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神の島

むかしむかし。

ある島に山のカミと海のカミがいました。

二人はとても仲が良くそれを見て山と海のものたちも仲良く生活していました。

しかしどんな原因があったのか…二人のカミは喧嘩をしてしまいました。それはそれは長い間。山のものたち海とものたちもいくつもの世代を重ねていくうちにカミ様達をみて互いを傷つけあうようになりました。

そしてそれは最悪の結果となってしまいました。

島に嵐がぶつかった日。経験したことがないほどの激しい嵐は止むことを知らないかのように島を駆け回り、海をかき混ぜていきました。

赤々と実った果実はすべて地に落ち、透きとおるような海は土砂で茶色く濁っていきました。

突風で海に投げ出された子をたすけるものは誰もいません。

陸に打ち上げられたものを誰かが見つけてもただみているだけでした。

そんな状況になってカミ様達はようやく危機感を抱きました。

動物に、魚に互いを助けるように言いましたがついさっきまで敵だったものをかんたんに認めることは出来ずただ混乱を大きくするばかりでした。

嵐が去ったあとにはめくれ上がった大地や倒れた木々、濁った海に浮いた骸とわずかな生き物だけでした。

それみたカミ様達は自分達のあやまちを後悔し、森に海にと深く深く沈んでいきました。


「海道 瞬です。ヨロシク」

ぼくの周りで少し小さい拍手と歓喜の声が

かかる。ぼくは海道 瞬、親の仕事の関係で

お婆ちゃんが住んでいる家に預けられ、

ここみと神小学校に転校してきた。

クラスには様々な子がいた。背の高い子、

小さい子。優雅な服をきている子や

ヨレヨレのシャツをきている子。

ここは小さな島の唯一の小学校で生徒数も少ない。だから一二年、三四年、五六年が

同じ教室で勉強している。

クラスメイトはたったの8人だ。

「みんないい子だからすぐに仲良くなれるわよ。さあ皆、瞬君がきてくれたお祝いに

歓迎会をしましょー」

わーと数人の男の子がはしゃぐ。


先生をいれて10人でやってきたのは学校の裏の森だった。みんなそれぞれ遊び出す。

真っ先にヨレヨレのシャツをきた女の子が

見事な動きで木に登り、それを見て

高そうな服をきた子を中心とした3人の

女の子達は嫌そうな顔をした後木陰に座っておしゃべりを始めた。男の子達は鬼ごっこを始めている。

そんな中、一人の男の子が声をかけてきた。

「俺は御堂 たける、お前と同じ5年生だ。

島の外ってどうなんだ?俺は出たことない

から教えてくれよ。」

「うん、いいよ。そのかわり

この島のことを教えてね」

それからしばらくたける君とはなした。

「そういえばあのヨレヨレのシャツきた子

すごいね、さっきすごく速く

木に登ってたじゃない。」

ぼくがあの子の話をするとたける君は

少し嫌そうな顔をした。

「あの獣女のことか。あいつにはかかわん

ないほうがいいぞ。獣臭くなるからな」

そこまで言うと立ち上がりぼくの手を

引いた。

「それより遊ぼうぜ。おーいれおんー俺たちも

いれてくれー」

そう言って鬼ごっこをしている男の子のグループへとかけていった。

先生はどうしたかって?

