3 早すぎる初散歩
投稿の期間が空いてしまい申し訳ございません(´。・д人)゛
8月いっぱいまでは毎日投稿するのでよろしくお願いします(・ω・`人)
生まれて半年が経ちました! 首が座ってしばらくたった頃の赤ちゃん、リーリアといいます!
……ごほん。おふざけはこれぐらいにして真面目に今世でのプロフィールを確認しよう。今世ではリーリア=クラナとして生を受けた私だが、肉体としてはかなり良いだろう。
肉体は血筋に影響を受けやすい。前世でクラナという家は聞いたことはないので、恐らくは一万年の間に力をつけたのだろう。私が把握していないだけであったのかもしれないが、魔族の中でも強い力を持った者達は最低限把握していたため可能性としては低いだろう。
また貴族や騎士家系の中にも同じような家名は無かったはずなので一般の家庭、もしくは少し裕福な家レベルだろう。
今回の生ではあらゆる“特別”を排除することで「普通」で「一般的」な人生を送りたいと考えているのだ。
それに――
――これなら問題なく計画を実行に移せるだろう。
私はたただリア充になりたくて転生した訳ではないのだから。
為すべきことを成す。そしてついでにリア充になる。私は目的を再確認したのだった。
※
赤ちゃんプレイを本当にする羽目になるとは……。覚悟はしていたけど恥ずかしいにもほどがある。しばらく知り合いに会いたくないと思う今日この頃なのであった……。
外自体には人間の赤ちゃんと同じように生後一か月ぐらいの頃に抱っこで連れて行って貰ってはいるのだが、実を言うと家の敷地内からは出たことがないのだ。……もしかしなくともうちってかなり裕福なのでは?
まあそれは未来の私が考えるべきことなので今は放置する。知り合いん会う可能性については手紙にしっかり『後を追って転生するな』と書いた訳だし、そうそう転生しては来ないだろう。
もしくは転生せずに一万年間生き続けた場合だが、これはかなり低い可能性だろう。いくら長命な魔族であっても一万年は永過ぎる。流石にあり得ないだろう。
さて本日は初めて自分の足で散歩をするそうです! わくわくして夜しか寝れませんでした……てへへ。……うん、しっかり寝てるな自分。
実はまだここがどこなのか、まだ正確には分かっていないのだ。なので今日はその辺りもわかればいいんだけど、と考えながら支度を進める。と言ってもメイドさんがやってくれるので基本的にはされるがまま。まあ赤ちゃんだし、出来ることがある訳でもないんだけどね。
これからの方針を決めるためにも情報収集は必須。私が生きていた頃からどれだけ文化や技術が変わっているのか把握しなければどこぞのラノベ主人公みたいになりかねない。流石にそれは嫌だ。
それに場所によっては治安の悪いところも多くあるだろうし、誘拐なんてされたら目も当てられない。誘拐なんてされてしまったらちょっとした有名人になってしまい、リア充への道が遠のいてしまうかもしれない。
まあ、私の時代でもそこまで治安が悪いところは無かったから大丈夫だろう。それに当時は私や臣下達で犯罪グループを撲滅したり、治安が悪いところは警備を強めたり対策を取っていたのもあってか事件はそこまで多くなかった。
本人感覚では半年ぶりの外だが、町の様子は私が知っている物とは大きく異なっていた。
まず、魔法兵の姿が見当たらない。まあこれは別にいい。ここの住宅街は裕福な家が集まっているようで一軒一軒がかなり豪華だ。だが、貴族の家の豪華さには劣るため、やはり少し裕福な家レベルだろう。
しかし問題は魔法具を使用した警備が見受けられないことだ。私がいた頃は五分歩けば前前世でいうところの防犯カメラに該当する魔法具が設置されており、異常を検知するとゴーレム等で構成された隊が対応にあたる。その間に魔法兵が到着して処理などを行うのだ。
だが、そういった駐屯場所も見受けられない。犯罪が起きた場合、これで本当に対処できるのだろうか?
また私の記憶と照らし合わせてもこの町の風景を見たことはない。一万年も経っているため景観がある程度変わっているのは予想できた。だがこれは――……
私は様々な可能性を考えながらもどこか他人事に捉えていた。これは私の悪い癖で、人と自分との間に距離を作ってしまうのだ。自分一人で生活していた頃に人の営みをどこか別世界として捉えていた時の名残だろう。
魔王だったかつてはなんだかんだあって結局関わるハメになることも多かったが、今回は一般人。実害がない限り放置するつもりだ。
(……まあこれは今の大人達が対処すべき問題。私は自由気ままに第二の人生を楽しみますか!)
今全力を傾けるべきはこの初めてのお散歩イベントッ! ここで両親達と仲を深め、ゆくゆくはちょっとしたワガママを聞いて貰うのだ。
もちろん、リア充になるためにっ!!
