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「沖津さん。」
担任は、至極優しい口振りで沖津に話し掛けた。放課したての騒がしい教室。
「このプリントのことだけど。もし都合が悪いなら、2人でもいいからね。先生が何でも相談に乗るし。」
この若い女の教師は、真っ直ぐ沖津の目を見て言った。その優しさは荒削りで、少し胸に刺さって痛い。
「…はい。来てくれそうな人、1人いるんで、話をしてみます。」
教師は柔らかい笑顔を作って、頷いた。この人は本当に良い人なんだ。それは分かっている。
ふわりと甘い匂いを残して、教師は沖津の元を去った。
先程配られたプリントに目を落とす。
『授業参観と三者面談のお知らせ』
佐倉にも言った通り、彼は私の保護者ではない。決して、ない。
本当は少し、話すのが恐かった。
今まで私の我儘を笑って受け入れてくれた藤堂さん。でも、これは、今までのとは少し違う。藤堂さんは仕事を休まなくてはならなくなるし、何より。
あのマンションの部屋以外で、彼に会うというのが、少し怖いと思った。
あの部屋は、私の夢。
其れ以外は現実。
私にとって彼は、秘め事だから。