そこでお昼寝してるよ。


下校時刻になるとぼくは急いでばあちゃん

家に向かった。たける君と川に遊びに行く

約束をしたからだ。


一番に教室を出たと思ったのに、目の前にあの木登りの女の子がいた。

すぐにかどを曲がっていって見えなくなったが、なぜだかわからないが彼女のことがぼくはすごく気になっていた。


ばあちゃん家へ帰ると行き先だけ伝えて待ち合わせの学校の校門へもどっていった。


「そっち行ったぞ〜」

そして川に行ったぼく達は魚をとっていた。

釣竿を使わずに虫取り網と体でとっている。今までしたことなかったのでとても楽しかった。

しばらくしてふと森の方を見ると、木の上に誰かがいた。とおくてよくわからなかったので近づいてみるとほのなにかは木から木へ飛びうって逃げて行った。

「猿か?」

当然ぼくは脇目も振らず追いかけた。

その何かは木の上ににいるのだから当然ぼくは上を見て走っていた。それがいけなかったんだ。気がついたときにはすでにぼくの体は足を滑らせころがりおちていった。

「うわああああああ」


「いったー」

ぼくが転がり落ちた先は大きな広場だった。

転がってきた急な坂を見上げると‥目があった。あの木登りの娘だ。

「なにしてるの」

坂の上のさらに木の上に立っているあのこが声をかけてくる。

「おっこちたんだ。助けてくれないか」

そう僕が叫ぶとこくりと彼女はうなづくいて立っている木から器用に飛び降りて直ぐにぼくの前まできた。

「えっ?」

彼女はぼくの元に来ると、いきなりポケットから出したはんかちをやぶり手当をしてくれた。じぶんでもきづいていなかったが足を擦りむいていたらしい。手当の間、彼女は無言だった。

「あ、ありがとう」

「ん、」

彼女の手際はよくあっというまにおわった。その後はぼくを背負ってあるきだした。

「‥」

「‥」

「え、えーっとなんで森にいたの」

「いたかったから」

「う、うん。ここにはよくくるの?」

「ん、」

「へー。じゃあこの広場がなんなのか知ってる?」

「ゴミを捨てる場所」

そうこたえる彼女の背中はさっきより小さく見えた。

どうしたらいいから分からないなながい沈黙の後。

「ここは前まで森の一部だったの」

彼女はぽつりとことばをこぼした。

彼女の目は何かを必死でつなぎとめようとしているようだ。

「よそもんのあんたには分からないなだろうけど、この島は壊れてきている。この穴ができてから。海の外からきた獣がこの島を食いつぶそうとしている。一部のニンゲンが楽になるために多くの生命が苦しんでいる」

彼女の言葉は一つ一つに重さをかんじた。

分からなかった。彼女はなにをいいたいのか。ただ、彼女は森が大好きで、ここが無くなるのがゆるせないらしい、ということは分かった。

「きみは‥」

「ちさと」

「‥千里はここが変わるのが嫌なの?島の人たちは賛成したからここも変わったんだよね」

「違う、一部のニンゲンが賛成し、残りは無関心なだけ。それに、ここはニンゲンのためだけにある場所じゃない。目をつぶれ」

ぼくはあわてて言われたおりめをつぶる。

「こ、これでいいの?」

「ん、それでいい」

そのまま僕らは無言のまま歩いていた。聞こえてくるのは千里の足音だけ。

「あ。」

いや、聞こえてくる。鳥達の鳴き声、木の葉が風にゆられこすれる音虫達の羽音。いろんな音が耳に吸い込まれて行く。そのことに気づくと彼女の背中にさっきまで感じなかったおもりがあるようなきがした。

彼女、千里は守ろうとしているんだ。この森を、動物を、虫を。もし彼女がここからいなくなってしまっってしまったら誰もこの森をを守れない。そうまで思ってしまった。

「大丈夫、きみは一人じゃない」

自然と出てきた言葉は自分でもおどろくぐらいおもい響を持っていた。彼女の背中からはこの言葉がとどいたかわからなかつたがそれでもいいとおもった。

「御土神島はみんなのもの」

そうつぶやいた彼女の声は誰にもとどかなかった。

しばらくすると川にでた。直ぐにたける君がみつかりいなくなったことをあやまった。先生を呼んで探してくれたらしく、先生達に怒られたあと直ぐに車でばあちゃんちに送ってもらった。

