1,Good morning
1,Good morning
The first thing
in the morning...
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「お早うございます、藤堂さん。」
藤堂さんは毎朝早起きで、私が寝癖いっぱいの頭を掻きながらリビングに行く頃には、もうスーツにきっちりと身を包んで、朝のコーヒーを飲んでいる。
「お早うございます。早くしないと、遅刻しますよ?」
そんなことは分かっている。何を隠そう、もう7時30分なのだ。学校まで40分は掛かる。15分で用意しなくちゃ、間に合わない計算。小さく眉尻を下げて微笑む藤堂さん。
「…もう、諦めます。」
「あ、すぐそんな事を言う。駄目ですよ、駄目。僕は君の保護者。責任があるんです」
「でも、今日の寝癖は酷いんです。15分じゃ無理です。」
「ああ…、何だって君はいつも最初から駄目と決め付けるんでしょうか。」
小さく溜息を吐いて新聞を畳む藤堂さん。そして立ち上がった。
「取り敢えず、座って朝御飯食べなさい。髪は僕が整えてあげます。」
少女は満足そうに笑った。この調子なら車で送ってもらえる気がする。車なら20分。ゆっくり御飯が食べられる。
今日の朝御飯はホットサンド。中身は卵。サラダもある。藤堂さんの料理は美味しい。
優雅な“ぶれっくふぁーすと”。やがて藤堂さんが、私の七つ道具(寝癖直しやらドライヤーやら諸々)を持って戻って来た。長くて力強い指先が髪に触れる。女性の髪の扱いに慣れた仕草、憎たらしい。会社では出世頭。この年で部長。ベンツを乗り回して、この部屋は高層マンションの32階。身に付けるものはどれもブランド物。
紳士、藤堂 晶。
少女、沖津 涼子。
二人の奇妙な生活。
「痛っ。」
髪のもつれに指が引っ掛かって思わず声が出て。引っ込みも付かなくて小さく睨む。藤堂さんは申し訳なさそうに、でも少し苦々しそうに笑って、また指先が私の頭皮を撫でる。
本当は甘えたいだけ、この指先に。