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胞子力エネルギー

 アリスちゃんからの説明は荒唐無稽こうとうむけいだけれど、筋は通っているものだった。


 まず昨日飛来してきた黄金の小さな玉。

 あれは外宇宙から飛来した「地球外知的生命体」だそうだ。

「マザー」から宇宙に振り巻かれた彼らはいわゆる「胞子」であり、その強固な外殻により星間移動を可能としている。


 彼らは宇宙を漂いながら、様々な惑星で彼ら以外の生命体が発する生命エネルギーの探知、分析を繰り返していく。

 そうして彼らの条件に合う生命体、つまり存在する惑星内の食物連鎖で頂点に位置する知的生命体を発見すると、次の活動に入る。


 それは、狙いをつけた知的生命体の身体を乗っ取ること。

 彼らは知的生命体に向けて落下し、生命体の身体を損なうことなくその体内に埋まり込む。

 もっとも効率が良いのは意思を司る器官、人間でいう「脳」に入り込むこと。

 しかしそれ以外の部位に埋まり込んだとしても、体内を移動し、生命体の意識を乗っ取ってしまうのだ。


 それって非常にまずいんじゃね?

「もしかして俺もそのうち、その胞子とやらに身体を乗っ取られるの?」 

 するとアリスちゃんは思い出したかのように言葉を続けた。


「あ、そうでした。マスターからの遺言をご主人様にお伝えしなければなりませんでした」

「マスターって?」

「ご主人様の股間で、ご主人様と一体化した異星の方ですわ」


 いよいよ、よくわからなくなってきた。


「実はマスターは、宿主となる知的生命体の器官で、唯一接触してはいけない部位に埋まり込んでしまったのです」

「それって?」

「生殖器官です」


 彼は知的生命体の身体と意思を乗っ取ると、彼が持つ胞子力エネルギーを宿主の生殖器官に注ぎ、生殖能力を変異させてしまう。

 変異した生殖能力を行使し、彼は宿主が属する生命体よりもさらに能力が高く、彼の意思に従う個体を生み出していく。

 そうして惑星を彼の眷属で埋め尽くして惑星からエネルギーを吸い出し、やがて眷属から「新たなマザー」を生み出すのだ。

 それが彼らのライフサイクルなのだという。


 しかし、生殖器官に埋まってしまうと、彼が発する胞子力エネルギーが彼自身にも跳ね返ってきてしまう。

 さらに彼の意思はこれから生まれ出すであろう新たな命に取り込まれるかのように、例えば人間であれば、精子や卵子に取り込まれ、やがては吸収されてしまうのだ。


「それじゃあ、マスターとやらは俺の中にまだ存在しているのか?」

 オレの疑問にアリスちゃんは流ちょうに答えた。

「マスターの身体組織はご主人様に取り込まれていますわ、一方でマスターの意志と記憶はご主人様が私に最初に注いだ種とともに私に宿りましたの」

「それじゃあマスターはアリスちゃんの中で生きているの?」

「いいえ、意志は既に消え去りました。私に残っているのは今までお話ししたマスターからの遺言と、ご主人様と融合した時に形成された記憶だけです」

 

 ここからが本題。

 なぜ人形であるアリスちゃんが生命を持ったのか。

 本来であれば胞子力エネルギーは生命体の上位種を生み出すべく生殖機能に働き掛ける。

 ところが今回は俺の精子に触れたマスター自身にも胞子力エネルギーが跳ね返ってしまったことにより、その効果が変質してしまったのだ。


 それは無生物から俺の眷属となる「付喪つくも」を生み出す力となった。


 具体的には、俺が放った胞子力エネルギーが無生物の「穴」を通じて、それらに潜在している「付喪」と反応し、次元変換を発生させる。

 この際に付喪は俺がイメージした姿を具現化し、その姿を固定する。


 ちなみに付喪が身にまとう衣装も俺のイメージによって作り出される。

 アリスちゃんがレディーススーツを着ていたのは、恐らく俺がエネルギーを彼女に放った際の妄想が「オフィスプレイ」だったからだと思われる。


 一方で本来の姿は「仮世」と呼ばれる異空間に保存されるのだという。

「ということは、アリスちゃんの本体も保存されているのかな」

「はいご主人様、こんな感じですわ」


 ぽてっ


 うわあ、アリスちゃんが元の大人のお人形さんに戻ってしまった。

 衣類はいつものメイド服だよ。

 って、元に戻す方法をアリスちゃんから聞いてねえよ!


「どうすんだよアリスちゃーん!」

「はい、お呼びですかご主人様?」


 人形と入れ替わるかのように姿を現すと、やれやれとばかりに立ち上がるスーツ姿のアリスちゃん。

 よかった、戻ってきてくれて。


 アリスちゃんの説明は理解はできないが納得はできるものだった。

 それよりも、この燃え上がる劣情に身を委ね、今日はこのままアリスちゃんと本日の一回戦目に突入してしまいたい。


「私はよろしいですけれど、お時間は大丈夫ですか?」

「ん? うわ、もうこんな時間か!」

 やばい、間もなく仕事の時間だ。


「それじゃ俺は仕事に行ってくるから、アリスちゃんは留守番をしていてね」

 するとアリスちゃんは露骨に不満そうな顔になる。

「いやです、それだとお昼ご飯を食べられなくて、私は飢え死にしてしまいます」

「じゃあどうするの?」

「一緒に行きますご主人様」

 

 ということで、本日はアリスちゃん帯同で出勤することになったのだ。

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