第3話
いつも通り学校まで歩き、いつも通り教室の前に立つ。
中に入ると既に教室にいた噂好きのグループがこちらを見る。
それを無視して自分の席に座る。
視線が自分に向けられてるものだということが痛いほどわかる。
意を決したようにいわゆる一軍のグループが近づいてきた。
「ねぇ、昨日の百田君の件についてなんだけど。」
やっぱりその話か、と真紀は唾をのみこんだ。
大丈夫……。大丈夫……。
自分にそう言い聞かせた。
「何?」
素っ気なく返すとその女子は目を見開いた。
怒りのため息がひとつこぼれる。
「何?じゃないでしょ?あなた達が何かしたんでしょ?じゃないと彩愛があんなふうになるわけないじゃない!!」
大丈夫……。大丈夫……。
「もしかして隣のクラスのあれも関係してるんでしょ?」
周りの人たちもそうだそうだとはやし立てる。
その合唱はどんどん威力を増していく。
「人殺し」
「犯罪者」
「学校に来るな」
「帰れ帰れ」
何故友達二人を失っているのにこんなに責められるのか。
私は何も悪くないはず。
なのになんでわかってくれないの……?
その時、教室の扉が乱暴に開かれた。
「あなた達なにやってるの!織田さん!ちょっと来て!」
もう何度呼び出しを食らったことか。
2日連続で職員室に行く。
そこまでのドキドキは慣れない。
けど、嫌な予感しかしない。
もう吐き気がする。
批判罵倒に見送られながら担任に連れて行かれた。
彩愛……。嘘だよね……。
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「彩愛さんなんだけど……。」
やっぱり……。
昨日まであんなに元気だったじゃん……。
思わず両手で顔を覆ってしまった。
「今、病院にいるそうよ……。」
病院……?
ていうことは……。
「まだ生きてるんですか!?」
両手をゆっくり離し、思わず大声で叫んでしまった。
静まり返った職員室に響きわたり、先生たちの視線が一気に突き刺さる。
担任は口に指を置いてシーッっと示す。
とっさに右手を口元に近づけあたりを見回す。
「生きてるわよ……。ただ……目を覚まさ
「どこの病院ですか!?」
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先生はすぐに病院の場所の地図を印刷してくれた。
そのメモを受け取ると職員室を飛び出しって行った。
昨日と同じ、彩愛を追いかけるために。
病院についた。
そこは彩愛の家から徒歩5分くらいのとても近い場所だった。
屋上に上ると彩愛の家が見えるだろう。
車が数台止まっている程度で全然混んでいないであろう、玄関の扉に手をかけた。
そこでしまったと思う。
彩愛の部屋を聞いていなかった。
「どうされましたか?」
どうしようか焦っているとその声を見透かされたように後ろから声をかけられた。
ビクッとして振り返ると、パンパンに膨らんだごみ袋を抱えたこの病院の関係者らしき人がきょとんと立っていた。
「この病院に”堅田彩愛”さんっていますか?」
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「彩愛……、どうして……。」
すやすやとベッドで横たわっていた。
さっきまで苦しそうにしていたそうだが、この様子を見るとなんとか大丈夫なのだろう。
頬をそっとなでると、呼吸に合わせて体が上下しているのが伝わる。
死んでいない、と安心してしまってトイレに行きたくなってしまう。
席を立ち上がると、袖に何かが引っ掛かった。
「待って。」
袖を見ると、スラッと綺麗な手が弱々しく掴んでいた。
とっさに振り返ってその手を両手で掴んだ。
「彩愛!大丈夫なの!?」
まあね、と頷いた。
「あとで話があるから。」
そういうと彩愛は手を放した。
何の話だろうか、儀式のことが不安になってしまったのだろうか。
「大丈夫だから。」
私はそう言って部屋の扉を開けた。
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向かう最中、もう一度最初から考えてみようと思った。
とあるサイトで香澄が見つけた「儀式」
絶対にやってはいけない。
ソースは兄ch。
『儀式』らしいが、目的は分かっていない。
深夜1時に洗面所の前に立つ。
この時洗面所の電気はつけて、周りは暗くしておく。
そして鏡で1分間自分の顔を見つめる。
それから見つめたまま洗面所の電気を消す。
暗闇に目が慣れてきて鏡に写ったのが自分じゃない誰かで、手を伸ばしてきたら成功。
その手を掴むと願いが叶うらしい。
この儀式が終わって気が付くと朝になっていてなぜか寝室で目を覚ますらしい。
夢のように思えるが、ハッキリと覚えている。
ちなみに自分の顔が写るか、何も起こらなければ失敗。
タブーが1つだけあって、途中で辞めてしまうこと。
鏡から目をそらしても辞めたとみなされる。
誰が写っても目をそらしたりしたらいけない。
これを3人でやろうという話になって、実際に香澄が死んでしまった。
その次の日、彩愛が見たという百田君が怪我をしてしまった。
そして彩愛が病院に……。
あの儀式をやってしまったがために起こってしまったことだ。
そもそも誰があんな儀式を……?