千里は気がついた時にはすでにいなくなっていた。


「なあ、ばあちゃん。ばあちゃんはこの島にゴミ処理施設ができる時反対しなかったの?」

何と無く気になって俺はいつもより遅い夕飯の後ばあちゃんに聞いて見た、ばあちゃんは少し驚いたような顔をしたあと、皿洗いをしていた手を止めてぼくの前にすわった。

「あの島のまん中にできたひろばのこことかえ?あれだったら私は反対はせんかったよ」

なぜだかぼくはばあちゃんのこの言葉を聞いた時、なんだかもやもやしたきもちになった。さらにばあちゃんは続ける。

「わたしはねえ、あの広場は島の穴みたいで好かんけどねえ。ただ、あのあながなくてはこの島は人のいない島になっていたかもしれん」

「えっ。なんで‥」

ばあちゃん話ではこの島には一応小学校はあるが中学校以上の学校はない。なので島の子供は必ず最低3年は島の外の学校に通う。それが面倒で家族ごと島の外に出て行く家もある。まあその3年の間に島の外を知ってしまい、島の外へのあこがれがおおきくなりみんな大人になると島の外へでて夢を追いかけ、戻ってこないらしい。ゴミ処理施設ができたおかげで島の外から定期的に人やものが回ってくるようになり、なんとか人が出てくのを一部抑えているそうだ。人か動物か、結局どちらか選ばなければいけないのだろうか。ぼくの悩みが一つ増えてしまった。


次の日、川でみんなに迷惑をかけた罰としてばあちゃんにお使いを頼まれた。別に罰じゃなくってもいくのになー。


ばあちゃんに渡された地図の通り、ぼくは学校よりも先にあるお店がたくさんある商業くにきていた。

そこには‥

「ようこそ、竜野さま、相坂さま、水戸神島へ。心よりお待ちしておりましたわ」

同じ教室のあのキラキラした服をきたこがいた。

学校では見たことのない満面の子供らしい笑みを黒いスーツの大人にみせていた。

うん、正直かわいいと思った。学校でもいつものむすっとした顔よりあの顔でいればいいのにな。

しばらくぼーっとみていると黒いスーツの大人のひとりがぼくの方をみて、それからキラキラのこがぼくの方へ向かってきた、しかも‥

「海道くーん」

と、てをふってだ。

「あっ、え、え?」

ぼくが動揺しているとキラキラのこはぼくの手をとってかけだした。

大人達が見えなくなるところまで来ると直ぐに手を話していつものかおにもどってこういった。

「なんであなたがここにいますの。しかも私のことをじっと見つめて。あれじゃあ友達とおもわれてとうぜんですわ。おかげで遊んできなさいとか言われましたのよ。わたくしは会議を見たかったのにですわよ」

ひどいいわれようだ。

「な、じゃあ関係ないといえばいいじゃないか」

まあ当然ぼくも言い返す

「できるわけないじゃない。小学生が、友達に見える子を見て知らないなぬて言ったら、気まずい雰囲気になってしまいますのよ。それくらいなら会議を見るのを我慢して皆様方に小学生の2人が仲睦まじくあそんでいる姿を見せて会議前の緊張感を少しでも楽にして差し上げた方がわたくしの目標のためにも有意義ですわ」

そこまで言い切るとキラキラのこはフンっとはなをならした。にしてもよくしゃべるなー千里とはおおちがいだ。「えっと、目標って?」

なんとなく聞いたことだがキラキラのこの目が聞いた。とたんにキラリとひかって、あっこれは失敗したなと僕は思った。

「そんなものこの島をより良い場所にするためですわ。さっきの殿方達は島の外の企業の方ですわ。もしこの島があの方々の目に止まって支社をおいていただけたならこの島はお金も人もふえて島の公共施設も充実してより良い生活になること間違いないですわ。さらにこの島にはなににも使われてない森、つまり土地がありますもの‥」

