俺の能力
そろそろ寝るかというところで、ちょっとした騒動があった。
それは五人がどの布団を使うのかという問題。
まずは奥の壁に沿って横向きに頭が向かい合うようにふた組の布団が敷かれ、そこからクラゲの足の様に三組の布団が並んで敷かれている。
俺の寝場所は三組並んだ中央で決定なんだそうだ。
「それでは勝負ですわ」
「小町が優勝なの」
「ゲンボクちゃんの寝顔はあたしのモノだよ」
「楽しそうだね!」
などとほざきながら、四人はじゃんけんを開始。
どうやら誰がどの布団を使うのか争奪戦を行っているらしい。
その結果、俺の右にはアリス、左には千里、頭上右には小町、頭上左はエミリアとなった。
「それじゃ寝るぞ、お休み」
今日一日色々とあったからだろうか、すぐに頭上二カ所と左側からは可愛い寝息が聞こえてくる。
寝息が落ち着いたところで、俺は右側に寝返りを打ち、小さく囁いてみた。
「アリス、起きてる?」
「起きていますわゲンボクちゃん」
やっぱり起きていたか。
「なあアリス、さっきお前が囁いた イナフなんとかって何だったの?」
「そんなこと申し上げましたか?」
暗い中でもアリスがいたずらっぽっく微笑んでいるのは伝わってくる。
よし、ちょっといじめてみよう。
「言わないとやらないぞ」
ところがアリスは斜め上の返事を返してきやがった。
「いじめていただけるのでしたらお話ししますわ」
またそういう風に挑発するんだから。
その後アリスを俺の布団に引き込んだのは言うまでもない。
他の三人を起こさないように無事充填を済ませたところで、アリスは何かを思い出していくように続けた。
「私が申し上げたのは、enough energy for release the ability level one ですよね」
「そうだ、確かそんな感じだ」
「これはゲンボクちゃんにレベル1の能力が解放されたということらしいのです」
俺の能力?
アリスの説明によれば、胞子力エネルギーが追加されることによって、宿主とその眷属は徐々に様々な能力を得ることができるそうだ。
実はこの能力こそが、マスターが惑星を支配する原動力となる。
通常は新たな能力を得たときは、宿主に取りついたマスター本人が認識するもの。
ところが俺たちの場合は、マスターの身体は俺の身体、マスターの意志と記憶はアリスに溶け込んでしまったので、俺自身は能力のレベルアップには気づけないらしい。
そうした告知機能はアリスに移ってしまったようだ。
「でも、ゲンボクちゃんに解放された能力がどのようなものなのかまでは、今の私にはわからないのです」
そうアリスは申し訳なさそうに続けた。
どうやら能力を思い浮かべようとしても、まるで記憶にリミッターがかかっているような状態なのだそうだ。
いわゆる「喉まで出かかっている状態」というところだろう。
「恐らくは何かのきっかけが必要なんだろうな」
「はい」
まあいいか、新たな能力に興味はあるが、すぐに必要なものでもない。
「それじゃあ寝るか」
俺はアリスに右腕を枕代わりに貸してやりながら、目を閉じた。
「おやすみなさい、ゲンボクちゃん」
と囁いた温かみを寝物語にしながら。
ふわぁ。
誰かが俺を揺り起こした。
「ゲンボクちゃん、朝ごはんできたの」
お、そうか。ありがとうな小町。
「洗濯も終わったからね。アリスと千里もさっさと起きな」
エミリアも毎朝ありがとな。
って、身動きが取れないぞ。
「もうちょっと寝かせて……」
右の耳元でアリスの甘い声。
「ボクももうちょっとだけ……」
左の耳元で千里のボーイッシュな声。
「ちょっとキミ達、ここに座りなさい」
「ごめんなさい明日からゲンボクちゃんを起こす役割に回りますからお説教はお許しください」
一息で一気に謝ったなアリスは。
「どうしたんだゲンボクちゃん、何を怒っているのさ?」
千里は全く事情が分かってねえな。
「キミ達、小町とエミリアに申し訳ないと思わないの?」
「思います」
アリスは寝過したの二回目だもんな。
「なんで?」
千里は天然だな。
すると二人に小町とエミリアの助け舟が入った。
「アリスと千里は、朝は寝ててもいいの」
「こいつらが起きていても邪魔なだけだからね。その代り、昼間にこき使ってやんな」
「そうか、お前らがいいならいいんだ」
俺も寝ていたから、ちょっと後ろめたい気持ちもあったからさ。
「アリスと千里は昼間がんばろうな」
「はい、ゲンボクちゃん」
「任せてよゲンボクちゃん」
小町が用意した朝食のちゃぶ台には今日もおいしそうな料理が並んでいる。
しかし、朝食もお茶碗と汁椀以外は大皿というのは少々味気ない。
小町もメニューに苦慮しているようだ。
そうだよな、焼き魚や干物は一人一皿で食べたいよな。
やっぱりこのままじゃあ狭いよなあ。
朝食を終え、小町が全員にお茶を食後のお茶を配っているところでこう切り出してみた。
「今日は全員で引っ越しの下見をしよう」
ちゃぶ台が歓声に包まれたのにはちょっと驚いたよ。




