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1 とある少女の転生

今回から本編スタートです( ・ㅂ・)و ̑̑


(2023/02/09内容の加筆修正行いました)

 その手紙は受け取った者達に大きな衝撃を与えた。いつかやらかしかねんな、と想像していた事態の斜め下な行動に困惑と呆れ、その他諸々の感情でもってそれぞれが対応に追われることになったのだった。



 その一連の騒動の発端は一通の≪送文(レター)空間魔法(スペース)≫からだった。


 送り主は『紫黒の魔女王(ウイッカンクイーン)』。


 彼女は単独で世界を滅ぼせると言われる魔女達の集団・『色付き魔女(カリラン)』の中でも飛び抜けて力の強い魔女であり、人付き合いを嫌う魔女のなかでもまだ社交的だった。そのため、色付き魔女(カリラン)のメンバーと連絡を取ろうとするのであれば彼女を通すのが一般的だ。

 また魔族の国の女王でもあるため、彼女だけは魔女王と呼ばれている。しかし多くのものは彼女のこと魔族の王を略して魔王と呼び、畏怖と崇拝される存在だった。


 彼女は滅多に自分から手紙を出さない。


 魔女のなかでも社交的とは言え、あくまで魔女。一般的に社交的と呼ばれる性格からは程遠い。また、やり取りは全て手紙。そして滅多なことがなければ自分から手紙を出すことはなく、あくまで頼まれた手紙のやり取りを行うのみ。

 そんな彼女が手紙を送ってきたということで、受け取った数少ない親交のある者達は不安や嫌な予感などを胸に緊張した面持ちで封を切る。その内容に驚愕するもの、頭を抱えるもの、目の笑っていない笑みを浮かべるもの……それぞれ反応を示した。


その内容は――……


『親愛なる仲間達へ


 このままいくと結婚どころか恋人も出来そうにないので転生します。探さないでください。追って転生してきたら口にタバスコ突っ込みます。


追伸 歴史書から魔王の名前を消しといてください。黒歴史なので。


 ミナ=ダグリアより』


 というものだった。普段事務的な手紙しか出さない為か、最低限の内容しか記されていなかった。


 そもそも≪転生魔法(リンカーネーション)≫とは一般的にはおとぎ話とされる魔法だ。

 実在すると知っているものもごく僅か。ましてや使える者などこの世界の実力者の中でも一握りと言われている。


 なぜここまで難易度が高いかと言うと、転生魔法は複数の魔法を組み合わせる必要があるからだ。これは≪複合型魔法(コンポ―ジット)≫と呼ばれる超高等技術であり、繊細な術式構築と魔力操作を要求される技術だからだ。


 ≪転生魔法(リンカーネーション)≫はまず魂の存在を認識する必要があるが、この時点で躓く者も多い。これは完全にセンスや才能と言った先天的な能力がモノをいうからだ。

 まず魂とは意志ある生命の根幹となるものだ。魂が消えれば肉体が生きていても死に至る。しかし魂さえ無事であれば新たな器さえ用意できれば生存が可能なのである。

 そのためいくら戦闘能力が高く、≪複合型魔法(コンポ―ジット)≫が使えたとしてもこの魂の認識が出来ない時点で≪転生魔法(リンカーネーション)≫を使うことは出来ない。


 魂の認識が出来たら次に転生時に魂が傷つかないように保護を行う。

 魂を保護するための≪結界魔法(バリア)≫、障害が出てきた際に排除するための特殊な≪攻撃魔法(アタック)≫、未来へ魂を飛ばすための≪時間(タイム)空間魔法(スペース)≫、魂の維持・新たな肉体への定着のための≪回復魔法(ヒール)≫を同時発動する必要がある。


 まず≪結界魔法(バリア)≫。魂は肉体という器がなければ霧散してしまう。魂は水のようなものであり、その水である魂の受け皿となる肉体がなければ零れ落ちてしまうのだ。

 しかし≪転生魔法(リンカーネーション)≫が発動すると肉体は分解されエネルギーとして使用される。そのため未来までの亜空間において肉体の代わりになる結界()が必要になるのだ。

 また攻撃から魂を守るために防御結界を張る必要がある。そのため魂の一時的な器である結界と防御結界の二重結界の必要があるのだ。


 次に特殊な≪攻撃魔法(アタック)≫。これは亜空間では通常の≪攻撃魔法(アタック)≫は効果がないからだ。亜空間には未知の生命が生息しており、それらを排除するためには≪時間(タイム)空間魔法(スペース)≫と掛け合わせた≪攻撃魔法(アタック)≫でなければ干渉することが出来ないのだ。


 そして≪時間(タイム)空間魔法(スペース)≫。これは魂を未来へ飛ばすための魔法である。この難易度は飛ばす先の年月によって決まるため、今回飛ばした一万年はかなり難しい方に分類されるだろう。

 ≪時間(タイム)空間魔法(スペース)≫は時と空間に干渉する魔法だ。時と空間は同じ性質を持つためどちらかに強く干渉する場合は、もう一方にも影響を与えてしまう。放置してしまうと術者に悪影響が出る可能性があるため魔法による緩和が必要とされる。

 今回の場合は時に影響を与える一方で空間にも干渉する必要がある。そのため難易度は最大級といえるだろう。


 余談だがこの魔法から派生して生まれたのが≪転移魔法(テレポート)≫である。これは空間を移動するための魔法だが、今と今を結びつけるだけなので難易度はそこまで高くはない。そのため使い手も多くいたが転移先の状況を確認せずに転移すると割と事故ることもあり何度も騒動が起こったりもした。