なんか長くなりそうだなーと思いぼくは

「あっそうなんだ、頑張ってね。じゃ」


逃げた。だってそうじゃないか、全く理解できなかったよ。ただ‥

「えっと、ここ、どこだろう?」

キラキラのこにつれられてはしったあと逃げたときも適当ににげたからここがどこか全くわからない。近くに人の影もない。

歩いた、歩いた。でもここがどこか、分からない。

「うっ、えぐっ」

やばい、ここ、どこ、ばあちゃん、どこぉ。

下を向いているとぼくのほおをそっとなにかがなでた。

「なにないていますの。男の子でしょ」

顔をあげるとあのキラキラのこがいた。

「うっ、うあぁぁ」

ないたよ。しかたないじゃん全く知らない土地で知っている子にあえたんだから。

ぼくはその後近くのベンチにすわらされた。

「おちつきましたの?」

キラキラのこが心配そうなこえでたずねる。

「うん、ごめんね急に泣き出して」

「いいんですのよ、下級生の面倒を見るのも上級生の仕事のひとつですわ」

思っていたよりももしかいたらキラキラの子はいい人かもしれない。

「うん、ありがとう。えっと」

「えいか、三宝 永川ですわ」

「ありがとう永川」

いきなり呼び捨てって、しかもしたのなまえを!?って聞こえた気がするけど気にしない。

「で、どうしたんですの。急に泣き出して。大方お使いを頼まれて道に迷ったってとこでしょうけど」

うっすごい。

「な、なんでわかったの?」

やっばりと、永川がつぶやいたあと

「まずそのカバン、花柄ですわね。明らかにあなたのようなおとこのこがこのんで使うようなものでは、ありませんわね。それにその手に持っているくしゃくしゃな紙、おそらく島の地図でしょう。しかもあなたは最近この島に来たばかり。迷子になる確率はかなり高いとおもっただけですわよ」

すごい、少し見ただけでここまでわかるとは。

「まあそんなことどうでもいいですわね。それより速くお使いををすませてしまいましょう」

「えっ、手伝ってくれるの?」

「それが上級生の役目ですわよ」

そう永川は背を向けて言った。

そのあとは永川とまちを回った。ばあちゃんがぼくをお使いに出したことはみんな知っているらしく行った店でみんな優しく接してくれた。永川がいきなり値引きして、と言ったのにはおどろいたけどね。お店の人と話している永川はとてもきらきらしていた。

「今日はありがとうね」

ぼくがお礼をいうと永川はぼくの前に出てこういった。

「ごめんなさい」

頭を下げた永川をみてぼくはなんのことか全くわからなかった。

「今日、あなたが迷子になったのは、わたくしのせいですわね。わたくしがこの島に慣れていないあなたを連れ回した、から‥」

永川は店を回っている間、ずっとこんなことを考えていたいたのだろうか。

「ううん、永川はなにも悪くないよ。それよりも今日一緒にいてくれてありがとう、楽しかったよ」

そう、たのしかったそれで十分。

「ありがとう」

永川の口から出た言葉は、とてもあたたたかった。

家に帰るとばあちゃんのちゃんが褒めてくれた。そして夕食後。


「ねえ、ばあちゃん。この島の森にはたくさんの動物がいるよね」

「そうねぇ、いるわねぇ」

「じゃあ、あの森がなくなったらどうなるの?」

ずっと気になっていたことだ。

「そりゃぁ捉えられて動物園に行くか」

はぁっとばあちゃんはため息ひとつついた。

「殺されるだけだよ」

「そんなぁ!!」

ぼくは、たちあがった。

「じゃあなんで、なんで森を壊そうと大人たちはしているの!!」

そういうとばあちゃんは驚いた顔をした。

「どこで、そんな話を聞いたかは知らんがなぁ、それはこの島から人の存在をまもるためだぇ。人を呼び、人をこの島に引きとめるためだぇ昨日も話したけど、この島に住めなくなっても嫌なのだからねぇ」

