#6ー結論
翌朝。二人はまた集落跡地へと戻っていた。
一日にして友情やらなんやらの関係を結ぶことは無かったものの、現状二人が生き残るのはお互いの存在が必要であった。
利香側からすれば食料の供給元として。
健二側からすれば現状の情報源として。
二人は集落跡で何日か過ごすことになった。
自分の現状を利香に話すと、彼女は意外とあっさりそれを理解してしまった。
何でも「そうでもないと寧ろ異常」だそうだ。
確かに、無限に長芋を生み出す時点で普通ではないのだ。
その上で利香に何が起こったのかを聞いてみた。
「まずどうしてこんなことに?」
「わからない。でもお父さんとお母さんは『実験の失敗』って言ってた。」
それ以上のことはわからないらしい。
無理もない。世界がこんなことになってしまったのはもう五年も前のことだ。利香は当時小学校の低学年ほど。難しい話を理解するのは無理がある。
その後すぐにシェルターのような物に籠もる生活が続き、一年ほど前に地上に出てきたらしい。
「大体一ヶ月前までお父さんはいた。でも最後に残ったお父さんも…」
「それ以上はいい」
胃から上がってくる物をもう一度飲み下す。
地上に上がってから一年足らずで、集落に集まった人間は彼女一人になった。
理由は、地上に一切の生き物がいなかったことだろう。簡単に言えば食糧不足というわけだ。
何故生き物がいなくなったのかは『実験の失敗』が影響しているのだろう。
ファンタジーめいた話になってきたな、と健二は苦笑いを浮かべる。
「これからどうする?」
「どうしようか」
幸いと言っていいかはわからないが、大型動物に襲われて死ぬことはない。
問題は病気と寿命。食料に関しては問題ないと言えなくもない。
「…もしかしたらさ。まだ間に合う人達がいるのかも知れない。」
食料があれば、利香がいた集落は壊滅せずに済んだかも知れない。
そして食料であれば、健二が生み出すことが出来る。
しかし、それを巡って争いが起きる可能性も…。
健二は考え込んだ後、立ち上がった。
「そうだとすれば、立ち止まってる暇なんてないな。」
「…ありがとう。」
身勝手な願いに付き合ってくれることへの感謝か。利香はお礼を言って健二の後に続く。
健二にもどこへ行けばいいのかはわかっていない。
それに、元の生活に戻りたいという気持ちは未だ大きい。
しかし、もう戻れないことも悟ってしまった。
だから、せめて出来ることをしよう。そう決意を固め、彼は歩き出した。
目標は近くに見える禿山、前登ったのとは別の山だ。
また山の上から見下ろせば、何か見つかるかも知れない。
今度は独りではなく二人で、山の上から文明の明かりを探すのだ。
お付き合いいただきありがとうございました
すっきりしなかった方も多いかと思います
何故長芋を生み出せるのか、なぜ生物はいないのか
それがわからない、というのがこの話のテーマの一つとして書きました
結局の所、健二は何でもできる主人公ではなくて、只の一般人だったのですから