表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/18

3,Dinner




3,Dinner




Dinner is served...




**********




「…あれ。」

煌々と灯りの点った部屋。いつもなら暗闇、の筈。

「お帰りなさい、沖津さん。」

「早かったんですね、珍しい。それに…――」

良い匂い。

「もう出来ますから、荷物置いて、手、洗って来て下さい。」

ネクタイをシャツのポケットに捻込んで、腕捲りをしている。何故だろう、色っぽいのは。

リビングのテーブルには、もう幾つも料理が並べられていた。どれもレストランで出てきそうな本格的なもの。名付けるとしたら「藤堂風ディナーフルコース」。

藤堂さんはとても料理が上手い。でも夜はいつも残業で帰るのが遅いから、沖津が作る。最初の頃はとても嬉しそうにしていたけど、きっと沖津が作る焼きそばやら 焼きうどんやら焼き飯やらが口に合わなかったんだろう。今でも嬉しそうに食べてくれるのは変わらないけれど。

「そんなことありませんよ。僕だって学生時代はそういうものばかり作って食べていましたし。」

でも、其れってあまり想像できない。出来れば無かったことに、出来ませんか。

今じゃ、デザートまで付いて。まあ、これは買ってきたんだろうけど。

藤堂さんが上手いのは料理だけじゃない。家事全般。どんなに仕事に追われていたって、マンションじゃのんびりした雰囲気。なのに、部屋はいつも綺麗で、散らかっているのは私の部屋ばかり。

「美味しいですか?」

会話が途切れたから、だろうか。藤堂さんは料理に視線を落としたまま、話し掛けてきた。

沖津は小さく頷いた。それから、少しだけ間を置いて。

「…――藤堂さん。」

「はい?」

フォークにルッコラを突き刺した藤堂さん。

「私達って、…援交じゃあないですよね?」

藤堂さんは緑の刺さったフォークをゆらゆら揺らしながら、ただ私の方を目を丸くして見ていた。

つまり、驚いているんだ。

「…うーん、アハハ。僕も立場上援交じゃあ無い方が良いかな。」

無い方が良いって事は、そういう関係になっても良い、って事ですか。

「アハハ。どうしたんですか、今日は?随分饒舌ですねぇ。…――ま、君じゃ勃ちませんよ。」

響く笑い声。楽しげに笑う藤堂さん。私にはそのオヤジギャグは分からない。





冗談だって分かっている。

否、冗談を前提とした二人。

そんな危うい関係。

名前を付けるならば…――。




「今のはセクハラです。」




次の日の夜。

部屋にはペチペチという音が響く。

ハンバーグを作る。

これが沖津にできる一番の御馳走だった。




「只今帰りました。」

ドアの開く音がして。足音がキッチンに近づく。

「あ、美味しそうですねぇ。」

紳士はまた、嬉しそうに笑うのだった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