「そんな‥人と動物、どちらかを選ばなくちゃいけないの?」

そう僕が必死に問いかけるとばあちゃんは少し上を見上げこう言った。

「なんだか懐かしい話を思い出したよ。この島にはねぇ、2つの社があるんだよ。森にひとつ、海にひとつねぇ。その社はそれぞれ意味があるんだよ。その意味がわかれば、その答えがあるかもねぇ。ただ、何事も両立はむつかしいんだよ。どちらも守りたいんだったら人にとやかくいう前に自分で動きな」

最後の一言を言った時のばあちゃんは、少し怖かった。

「たぶんあんたは、主義主張の両極端の話を聞いて、どちらも納得してしまったから混乱しているんだねぇ。自分考え、答えをみつけるんだね。まあわたしも興味はあるねえそのお前に森と町の話をした奴のが話してくれたこと、ばあちゃんにもはなしてくれないかい」

そのあとぼくは、千里と永川のことをはなした。ばあちゃんは今度その二人を家に連れて来てくれたら面白い話をしよう、と言っていた。


それから数週間が過ぎた。

ぼくも島での生活に慣れて来た頃、事件は起こった。

「ふざっけるなぁぁ!!!!」

ぼくがいつも通り学校に来ると、そこには人だまりができていてなかから千里の叫び声が聞こえてくる。

苦労して中心へいくとそこでは千里が永川に掴みかかっていた。永川は一切反抗せずにただ千里を見つめ口を動かしていた。

「何度言っても事実は変わりませんわ。あなたの大事な森はわたくしたち島の人々にとっても重要な資源なのですのよ。希望なのですのよ。貴女の身勝手なわがままなんて通るはずがありませんわ。森は切り開かれ、新たに希望の城が建つのは決定ですわ!当然あのぼろっちい社も取り壊しですわっ!」

その後駆けつけた先生によって千里は永川から引きはがされていたその様子を永川冷めためで見下していた。‥やめてくれ。千里、永川、二人ともそんな目をしないでくれ。ぼくの頭の中はぐちゃぐちゃだった。

その後騒ぎを聞きつけた先生達によって千里は取り押さえられ沈静化した。

その後二人は言えに帰された。


そのことをばあちゃんに話すとばあちゃんは

「で?」

「で?」

「で?、あんたはどうしたいんだい。あんたは何をしたいんだい」

「ぼくは‥」

何をしたいか。千里の木登りをしている時の生き生きとした顔。永川が町の人たちと話している時の笑顔。千里の森のことを話す時の使命を感じさせる雰囲気。永川の町の未来を語る希望に満ちた雰囲気。それのどちらが正しいかなんてわからない。いや、どちらも正しいのだろう。ただうまく交わらないだけ‥なんだろう、何をしたいんだろうか。二人のことを思い出すとふと浮かぶ、千里に手当してもらった時のこと。永川に涙をふいてさてもらったときのこと。うん、決まった。

「ぼくは二人の笑顔を見たい」

そう、難しいことはどうだっていい。ただ、ぼく自身のために二人には笑顔でいて欲しい。

「そうかぇ、じゃあ二人に何をして欲しいかきくとえいさぁ」


〜side千里〜

私は体に力が入らなかった。永川のばかに森が壊されると聞いてからずっと学校を休んでいる。

家族は何も言わなかった。

そんなある日、一人の男の子が私に会いに来た。

えっと、うーんと、、、あっ

「あっ、あんときの鈍臭い奴」

たしか坂を転げ落ちたところを偶然そばにいた私が見つけたんだったな。

「そ、そうだけどぉ。まあいいや千里にずっと聞きたいことがあったんだ。ずっと学校にこないからこっちから来ちゃったよ」

そういう彼は少し笑った。

「それよりも、千里はどうしたいの?」

えっ、こいつはないをいいたいの?

