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5,Open day
5,Open day
Was the gate
wide open or just ajar?
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「参観日?いいですよ。」
藤堂さんは意外にも、さらりとそう言ってのけた。
「じゃあ昼から半休を取って…。学校か、懐かしいなぁ。」
そんな風に言っていたのに。
楽しみだ、と笑っていたのに。
それなのに。
いつもよりずっと静かな教室。後ろから小さな囁きが聞こえる。奥様同士の世間話。子供の様子なんてそっちのけ。
沖津の中には小さな慢心。
――あのオバサン達も、藤堂さんが来ればきっと息を飲むんだ。藤堂さんは、格好いい。本当に格好いい。
小さく後ろを向いて確かめる。
やっぱり、来ていない。
高校生にもなって、何をそわそわしているんだろう。参観日ごときで。小学校の初めての参観日以来かもしれない。あの日も、なかなかお母さんが来なくて…――。
お母さん…。
お母さん。
突然だった。
苦しくなって、息ができなくなって。
立ち上がって、保健室に駆けた。
自分のゼェゼェ言う音がいやに大きい。
何故だか涙が溢れた。
どうして来てくれないの、藤堂さん!