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ショッピングモール再び

 無事資料を集めた俺達はエミリアと小町が待つ車に戻った。


 証明写真を嬉しそうに見せびらかしているアリスと千里に、小町とエミリアはちょっとご立腹。

「知っているかい千里、写真は撮るたびに魂が吸い取られるんだよ。これでお前の寿命はあたし達の中で一番短くなったね」

 悔しいからって、薄笑いを浮かべながら嘘をつくなよエミリア。

「そうなのかい?」

 千里も真に受けて半泣きになってんじゃないよ。


「小町も写真が欲しいの」

「あらあら、困りましたわゲンボクちゃん」

 アリス、お前は困っていないだろ?

 仕方がないなあ、ショッピングモールに着いたら皆でプリクラでも撮るとしよう。

 

 運転免許センターからショッピングモールは目と鼻の先にある。

 さすがは普通のショッピングモール、駐車場も混雑している。

「荷物を千里の本体にも積み込むことを考えますと、目立たないところに駐車した方がいいですね」

「そうだなアリス」

 それでは二階駐車場の入り口から反対方向とか、防火設備の裏とか、一般利用者が嫌いそうなところに停めよう。

 

 時計はジャスト十時。

 今日は自分たちの買い物だけなので焦る必要はない。

 とはいっても、先に千里の本体から荷物を積みたいので、それなりに買い物の順番は決めなければならないな。

 それではこうするとしよう。

 

 まずは引っ越し先のリフォームで必要なものを買うことにする。

「床の面積と窓枠のサイズは測ってきたからね、壁紙も思い切って張り替えちまおうよ。後は皮革用とかガラス用とかの専用洗剤がいくつか必要だね」

 頼りになるぜエミリア。

「そうしたら次はカーペットとカーテンですわね。寝室は畳のままでもよろしいのでしょうか?」

 それらの選択はアリスに任せた。

「荷物部屋のカーペットは?」

 おう、それも選ばなければな小町。

「ボクはどうしよう」

 千里、お前は俺と一緒に荷物運びだ。

 

 まず俺達が訪れたのは「お値段以上」の大型家具量販店。

 あれ、計画といきなり店の順番が違うぞ。

「エミリア、ホームセンターより先にこっちでいいのか?」

「何を取り付けるかによって道具も変わってくるからね」

 さいですか、ホント頼りになります。

 

 こうしてカーペット、カーテン、壁紙は四人が揉めることもなく順調に決定した。

 特にカーペットはそれぞれが自分の「荷物室」に好きなカーペットを敷きましょうというアリスの提案に他の全員が引っかかった。

 ちなみに荷物室は「個室」と呼んではいけないとなぜか四人で取り決めをしているようだ。


 そうして小町、エミリア、千里の三人が三畳のカーペットの前でうなっている間に、アリスがささっと壁紙とリビングダイニングのカーペットを決めてきたんだ。

 さすがだアリス。

 

 これを一旦清算してから車に運ぶ。

 うへえ、カードの使用可能残高がみるみる減っていくぜ。


「それじゃ本体に戻るね」


 ぽんっ


 千里と分身の車が消えると同時に、本体の車が現れた。

 ここから内部シートを跳ね上げたり、たたんだりして荷物スペースを作っていく。

 運転席と助手席にも荷物を置いてしまうとしよう。

 よし、スペースにはまだまだ余裕がある。

「それじゃ千里、戻ってこい」

 

 ぽんっ

 

 それじゃあ次は小町のコンロとガスオーブンと台所用品、エミリアの清掃用具と洗剤を買いに行くとしよう。

 

 これらもホームセンターで順調に購入できた。

 しかもまだまだ余裕があることがわかったので、布団も掛布団、敷布団、それぞれのシーツ、枕の五点セットが圧縮パックになっているものを追加で五組購入した。


 次にダイニングを選んでいく。

 当初はテーブルと椅子にする計画だったのだが、ちょうど秋冬物が出ているとあって、大きな「こたつ」がセールになっていたんだ。

 それは各辺に二人ずつ並べるサイズの正方形のもので、特大布団とカバーも付いている。

 

「ゲンボクちゃん、これにしましょうよ!」

「おこたはうれしいの」

「こたつはうれしいねえ」

「ボクもこれがいい!」

 満場一致だ。

 実は俺もこれがいい。


 ここまでで大きな物の買い物は終わり。

 今日は順調にことが運んでいる。

 時計の針はまだ十一時半だ。

 

「ということで、お昼を早めに済ませてから午後はそれぞれが自由な買い物とします」

「いいのゲンボクちゃん!」

 小遣いは給料から引くけどなアリス。

「お菓子やアイスを買ってもいいの?」

 まあ大丈夫だろう、千里に冷凍庫を冷やしてもらっておけ。

「追加の下着を買ってもいいってことかい?」

 下着だけじゃなくてもいいぞエミリア。

「ボクは何を買おっかな」

 お前はとりあえず俺と一緒に本屋だ千里。

 

 この時点で俺は、この日の午後がえらい騒ぎになるとは予想もしていなかった。 

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