「あっ、えーっと森のことなんだけど。千里は森を守りたいんだよね森の木を一本でも切られるのがいやなの?」

こいつは、私の一番話したくないことをへいぜんときいてくる。違う、私はっ‥

「私はただ、森に住んているものたちが追い出されるのが許せないの!私だってばかじゃない、ばか永川の言っていることがいいことだってわかる!私もこの島が、大好きだからっ!!少しぐらい森が減っても構わない、でもそこに住むものたちを追い出すのは絶対に許さない!!!!」

そう、私の友達は傷つけさせない。それが私の願い。

そこまでいうと彼はこういった。

「じゃあ戦おう。ここで閉じこもっても何も変わらない。僕たちにできることをしよう」

私はその言葉の意味を理解し、無理だと思った。

「そんなの絶対無理よ、第一、どうするのよ!私たちはまだ子供なの、」

「それは、ぼくには分からない」

じゃあ‥どうしろって。

「わからないなら分かる人に聞けばいい。日曜日、海のそばの林に来て」

そう告げると彼は去って行った。


〜side永川〜

「おはよう永川さん。昨日は大変だったねー」

獣女は凶暴で嫌だなーっと

朝、学校にいくなり

クラスの女の子に声をかけられた。誰もが千里の悪口をいう。

そうですわねと、適当に相槌をうって会話は終わっていた。彼女達はなぜアホ千里の悪口を平然と言えるのかしら。ずっとあの子とあらそっていたからわかります。あの子は、あほなりにただ純粋にこの島のことを想っている。ただ自分のことしか考えられないあなたたちよりもずっとましだわ。


今日は千里は学校を休んだ。千里が学校を休むなんてはじめてのことだ。胸の奥がチクリと痛む。

昼休みになり友達とお弁当を食べようとしたわたくしの元に海道君がやってきましたわ。昨日の私をせめるためかしら。

「永川、話があるきてくれないか?」

「ええ、よろこんで」

そう、わたくしは自分自身を責めてくれる人が今は欲しい。

友達との昼食のお誘いを断ると海道君と学校の裏の森まで来た。

「永川は、何がしたい」

「わたくしは、島の人々の笑顔が見たいだけですわ」

そうそれだけ、言葉に出したのはいついらいだろうか?

「別に森を切りたいわけじゃないんだな」

「当たり前ですわ、ただそれが一番良い方法だと思ったから‥」

本当にそうだろうか?ただ父親に言われたことを言っているだけでは?

「本当にそうか?本当にそれが一番いい方法か?」

わたくしの不安を的確についてくる。

「そ、それは」

「千里、今日も学校休んだよな、あいつは、あいつも島のこと一生懸命に考えているんだ、どうしてわからな‥」

「分からないわけないでしょう!!!!」

思わず叫ぶ

「わたくしはあのあほ千里とずっと言い争ってきたのですわよ。最近知り合ったあなたとはちがいますわっ!!」

そう、わたくしは‥

「だったら、永川の計画のなかに人間だけでなく、森の動物達もいれてくれないか?」

えっ、今はなんと?

「永川頭いいんだろ、なんとか森の動物達も守れないか?」

それは‥今まで好きで読んでいた島の資料を思い出す。ただ森のどこを切り開けば一番良いか考えるだけの資料を。

みんなを、千里も笑顔にするために。

「動物も、ね、少し考えさせてくださいませ」

分かった。と彼は答える。そこで昼休み終了のチャイムがなる。

お昼、食べ損ねましたわね。


side END


約束の日曜日、ぼくは海のそばの椿の林にきていた。

「遅かったですわね」

すでに先客がいたようだ。

「ごめん。それ、可愛い帽子だね」

「まあいいですわ待ち合わせの正午にはまだありますしね。ではさっそくわたくしの考えた‥」

「まって」

今言われてしまったら二度手間になる。

何かを察した永川はそれ以上何も言わなかった。おそらくぼくの考えなどお見通しなのだろう。

しばらくすると強い風が吹いた。

「あっ、」

永川の帽子が風に飛ばされる。

「木にひっかかっちゃったね」

「そんなぁ、おきにいりのぼうしなのに」

帽子が引っかかったきはきはたかく、ぼくには登れそうにない。

「私が取る」

急に近くから声がかかる。そしてその声の主は気に登りはじめた。当然

「「千里!!」」

そう千里だ。

すぐに登り切ると千里は帽子を手にとった。さすが千里だ。

しかし、ここで不幸なことが起こった。ここは海のそばの林、森と違って風をさえぎるものはなにもない。しかも今の千里は片手に帽子を持っていて、時刻は正午、風向きが変わる時間だ。

