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担当業務

 ドライブも終わりやっと家に着いた。

 時計の針は既に十二時を過ぎている。


 社内で熟睡していた小町をアリスがお客さん用の布団に寝かしつけているのと同時に、俺は小町の枕元に今日買った服を置いてやる。

 そうしたら次は買い込んだ食材を冷蔵庫と冷凍庫へしまっていく。

 こうした作業はアリスも得意らしく、俺と一緒にてきぱきと片づけて行った。


 さて、今日は風呂を沸かしている暇はない。

 なぜならこの後にアリスとの夜の部が控えているから。

 よし、さっさとシャワーを浴びるとしよう。

「アリス、先にシャワーを使うぞ」

 アリスからの返事はないけれど、準備は大事だ急ごう。


 うう、楽しみすぎて気ばかりがいてしまう。

 ここを洗ってこっちも洗ってこんな所も洗ってと。


 あれ?

 なんで浴室の扉が開いたの?

「ご一緒しますねゲンボクちゃん」

 当たり前のように全裸のアリスが浴室に入ってきました。

 2日目にして浴室プレイです。


 胞子エネルギー充填完了!


 アリスに身体を拭いてもらうのが心地いい。

 よし、今日もぐっすり眠れそうだ。


 アリスは俺の布団を中央に敷くと、その右に自分の布団を敷き、左には小町を起こさないように彼女が寝ている布団を引っ張ってきた。

「目が覚めたときに一人では、小町もさびしいでしょうから」

 細かいところに気を使うんだなアリスは。

 ドライブ中は小町に対してちょっとお威張りさんだったけれど、全てを許すとしよう。

「お休みなさい、ゲンボクちゃん」

「ああ、お休み」

 

 翌朝、俺が目覚めると既にアリスと小町は朝のシャワーを浴び終えて、それぞれ着替えていたんだ。

「お姉さまに着替えを教わったの」

「そうかい、よかったな小町」


 小町は白のTシャツに膝丈の山吹色の短パン、そこに木綿のエプロンを合わせている。

 これは夏らしい可愛らしさだな。

 劣情をもよおすのには罪悪感を感じてしまう姿ではあるが。


 すると小町は俺の心を読んだのだろうか?

「この服だともよおせないの?」

 いちいち確認しなくていい。

 

「ゲンボクちゃん、似合っていますか?」

 アリスは涼しげな半袖のブラウスに薄手のひざ丈スカートだ。

 ブラウスの白とスカートの紺も涼しげだ。

 その姿なら、どこから見てもとっても綺麗な事務員のねーちゃんだな。


 ところが、どうやらアリスも俺の心を読んだようだ。

「ねーちゃんというのはやめていただけませんか?」

 しかめっ面も可愛いぞアリス。

 

 そんな会話を終えてから気づいた。

 いつの間にか丸い食卓に朝食が三人分並んでいる。

「小町がこしらえたの」

「小町に用意させましたわ」

 なんでアリスの方が威張っているのか分からないが、まあ良しとしよう。

「小町、アリス、いただきまーす」

 ちょっと頬を赤らめた小町には気づかないようにしておこう。

 

「これはお弁当」

「おお、気が利くな小町、それじゃアリス、今日も役場に稼ぎに行こうかね」

 ところが、俺とアリスが出かけようとすると、小町もエプロン姿のまま玄関にやってきた。

「私も行くの、一人は怖いの」


 あーそうか。

 でもなあ、役場に託児所はないし、困ったなあ。

「ゲンボクちゃん、一応小町は成人ということになっておりますよ」

 あ、そう言えばそうだった。

 それに小町の住民票もこしらえる必要があるか。


 結局今日は三人でいつもの道を歩いていく。

 小町にも役所の仕事を手伝ってもらおうかな。

 ならば面接代わりに聞いておこう。


「ところで、小町は料理以外に何ができるんだ」

「ゲンボクちゃんの夜のお相手なの」

「いえね、それは横に置いておいて、昼の部のお話なんだけれど」

「お料理が得意なの」

「それ以外は?」

「ゲンボクちゃんの夜のお相手なの」

 ループしているなあ。


 まあいいか、料理が得意なのはわかったから、とりあえずは小町も村役場に就職させよう。

 仕事はそれから考えるとするか。

 

 それじゃあ今日も稟議と採用誓約書を持って村を回るとするか。

「それじゃ小町行くぞ」

「はいなの」

「それではまいりましょうか」


 え?


「いや、アリスは受付を頼む」

「わたくしも一緒に参ります」

 これって昨日と同じ反応だよね。

 なんで泣きそうな表情で訴えかけてくるのアリス?


「すぐに戻ってくるからさ」

「どちらに行かれるのですか?」

「村長と議員の爺さん達のところ」

「他には?」

「これだけだ」

 するとアリスは一転して笑顔になった。

「それでしたら問題ございませんわ」

 何が問題ないのかよくわからないが、機嫌が戻ったのは良いことだ。


 ということで、今日も書類を持参して村長のお宅と、村議会議員三名のお宅を巡ったのだが、今日はその度に小町がお土産を持たされたんだ。

 それはナスやらカボチャやらトマトやらの、どれも爺さん婆さんたちが自給自足のためにこしらえている、市場に出さない野菜たち。


 どうも小町には、無意識のうちに食材を持たせたくなる魅力があるらしい。

 もしかしたらこれが小町の特殊能力か?


 村を一周して役場への道に戻った時に、小町がこんなことを言い出した。

「ゲンボクちゃん、一旦家に寄ってほしいの」

「どうした?」

「役場で料理をするの。だから調味料が欲しいの」

 そうか、まあ暇にしているよりその方がいいか。


 家から調理器具と調味料を持参し、役所に戻ると、アリスが笑顔で迎えてくれる。 

「お帰りなさいゲンボクちゃん。受付人数はゼロでしたわ」

 はいよ、これはいつものことだな。


「それじゃ小町は給湯室を内緒で使わせてもらいなさい」

 何故内緒かというと、これは役場のガス燃料という公共の資材を私的に利用することになる。

 つまり厳密に言うと公共物の横領なのだ。

「だから、こそこそとやるんだよ」

「わかったゲンボクちゃん、こそこそやるね」


 そして一時間後。

 確かに小町は給湯室で小さくなって料理をしていましたよ。

 でもね、なんでこしらえるのが、よりによって「カレー」なの?

 もうね、役場内どころか、外までカレーの匂いがただよっちゃってますよ。


 ほら、道行く爺さんたちが吸い寄せられてきたじゃないの。

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