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過去。
青年は少年で、少年はどこか遠い国で銃を握っていた。
ぼやけてしまった記憶だが、握りしめた銃の重さと、撃たれた痛みは鮮明に覚えている。
悪夢のような日々だった。そこにやってきた、ネゴシエーター――紛争の解決に立ち居った人間に救われたのはいつだったか。その人間が養父となり、「青蘭」という名前を与えられて、人として生活していく中でも、過去に対する罪の意識と自分に対する卑下の認識は変わる事はなかった。
それは必然とも言えるのかもしれない。
自分は他人とは違うという疎外感で、彼は他人と距離を置くようになってしまった。自分の本質を見抜かれるのが嫌で、自分から人とのかかわりを拒否していた。
だが、こんな自分でもできる事がある、そう言ってくれた人がいた。
こんな自分でも必要としてくれる人がいる。
自分の本質は変わらないし、見抜かれるのも怖い。
だが、その人たちを失うのはもっと怖い。笑顔を、日常を、思い出を、失ってしまうのは怖いんだ。
だから、彼は決めた。
怖がっていてばかりではダメなんだ。
怖くても前に進もう、自分でできる事に命をかけようと。
その為に自分は生まれたんだろうと。そう言い聞かせて。
存在の証明がほしかった。
誰かに必要と言ってほしかった。
誰かとのかかわりを恐れているのに、誰かに必要とされたい自分がいて。
つまるところ、こういうのを自己満足って言うんだろう。
誰かのために一生懸命になれば、その誰かは自分を必要としてくれるんじゃないか。
チンケな存在の確立の仕方だと思う。
仕方ないじゃないか。
生まれがどうとか、過去がどうとか。一番気にするのは誰でもない、俺だ。
仕方ないじゃないか。
そうでもしないと皆に見放されてしまうから。
仕方ないじゃないか。
そんな俺でもできる事があるってわかったんだ。
だったらそれに一生懸命になってみようって。
そう思ったんだ。