あれ、でももうこの状況かなり仲良いのでは? と思うリーリアなのであった。
※
昼時になり昼食を摂る為に休憩スペースのベンチに腰を下ろした私たちは、家から持ってきたランチボックスを広げながら食事を取っていた。
中身は料理人たちが作ったサンドウィッチだ。具材は卵などのオーソドックスな物からこの世界独自の食材などが挟まれたものまで種類は豊富だ。
残念ながら私はまだ少しずつ離乳食を始めたところなのでまだ固形物であるサンドウィッチは食べられない。食べられるようになったら即作ってもらうことにした。
「はい、リーリアご飯だよ~」
「あうがと!」
流石にまだ両親の前で念話魔法で話しかけることは憚られたので、仕方なく赤ちゃん言葉で意思を伝えようとする。が、やはりまだ発達しきってない体で話すのは無理があった。
しかし両親や使用人達はしっかりと意思を汲み取ってくれるので最近ではエスパーなのでは……? などと考え始めた私であった。
「リーリア、こっちも食べるかい?」
「あう!」
……そこに魔王と恐れられた魔女の面影は一ナノメートルも無かった。どこからどう見ても親バカ疑惑が強めな両親と無邪気な赤ちゃんだ。
(あとぶっちゃけ甘やかしてくれるの嬉しいからもっと甘やかしてくれてもいいんだよ?)
などと考え始めたリーリアであった……。うん、知り合いには誰にも見せられないな。うん。
※
「そう言えば最近子ともが拐われたって事件、よく聞きますわね……」
「ああ……。気をつけないとな……」
リーリアが食事を終えて一人で歩く練習を眺めながら彼女の両親は密かに不穏な話題を口にしていた。
実は最近、きな臭い噂が流れ始めた。なんでも女の子を狙って誘拐する事件だそうだ。
巷では「重要機密に関わることで詳細は一部の者にしか知らされていない」などとも言われ、曰くのついた事件だった。
その噂は本当でこの事件は国家、ひいては世界を揺るがしかねない可能性があるとして一部の者にしか伝えれてしかいない。
そして二人はその一部の者にあたるため、この事件の深刻さを理解していた。
今回の散歩はその捜査も兼ねたものだったのだ。最初は二人も反対したが、警戒されていない状態で誘拐された場合目も当てられないので早めに解決するべく今回の囮作戦に協力したのだ。
そのため現在彼らの周りには多くの魔法兵が隠れながら警備にあたっている。
もちろんリーリアもそのことに気が付いているため、一人で歩く練習をしているフリをしつつも散歩中常に聴力や視力を強化して情報を集めていた。
今のリーリアはまだ生まれて間もないため、前に比べるとかなり能力は落ちている。しかし、強化魔法を使えばある程度は補えるので今回の場合ならこの町全体をカバー出来れば十分だろう。
生まれてすぐの時よりかは幾分か体も耐えられるようになってきたので最初よりも強めに強化をかけた状態だ。
両親や他の者にバレないように隠蔽系の魔法も常時発動状態だ。警戒のし過ぎ感は否めないが万が一もあり得て欲しくないのだ。
(まあ、よっぽどのことがない限りは大丈夫だろうし。そこまで警戒する必要もないんだろうけど)
リーリアは周囲をちらりと見渡してその厳戒態勢に「うーん……」と心の中で呟いた。恐らく町で魔法兵やゴーレムの一小隊とも出会わなかったのはこれのためだと思いたい。
でもこんなに露骨にして大丈夫なのだろうか……? 相手に感づかれて逃げられる可能性が高くなりそうなものだが。少なくとも私ならもう少し兵の数を減らして隠蔽系の魔法を使って備えるように動く。
そこでふと、前世の記憶が呼び覚まされた。アレは確か城でも一、二を争う問題児だった彼らが地味に難しい魔法を作って驚かせようといたずらを仕掛けてきていた時だった。
『むー! 今度こそ引っかかると思ったのに!』
『ふ。まだまだ甘いわガキども! 私を引っかけたければもっと魔法の研究に励むことね!』
『ミナってこういう時はすごい態度デカくなるよね。男に声かける時とは大違い』
『そこ、余計な事言わない!!』
あの時は確か隠蔽魔法と攻撃魔法、さらに幻惑魔法を組み合わせた複合魔法だったはず。あのレベルであれば今の私でも行使出来るだろう。
回想を終わらせ、意識を今に戻す。
警備の件は指摘するつもりはない。こんなこと指摘できる赤ちゃんが居てたまるか。
けど、それでも。
(この暖かい家族は危険に晒したくない)
今世の両親はリーリアにとても優しく、深い愛情でもって接してくれている。初めてのことで少し困惑することも多くあったが、すごく――本当にすごく居心地がいいのだ。
彼らの為なら少しだけ、本気になってもいいと思えるぐらいに。
今のリーリアに出来ることは少ない。ある程度の魔法は使えるとはいえ、過度に負荷をかけるのは成長に影響する。前世なら呼吸をするように行使していた魔法や能力も今では意識していないと途切れてしまいそうになる。
こんな不完全な状態で果たして守り切れるのだろうか……と不安に駆られる心を無理矢理落ち着ける。
(もう二度と失うつもりは、ない)
リーリアは密かな決意を固める。
しかし事態は予想よりも悪い方向に進んでいることに誰も気が付けないのだった。
彼らのすぐ近くまで、魔の手は迫っていた――……。
2日になってしまった、、、
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