 最後に≪回復魔法(ヒール)≫だ。これは魂の維持に必要な生命エネルギーを回復したり、結界を貫通してきた攻撃があった場合に魂の修復を行うのだ。この魔法が不完全であったり、回復不能なほどの損傷を受けると魂の欠損が起こり最悪の場合死に至る。


 そして成功させるための最低基準として考えられているのがこれらの魔法を上級以上の行使だ。これが出来なければ途中で死亡してしまう可能性が一気に高まる。


 上級魔法とは初級・中級・上級に分類される魔法の難易度のうちで一般的には一番難易度が高いとされるものだ。

 上級魔法が一つでも使えるだけで優秀、複数の上級魔法が使えるものは全世界で数パーセントと言われるほどに難易度は高い。

 また、この数の魔法を魂が未来に到着し母体に定着するまで維持するためには莫大な魔力を必要とする。

 しかもこれらの魔法は使い手も少なく、全てを使えるものは更に少ない。魔法研究の界隈では『真なる魔法』と呼ばれ、多くの魔法研究者達を悩ませてきた難問の一つである。


 それを当たり前のように使って転生すると書かれた手紙は読み手を驚かせつつも『彼女なら出来るだろう』と全員の一致した考えだった。彼女はそれだけ色々(本当に色々)なことを成し遂げて(やらかして)きたのだ……。


 魔王の唐突な転生。


 これに魔族の国の民は大いに混乱するかと思われたが、部下に仕事を任せて(丸投げして)いたために大きな混乱もなく国は動いた。


 混乱は魔族の国よりも他国の方が重大だった。

 魔王は隣国のみならず、他大陸にも大きな影響力を持っており手紙を受け取った者たちから瞬く間に世界中に広がっていった。



 魔族の国から離れたとある人族の国の王宮・玉座の間。

 そこでは金を溶かしたような髪を持つ、精悍な顔つきの男性がキレ気味に手紙を丁寧に畳んでいた。

 身に纏う豪華な衣装は一国の王に相応しい仕上がりとなっており、玉座に座り謁見者を見下ろす様は“王”そのものだ。

 その様子を見守りながら臣下達は(ああ、性格が出ているなぁ……)と思いつつも、この王の本性を知っているがゆえにヒヤヒヤしていた。


魔王(あのバカ)が転生しただと……っ!? まさかそう来るとは……俺も転生する!! あとは任せたぞ!」

「陛下!? お待ちください!! ちょ、あんた国王でしょうがッ!!」

「お願いですから陛下、他国の王をバカ呼ばわりはやめてくださいと何度も言っているでしょう!?」


 髪と同じ美しい金色の瞳で虚空を睨みつけながら「チッ」と舌打ちする様は漏れ出る殺気と相まってかなり怖い。

 そんな臣下達の叫びはこれからの算段を立てていた彼には何一つ届いていないのであった……。

 臣下達の心労は続く――



 エルフの里・里長の間。

 そこには若葉色のロングヘアを背中に流した美しいエルフの女性が手紙を読んだ後、エメラルドのような瞳を涙目にして叫んでいた。

 仲間内から「黙っていれば上品なお姫様みたいに見えるのに……」と言われる通り、口を開くと残念な彼女は今日も絶好調で残念だった。


「お師匠様ぁっ! 転生するなら言ってくださいよっ! 私も弟子として早急に転生しなければっ!」

「おい、自分の立場を考えろ!! つか追いかけて来るなって書いてあるだろうが!」


 思わず、と言った風に隣で一緒に手紙を読んでいたエルフの男性が叫ぶ。

 彼も彼女と同じ若葉色の髪を短く切り揃えており、気の強そうな釣り目も同じくエメラルドをしている。


「私は弟子です! 本来であればお師匠様のサポートをすべき立場です!!」

「確かに……って違う!! 待ちやがれ、この残念女!!」


 流されかけた男性がハッとしたように転生の準備に取り掛かるため立ち上がった女性を追いかけて里長の間を後にした。



 ドワーフの国・王の鍜治場。

 そこでは逞しい腕を振るいながら、読み上げられる手紙の内容を聞いていた一人のドワーフが呆れた顔でため息をついていた。

 ドワーフはエルフよりも背が低い代わりに肩幅も広く、ガタイが良いものが多い。褐色色の肌は火の熱に耐えられるように厚く、魔力よりも筋力に優れた一族だ。


 この国の王である彼もその例に漏れず、屈強な体躯をしている。

 また戦闘能力も高く、その剛腕から放たれる攻撃の威力は世界でもトップクラスと言われている。


「また騒動が起こる予感がする……」

「心中、お察しします……」


 手紙を読み上げていたドワーフは目を伏せ王の心労を思った。苦労性の国王は間違いなくやらかす顔を思い浮かべ頭痛がすると言わんばかりに眉間にシワを寄せたのだった……。



 何も見えない暗闇の中、ソレは薄く嗤っていた。その嗤いは聞くモノに怖気と嫌悪を与えるような声だった。

 この空間を満たす闇はあらゆる負の感情を煮詰めたような、そこに居るだけで気が狂うような場所だ。

 唯一この空間に居る/在る存在は、この星にあるあらゆる生命と一線を画した存在感だ。姿は分からず、超常的な力を持っているとしか分からない。


「ほう……? 魔王め、転生したか……。フ、フフフ――」


 そう呟くとその姿は掻き消え、そこには何もない闇のみが残った――……。



『魔王転生』


 彼女の知らないところで事態は進む。彼女の思惑と全く逆の方向へと世界は進み出す。

 魔王の転生は波乱の幕開けでもあった――……。

 なお、魔王の手紙にある『追わないでください』に関しては綺麗さっぱり破られるようだった……。

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