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能力の整理

 次の瞬間、千里のモーションガール効果で、俺は自分でも信じられないスピードで街頭に飛び出した。


 周りの連中がスローモーに見える。

 当然通り魔も、通り魔から逃げようと泣き叫ぶ幼稚園児達の姿も。


状況分析結果リザルトオブアナルシスに基づく計画プランを確認いたします!」

「ちょっと待てアリス! そんな乱暴なのしかないのか?」

 もっと簡単に無力化できないのか?


「園児たちを完璧に守りつつ通り魔の命を奪わず無力化するには最も合理的な方法です」

 確かに腹パンとかうなじに手刀などでは百パーセント無力化できるとは限らないし、下手をすると殺しちまうか。

「わかったぜアリス、行くぞ千里!」

「行っくよー!」


 瞬時に俺は通り魔の背後に回り、後ろから通り魔の包丁を握った右腕を取り、それをそのまま通り魔の右足太ももに深々と突き刺した。


 一瞬何が起こったかわからないような通り魔をすかさず引き倒し、両手首をかかとで踏み砕く。

「ぎゃっ!」

「これで立ち上がることも包丁を握ることもできなくなったはずですわ」

 そうだなアリス。

 ちょっとえげつないが仕方がないよな。

 続けて包丁を取り上げ、人気のない方向に滑らせ、念のため通り魔との距離を確保した。


 それでは身を隠すぞ。

 俺達はその勢いのまま別の路地に姿を隠したんだ。

 

 Releaseリリース Allオール.


 元の姿に戻った俺達は、その後何事もなく道路に戻り、通行人達と一緒に悲鳴をあげた後、自動車学校に戻った。


「それじゃあ残りの授業を受けてくるねー!」


 あんなことがあったにも関わらず、千里は何事もなかったかのように元気よく自動車学校の教室に突入して行った。

 俺とアリスは午前中と同じようにロビーで千里を待つことにする。

「ところでアリス、さっきのは一体何なんだ?」

「あれはですね」


 よい機会なので、アリスと二人で能力の整理を行うことにした。


 まずはそれぞれの属性が存在する。

 俺ことゲンボクは「基本核ベーシックコア」を持つ。

 アリスは「基本外殻ベーシックサーフェス

 小町たち四人は「追加外殻アドバンスドサーフェス


 次にベースアビリティ。

 ベース能力は元々持っている分身を生成する能力で、アビリティレベルがアップすると生成できる分身の幅が広がるという。


 アリスは「人形生成メイクドール

 小町は「台所用品生成メイクキッチンウェア

 エミリアは「清掃用品生成メイククリーニングウェア

 千里は「車両生成メイクモービル

 リザは「回転翼機生成メイクロータークラフト


 次にアビリティレベル1


 俺は「力を求める男(ストロングマン)」肉体強化。

 アリスは「分析する乙女(アナライザーメイデン)」情報解析。

 小町は「熱量の幼女(サーマルロリータ)」熱量操作。

 エミリアは「科学の淑女(ケミカルレディ)」化学物質操作。

 千里は「運動の少女(モーションガール)」運動操作。

 リザはまだ開眼していない。

 光学衛星とリンクできるのはベースアビリティの一部らしい。


 そしてアビリティレベル2

 これは俺だけが今のところ得ている。

 内容は「追加装甲アウターアーマー

 能力はストロングマンで強化された俺の肉体をさらに強化する外殻装甲なのだが、ここでアリスのメイクドールとフュージョンさせることにより、俺の見た目も大幅に変化させることができる。 

 但し俺とアリスが思い浮かべた映像が重なった形で変化する。


 ちなみにアリスを仲立ちにすることにより、小町、エミリア、千里、リザのベースアビリティとのフュージョンも可能だという。

 やかんやたわしや自動車やヘリコプターとフュージョンするというのもピンとこないが。


「今のところはこんな感じですね」

「そうだなアリス、でもさ、天狗はやめない?」

「ええー、お似合いだと思いますよ」

「そうかなあ」

 実は俺たちは通り魔を無力化した後、ちらりとショーウインドウで自分の姿を確認してしまったのだ。


 それはSFちっくというか今風というかご当地ヒーローというか、いわゆる天狗の姿を変身ヒーローものにアレンジしたような姿だった。


 恐らくは俺が思い浮かべたヒーローイメージとアリスが思い浮かべた天狗のイメージが重なったのだろう。 


「どうせなら空を飛べるといいな」

 冗談のつもりで発した俺の戯言たわごとにアリスは真面目に返した。

「あら、恐らくリザのベースアビリティとフュージョンすれば可能ですわ」

 そういえばヘリコプターは空を飛べるのだったな。


 そうしているうちに千里が帰ってきた。

「終わったよー!」

 もうそんな時間になるのか。

 それでは帰るとしよう。



 というわけなんだ。


「テレビにちょっと映っただけだったからねえ、でもかっこよかったよ」

「私は感動したぞ。特に容赦なく通り魔の太腿に包丁を突き立てたのは恥ずかしいが濡れてしまったぞ」

「私もゲンボクちゃんの雄姿を見たかったの」

「そんな大したもんじゃないよ」


 って、なんでもつ焼きが消えているんだ?

「おいアリス、お前食いすぎだ」

 千里があっけにとられているじゃないか!

「脂が美味しゅうございますわ、これはいくらでも食べられますわ」

 マジかよ、もうもつ焼きは終わりかよ。

「こんなこともあろうかと、もう少し残してあるの。ゲンボクちゃん、食べる?」

「食べたいー!」

 そうだな千里、俺ももっと食べたい。


「ところでゲンボクちゃん、皆にあれをお配りしたらいかがですか?」

「おう、そうだったな」

 小町もちょっとこっちにおいで。


 俺が前回街を訪れたときに予約しておいたのは、全員分のタブレット。

 リザにはアリスの指定でアリスと同型の薄型ノートパソコンも用意してある。

 一応ネット通話はインストールしてあるから、何かの時は使うように。

 それから、まとめて密林オーダーをするから、そのときまでにカバーやケースも選んでおくこと。


 早速タブレットの電源を入れて画面とにらめっこをしている小町。

 アリスの隣で使い方を習い始めているエミリア。

 とりあえず子供のように喜びの舞を披露している千里。

 タブレットとノートパソコンと俺の顔に、戸惑ったような表情で順番に目線を送っているリザ。

 うん、いい買い物をした。


 その後はいつもの通りお風呂とエネルギー充填を済ませて皆で寝室へ。

 もつ焼きでお腹がいっぱいになったからだろうか、それとも留守番や試験で気疲れしたのだろうか。

 すぐに周囲から寝息が聞こえてくる。


 そんな中、俺は考えていた。

 実はアリス以外には言っていないが、能力の確認以外にもアリスと検証した件がある。

 それはリザが堕ちた理由。


 リザの記憶によれば、正操縦士が「誰だ!」と叫ぶと同時に、何か小さな物体が真上から弾丸のように飛来し、真上から彼女のメインローターを折ったのだという。

 その後弾丸はリザを貫き、落下していったそうだ。


 だからリザは何者かによる攻撃かもしれないと言っていた。

 その場合、彼女が所属する軍では心当たりがありすぎて誰が攻撃してきたのか絞り切れないということも。


 しかし俺とアリスは知っている。

 小さな物体のことを。

「それ」は恐らく正操縦士を狙っていたのではないか。

 狙いをはずした「それ」は、山中に潜んでいるのではないかと。


「注意していかなきゃな」

 思わず独り言を漏らした俺に、隣から予期せぬ反応があった。

「ええ、ゲンボクちゃん」


 お見通しか。

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