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「うおあたたた、あたまがわれるようだわ……」
泣きやまないお嬢様を胸に抱き、どうやって慰めようか。そう考えていた時だった。そんな間の抜けた声がして、視線を声のした先に向ける。
瓦礫やらを乗り越えて、レスカがすぐそばまできていた。殴られた頭が痛むのか、しきりに手でさすりながら。
「青蘭、だいじょう……ぶじゃなさそうね」
俺に気がついたのか、レスカがふらふらと歩いてきた。そして血まみれの俺を見るなり顔を真っ青にして口もとに手を当てた。血とか駄目な類のようだ。
「ああ、まぁなんとか」
「ミミは、怪我とかしてない?」
「ん、大丈夫そう」
怪我してないですか?耳元に小さく囁くと、お嬢様は何度も何度も頷きを返してくれた。その背中をもう一度撫でる。今の俺には彼女にかける言葉なんて見つからなくて、これができる精一杯の慰めだった。
「よかった。ほんとによかった」
眼に一杯の涙をためて、レスカは感極まったようで、俺達――俺の胸で泣いているミミお嬢様も諸共――に抱きついてきた。わんわんと声をあげて泣きながら、俺とミミお嬢様の存在を確かめる様に交互に抱きついて、頬ずりして、あたまをくしゃくしゃに撫でてくる。
「いて、いててて。痛いよ、レスカ」
「だって、だってぇ……」
レスカが乱暴に抱きついてくるので、傷が痛くて痛くてたまらないのだが、彼女はやめる気配はない。まぁ、しばらくこのままでいいか。
「二人とも、大きな怪我が無くて本当によかった。助けが遅れてごめんな」
「何言ってるのよ、馬鹿。助けてくれてありがと」
「ありがと……ございます……」
ミミお嬢様が、胸の上で小さく声を絞り出した。ああ、もうほら、泣かないの。レスカのそんな声に、ミミお嬢様の泣き声がまた大きくなる。
俺がもう少し早く着いてれば。もう少し手早く片づけられたら。自分を責められずにはいられない。この事態を引き起こしたのは、俺の不手際のせいでもあるのだ。
「……そんな顔しないの。あんたはうまくやったわよ」
俺の内心を察したのか、はたまた表情に出ていたのかは定かではないが、レスカは俺の頭を撫でた。
「そう、かな」
怪訝な顔をした俺の胸を、レスカが握ったこぶしが軽く小突く。
「そうよ。胸を張りなさいな」
また慰める様に頭を撫でられた。これはこれで恥ずかしい。だが、レスカの手は優しく、俺と、泣きじゃくるミミお嬢様の頭を撫で続ける。――俺にそんな記憶はないが、「母」の優しさとはこういうものなのだろう。胸の奥がほのかに暖かくなるような、そんな優しさ。
「……うん。もっと、強くならなきゃな……」
俺はレスカの背中に手を回す。お嬢様を抱き寄せる。
ああ。
温かい。
「あ、ちょっと。それはセクハラです」
「まじかよ台無しじゃねえか」
「まぁ、でも……今は、特別」
ほんの少し、俺は二人を抱きしめる力を強めた。