「あっ」

気づいた時にはすでに足を滑らせていた。当然真下はぼく達がいるわけで‥ドーン


「うーいたた、」

「‥痛い」

「誰のせいだと思ってますの!?」

「永川が帽子を飛ばしたせい」

「うっ」

まあ、3人とも怪我をしたんだけどかすり傷ですんで良かった。

ぼく達はいまばあちゃんの家にいた。

「おやおや、にぎやかなこったい」

ばあちゃんのはご機嫌だった。

「ばあちゃんの前言っていた面白い話をを聞きにきた」

「え?」「ん?」

「おお、そうかいでは話そうかね」

ばあちゃんの話は、この島に伝わる神話だった。山の神と海の神の悲しい間違えの話だった。

「もし、この神達が喧嘩をしなかったら誰もいなくなることはありませんでしたの?」

ばあちゃんの話が終わると真っ先に永川が質問する。

「それは、分からないねぇ」

「そう、ですわよね」

落ち込む、そんなことばあちゃんは気にせず続ける。

「でも、後悔はしなかったんじゃないかね、なぜこの話があるかわかるかい?神さまの恥の話など」

ぼく達は首をふる。

「はっはっはっ、ただこう言ってるだけだよ。喧嘩したままで後悔するぐらいならとっととなかなおりしろ、と」

すごく分かりやすい。

「その、千里、さっきは帽子をとってくれてありがとう。そしてごめんなさい、あの時はいいすぎましたわ」

「ううん、こっちこそ、いきなりつかみかかってごめん、落ちた時手を広げてくれてありがとう」

「な、なんで。いや、な、なんのことですのの?」

「ぷっ」

思わず笑ってしまった。そのあと3人で笑った。


「さあ、ここからが本題ですわよ」

永川が座り直す。

「まず、社の取り壊しを止めますわよ」

ここからぼくたちは動き出した。


「社取り壊し反対にご協力下さ〜い」

まずは、署名活動だ。

島の人の多数が反対すれば取り壊しはなくなる。そう永川は話していた。そんなことになっては困るので、賛成派の代表、つまり永川のとうちゃんがぼく達の代表と会談を申し込んで来るだろう、との代表はばあちゃんにお願いした。そうしたらその会談で、永川の代案を提示するというものだ。そして僕たちは動き出した。




「よっしゃー守ったぞー」

そう、成功したのだ。会談は子供だからと見せてもらえなかったが、まあいいだろう。

この話を聞いて千里がありがとうと言いながら大泣きした時はたいへんだったなぁ。

今では山の人も町の人もみんなすれ違うたびにおめでとうとかお疲れ様とかよくやったなって言ってくれる。みんながひとつになれたのかな?

家に帰るとばあちゃんの靴がいつも外出しないのでピカピカなんだけど少し汚れている気がした。気のせいかな?

