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神様がいない街  作者: 新坂つばめ
1/1

出会い


「神様…どうか孫が、元気に生まれますように…」

シャン、シャン、シャン


土地神様って聞いたことがあるだろうか。その土地、あるいはその地域、あるいはその街、そこを守る神様って感じの。正月には神社とかにいってお参りするだろう。今年一年、元気に過ごせますようにとか、受験受かりますようにとか。様々な願い事がある。その願い事は、叶ったり叶わなかったり。叶った者は神様のおかげだと喜び、感謝をする。


…馬鹿馬鹿しい。


この世に神様なんて存在しない。俺だって願い事をしてる。俺の願い事はただ一つ、この街で事件事故が起きませんように。ただそれは叶わない。それは俺がいるからだ。ただそれはお前の運がないだけだろとか言う奴もいる。これは運の問題ではない。俺がいる街は事件事故が急増する。引っ越しても引っ越しても、俺が来る街には必ず事件事故が急増する。…俺が守らなければいけない側なのに。だから俺は断言する。


この世に神様なんて存在しない。






4月。桜が舞い散る、よく晴れた日。新クラスになり、新たな教室に新たなクラスメイト。大抵の人は楽しみでしょうがないだろうが俺は…


「よー犬飼、新クラスはどーだー?」

「だーれも仲良い人いないよ」

「だっはっは!それは運がわりーなー!ちゃんと俺と同じクラスになれますよーにってお参りでもしとけよ!」


昼休みになり、一年の時に仲良くなった西が弁当を持ち俺の元へとやってきた。相変わらず口が裂けるんじゃないかぐらいに口角をあげた笑みを俺に見せる。この顔を見ると、とても和む。


「だから言ってるだろ、西。俺は神様なんか信じてないんだ。ただし俺の運が悪いわけじゃねー」

「お前はいっつもそれだよなー。いい加減さ、運が悪いって認めろよ。うんこだしすぎなんじゃね?運だけに」

「悪くねぇし汚え。それに臭え」

「漏らしてねーわ!」


飯食い中にこんな会話は最低だと思うよ、自分でも。でもこいつがいてくれるお陰で、俺はぼっちではなくなっている。感謝感謝の毎日だ。


「俺、この後職員室に用事あるんだよ。悪いけど待ってて」

「それなら俺も行くわ、暇だし」


西は残っていた弁当をかき集めるようにして口に頬張り、二人で教室を出た。西は自分の教室に寄り、弁当箱を置いてくると中へ入っていった。それにしても西は人気者だ。教室へ入るなり色んな人に声をかけられている。それに対して西は一人一人に笑顔で対応し、上手くコミュニケーションをとっている。俺もそんな誰に対しても笑顔でいる西だから、一緒にいるんだけどな。


どんっ!


俺は敬意の眼差しで西を待っていると、背中に何かがぶつかった。それは対して強くはなかったがびっくりした俺は前へよろけてしまった。


「ご、ごめんなさい!前見て歩いてなくて!」


ぶつかったのは何かと思い、振り返るとそこには女の子が座っていた。座っていたと言うより転んでいたの方が正しいかもしれない。その女の子は自分の持っていたであろう教科書を拾い集め、俺に深々と頭を下げた。


「こ、こちらこそごめん!ここに立ってて!」


俺は謝る必要もないのに慌てていたせいで変な謝り方をしてしまった。ちゃんと廊下の端っこにいたし、十分歩けるはずだ。そんなことはどうでもいい。今は彼女の教科書を拾わねば。俺は彼女がまだ拾っている教科書たちを拾い集めた。


「すみません!拾っていただき、ありがとうございます!」

「い、いえいえ!怪我とかしてない?」

「大丈夫です!このとーり!」


彼女は手を大きく開き、体全体をアピールする。と、同時にまた持っていた教科書をバラバラと廊下に落とした。彼女ははっと床をみて、笑いながらまた拾いだした。て、天然だなーと思いながらも俺も手伝っていた。何度も何度もご迷惑をおかけしましたー!とペコペコ頭を、何度も何度も下げてきた。


「それでは、失礼します!」


彼女は笑顔でそう言い、足早に去っていった。その笑顔は…なんかこう…言葉では表しにくいけど…一言で言ったら…その…


「可愛い」

「口にでてんぞ、犬飼」


後ろには西が、弁当箱を置いて戻ってきていた。西はなぜかニヤニヤしている。


「エ、ナンモイッテナイヨ?」

「嘘下手か。なんだ?一目惚れでもしたか?」

「…したみたい」

「おお…マジかよ。素直だな」


西は苦笑いしていた。





「失礼しました」


扉を閉め、俺は職員室からでた。廊下では西が待っていた。


「お、早いな。なんだ、いなかったか?」

「うん、いなかった」

「どーせ家帰ったら会えんだろ?なら今じゃなくてもよくね?」

「まーね」


俺はある先生に用があってきたのだが、その先生はいなかった。ま、あの気まぐれ先生のことだ、どーせ学校の外に無断で出ているだろう。


「てかお前がこの地区の守神、犬家のやつだってまだびっくりしてんだけど」


そう、西が言う通り俺は犬家の人間だ。犬家といえばこの学校もある南賀区(なんがく)の守神のような存在。代々この地区を事件事故から守ってきた。他にもこの『街』は地区ごとに守神(まもりがみ)がいる。それが犬家をいれた十二支家(じゅうにしけ)。十二家がこの『街』をそれぞれ分けて守っている。


「…その話はもういいだろ。それ以上言うと縁切るぞ」

「わりーわりー。もう言わねーよ!」

「嘘だよ嘘。縁切ったりなんかしねーよ」


俺も縁切るとか言ったが、切ったらぼっちになるからすぐ撤回する。でまかせは言うもんじゃない。






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