

「ふふ、さすがね、ケンジクン。」

「...」

騒然となる周囲を気にして弓香の手を取り、走り出す健。

「っ!?」

「ええ、な、なにぃっ!?」


人目につかない路地で息を切らす健をからかう弓香。

「はあ...」

「ふふ、あの程度で慌てちゃって?」

弓香を睨みつける健。

「き、君がやったのか?」

「そう。」

「あたしは梓名正一の妹。」

狼狽える健をいなす弓香。

「な、なにっ!?」

「ふふ、『晶』さんじゃあないわよ。」

「あたしは兄さんとは腹違いの妹...」

疎ましげに弓香を見る健。

「兄さんは養子だから、全然血縁関係はないけどね。」

「...」

身構える弓香を警戒する健。

「でも、あなたは兄さんの仇。」

「仇?」

エロい表情を見せる弓香を警戒する健。

「あたしは兄さんとは兄妹以上の関係だったの。」

「...」

身構える弓香。

「だから兄さんを殺したあなたのお命、頂戴します。」

うつろな表情の健。

「僕はそんな人、殺してなんかいない。」

健二クンと同じ、ウィッチ?

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