ばあちゃんは珍しく昼寝をしていた。


ある日のこと島に嵐がやってきた。とてもすごい風と雨で雨戸ががんがん言っていた。

「こりゃ、社が危ないかもねぇ」

ばあちゃんのがつぶやく。

「えっ?」

今、なん‥て

「ぼろっちい建物だからこの雨風じゃあ耐えれんかもしれんねぇ」

それは、いやだなぁ。

ーピリリリリ、ピリリリリー

電話がなる。

「シュン君でておくれ」

「はーい」

電話に出ると先生からだった。

「シュン君ね、シュン君の家に三宝さんと豊穣さん来てない?」

「来てませんけど。どうかしましたか?」

実わねと、先生が話たのは千里と永川が行方不明になったらしい、もしかして‥どうすれば‥

「いきんしゃい」

ばあちゃんだ

「守りたいものがあるんじゃろ守ってみんしゃい、後悔せんように」

「ばあちゃん、うんぼく、行ってくる」

ぼくは家を飛び出した。まずはやまの社だ、そこには、たくさんの動物達が集まっていた。まるで社を守っているようだった。あたりを見回してもふたりはいない次に海の社に行った途中何度も吹き飛ばされそうになった。川では山の人と町の人が協力して氾濫を抑えていた。

でも海の社にも誰もいない。ただ、社を守るかのように不自然に曲がった木があるだけだった。

次は、学校だ。そこにも、いやそこにふたりはいた手をつないで立っていた。

「永川!!千里!!」

ぼくは力の限り叫んだ、暴風の中走った足はもうがくがくだ。

ぼくの声が聞こえると。

ふたりはこちらを向いた。

「わたくしの勝ちですわね」

「‥むー。なんで永川を先に呼んだ」

ふたりは拍子抜けするほど落ち着いていた。

「ハァッハァッ、まるでくるのが分かってたみたいだな」

「そりゃぁしゅんですからね」

「それに、皆がおしえてくれた」

永川と千里がこたえる。皆?

「私たちね、嵐が来てから知ったの、私たちはそれぞれ山の社と海の社の巫女の血を引いているの」

「だから、嫌という程きけえてきますわ。この島の悲鳴が。私たちの力で救って欲しいという願いが」

ふたりの顔は真剣だった。

「どうするの?」

「巫女の存在を消して、それによって生まれるエネルギーで島を守る」

「え、存在を、消す?」

「ええ、そうですわよ。簡単に言うと皆の記憶から消える、ということらしいですわ」

そんな、そんなの

「ダメだ、絶対ダメだ!!!!!」

ぼくは叫ぶ。

「ふふっ、あなたならそうおっしゃってくださると思っておりましたわ」

「その言葉を聞けただけで十分、ありがとう」

そして二人は告げる

「「瞬、大好き」」

二人がぼくの前から消えていく。くぞっ、くそっ。なんで、なんでなんだよ。ぼくの意識はそこまでだった。


ぼくは風邪を引いた。なぜだか嵐の中外へ遊びに行ったせいだ。なんでそんなことしたんだろう。自分でも分からない。ただ、何か大切なものを探していた気がする。今日の授業は島の神話だった。前にばあちゃんに聞いたのですこしつまらなかった。明日から夏休みなので今日は半日授業だ。

学校が終わるとなんとなく椿の林に行った。何でかは分からない。

「お母さん抱っこ」

「はいはい」

そこにはすでに人がいた。

あっ、子供の帽子が風邪に飛ばされ、木に引っかかった。

「あれは届かないわね」

「ぼうし、う、うああぁん」

気がついたら僕は木に登っていた、登り方は一度見ているので分かる。たしかこの時間は風向きが変わるから気をつけないとな。慎重に帽子をとり地面におりた。

「はい、どうぞ」

「わあ、お兄ちゃんありがとう」

母親からも礼を言われた。あれ、なんで?なんでぼくは登り方はをしっているんだ。風のことを知っているんだ。

‥‥

「千里‥」

その名前がでた時、忘れていた記憶がよみがえる。

「あっ、あっ‥永川、森の海の巫女、うああぁ」

ぼくは泣いた。思いっきり。

「またないているんですの、だらしないわよ」

「永川、話しそらさない、私の方が先に思い出した。」

もう、なんだよ、居るじゃんかこんなそばに。くそっ。さあ、あの日の続きといこうか。

「ぼくも千里、永川、ふたりのことが大好きだ!!」


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