用を済ませ、手を洗い、ハンカチで拭きながら後にしようとした時だった。
『あなたはわたし、わたしはあなた。』
突拍子もなく、あの時の声が響く。
「誰!?」
思わず叫び、あたりを見回す。
誰も、いない。
それでも絶えず声は響く。
『あなたはわたし、わたしはあなた。』
何度も何度も響く。
その声はどこかで聞いたことがあるような……。
「何が目的なの!?」
その声は全くそれに聞こえていない。
被せてくるように何度も、何度も、何度も。
吐き気すらしてくる。
『あなたはわたし、わたしはあなた。』
もう、ダ、メだ。
い、しきが。
こ、こで。
『あなたはわたし、わたしはあなた。』
その時、誰かが手を差し伸べながら囁いた。
「ば……あ……たんだ……。」
所々聞こえ無かったが、よく知ってるその人物。
な、んで。
そこで記憶は無くなっていた。
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気が付くと、屋上にいた。
もう鮮やかなオレンジに染まっており、冷たい風が髪をなでる。
ひんやりとした地面から起き上がり、あたりを見回すと。
彩愛が倒れていた。
「彩愛……?彩愛!?」
彩愛に駆け寄り、体を少し揺らすと目をうっすらと開けた。
ゴホゴホと咳をしている。
それでも頑張って口をパクパクさせて何かを伝えたそうだった。
口に耳を近づけると吐息がそっと囁いた。
「全部……終わっちゃう……のかな……?」
肩を組んで支えながら屋上の扉の方を向く。
ゆっくりと立ち上がり、ソロソロと歩き出す。
「そんなことはない、まだ大丈夫だから!早く!ナースを
そこでまた”悪魔のささやき”が脳内に響く。
『あなたはわたし、わたしはあなた。』
頭痛がどんどん勢いを増していく。
今にも倒れそうだ。
彩愛だけは、彩愛だけでも。
とっさにゆっくりしゃがんで彩愛を寝かせた。
『あなたはわたし、わたしはあなた。』
「やめて!やめて!やめて!」
その声を振り払うように頭を振る。
振っても振っても払えず、非常にもどかしい。
『あなたはわたし、わたしはあなた。』
もう何も考えられずに耳を両手で塞いだ。
その時にナースが来たかもしれない。
彩愛が手を重ねていてくれたかもしれない。
何か声をかけてくれたかもしれない。
それでももう何も考えられない。
『あなたはわたし、わたしはあなた。』
誰かが肩にポンと触れた。
それが引き金。
もう引いてしまったなら、止まることはない。
『落ちろ。』
両手がガクッと落ちる。
まるで死んでいるように。
『落ちろ。』
大丈夫、と誰かが言う。
その声は無機質に解けた。
『落ちろ。』
命じてるのは誰?
そんなことはどうでもいい。
『落ちろ。』
ゆっくりと立ち上がる。
そして町並みを眺める。
『落ちろ。』
少しずつ近づく。
そして手を掛ける。
『落ちろ。』
ゆっくりとよじ登る。
誰かが止めようとする。
『落ちろ。』
それを振り払う。
そしてまた登り始める。
『落ちろ。』
そして立ち上がる。
強い風が吹き付ける。
『落ちろ。』
この声すら心地よく感じる。
そして静かに向こう側に立つ。
『落ちろ。』
一呼吸置く。
そしてゆっくり前に重心を掛ける。
『落ちろ。』
ああ、これで。
その時、後ろから抱きしめられた。
前に組まれた手は震えていた。
「私を置いていくの!?」
その声で目が覚めた。
この声は……。
「彩愛……。」
その前で組まれた手に手を重ねる。
そしてゆっくり離して振り返る。
自然と彩愛の手が解かれる。
「彩愛ぇ……。」
思わず泣き出してしまう。
彩愛ももらい泣きをしてしまう。
「真紀……早くこっちに
そう言ったとき。
思いっきり彩愛を突き飛ばした。
2メートルくらい遠くに倒れる。
そして何が起きたのかまだ理解していないようだった。
「あのさ、もう疲れた。」
冷めた声で言う。
感情なんて、ない。
「真紀……?」
なんだよその表情。
あー、笑えてくる。
「儀式のせいだよね……?」
驚きで涙も飛んでしまっていたようだが、また目を潤わせる。
さすがにそれ以上そんな顔されると……。
「っぷ……っふっふ……あははは、やめてよ、笑わせないでよ。」
「真紀……?」
じゃあね、手を振る。
彩愛はとっさに近づく。
残念ながら手は届かない。
柵を乗り出している彩愛を止める観衆達がどんどん離れていく。
「ほんと最後まで笑わせないでよ。」
最中、彩愛の家が見えた。
「それにしても残念だったな……。
お前を殺せなくて。
じゃあね。」
こんばんは、ましゅ麻呂boyです。
この儀式が思い浮かんだのは、コンタクトレンズを外しているとき、
鏡に顔を近づけているとき、このまま電気を消したらどうなるんだろう、と思ったのがきっかけです。
実際にやってみると、正直本当に怖いです。
徐々に浮かんでくる不気味な顔。この顔は誰の顔だ……!?
はい。自分の顔です。
その顔が他の誰かの顔だったらなおさら怖いですね^^;
そして、物語を書き進めるうちに大きな壁がひとつ。
登場人物達の名前です。
それぞれの名前に意味を込めたい、という意味で”花言葉”も含め考えました。
彩愛はあやめの花言葉、希望という意味らしいです。
元気っ子というイメージでした。
かすみはカスミソウの花言葉、親切や幸福という意味があります。
全然幸福な最期を迎えられませんでしたが。
そして真紀は……?
槇の花言葉、色あせぬ恋などがあるそうですが……。
それともまた違う……?
はい、違います。
もっとちゃんとした意味が込められています。
その意味は……。
考えてみてくださいっ。
3話はとても楽しくかけました。
こういう話大好きなんです。
みなさんも楽しんでいただけたら嬉しいです。
ここまで、拙い文章力でしたが、閲覧ありがとうございました。
次回作もお願いいたします。