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執事とお嬢と拳銃と!‐With a Butler!‐  作者: gwちゃん
第五話:執事、襲撃、恐怖。
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-6-

 「青蘭!」


 屋敷を出て、駐車場に走っていた俺は、誰かが俺を読んでいるのが聞こえて足を止めた。後ろを振りかえると、旦那様が銀色のアタッシュケースを持ってこちらに走ってきていた。


 「ここにいる、という事は事態は把握しているんだね?」


 「はい。行ってきます」


 事情は旦那様も把握してるらしく、悔しそうに青ざめた顔を歪めた。


 「――頼む。あと、これを持って行ってくれ。きっと役立つから」


 アタッシュケースを開けると、ホルスターに入った拳銃、革製のグローブ。予備のマガジンが4つに、黒い鞘に収まった展開式の警棒が一振り。革製のホルスターを素早く身体に巻きつけ、ベルトで固定する。ちょうど右脇の下に拳銃が、左の脇にマガジンが来る形だ。同じく革製のグローブも手にはめ、警棒の鞘を腰のベルトに通し固定する。


 「あと、これを」


 旦那様がポケットから小さな箱のようなものを取り出し、俺に放った。空中でキャッチしたそれは小さなイヤホンだ。ハンズフリーで通話するための物らしく、無線式で片耳にかけて使うものだ。いつも俺たちが耳につけているものとは違うもので、一回り大きかった。


 「なんですか、これ」


 「ナビ用に、だ。使えばわかる。発車したらインカム横のボタンを押してみてくれ」


 言われるままそれを耳に嵌め、ヘルメットをかぶる。インカムがヘルメットに干渉するかと思ったが、サイズが小さい為か干渉はしなかった。


 「頼んだよ」


 旦那様の言葉に手で応え、バイク――XJRのエンジンをかける。クラッチを握り、ギアをローに。アクセルを捻るとタイヤがコンクリートを激しくこする音が響く。ブレーキから手を離し、俺はXJRを発車させた。ミラーに映る旦那様が一気に小さくなり、見えなくなるまでそう時間はかからなかった。


出発してすぐ、俺は言われた通りヘルメットの隙間からインカムのボタンを押しこんだ。数度低い電子音が響く。たぶん旦那様の携帯か何かとつながっているんだろう。


 「オはよウごザイマス」


 だがしかし聞こえてくると思った旦那様の声の代わりに、発音のぎこちない機械的な女性の声が耳に入る。いや、声の質的には少女に近いかもしれない。


 「私ノ名前はオデットと申シマス。マイマスター。衛星軌道上より衛星を通シて貴方の生活の様々なオ役ニたつ為ニ開発サレマシた。よロシくオ願イシマス。マスター、オ名前をオ伺イシテもよろシイでスカ?」


 「赤妻青蘭だ!」


 状況がよく飲み込めないが、とりあえず返事をする。


 「畏マりマシタ……コれより、私の全ては貴方の為に」


 「ああ……よろしく」


 音声によるナビゲーションシステム。そう言えば、レスカに迷子になるならナビを付けろと朝怒られたばかりだったな。因果な物だ、と苦笑する。


 「マスター、指示ヲ」


 「ミミお嬢様の位置、わかるか?」


 笑みが口元に浮かんだのは一瞬で、すぐに気を引き締める。


 「イエス、マスター。…………検索完了。ナビゲーションスタートしマスか?」


 「頼む。頼りにしてるぞ」


 「アイ、マスター。ナビゲーション、スタートシマス」


 俺の言葉に、ナビ――オデットは即答を返してくれた。機械音声ながら、ほのかにうれしそうな声色で。





同日 午後18時48分


 「ちょっと、なんなのよ!?」


 レスカはミラー越しに後ろを振り返り、悪態をついた。後部座席ではミミが怯えたように身体を丸めうずくまっている。


 ミミを学校まで迎えに行き、帰りの道すがら、今日の晩御飯の献立と今朝の青蘭の失態についてミミと話していた時だった。


 突然、白いバンに周りを囲まれた。逃げ場を与えぬかのように囲まれて、段々と人気のない所まで誘導されていく。逃げようとしたが、四方を囲まれた状態ではそれもかなわず、気が付いたら東奥市の外れ、東奥埠頭の近くまで誘導されていた。


 ――このロリコン共!ミミが何したって言うのよ!?


 レスカは内心毒づく。どうせ狙いはミミなのだ。これまで幾度もあった、ミミに対する襲撃。何度も対策を練り、策を講じたが、まさかこんな簡単に破られるとは。一般人に偽装したSP達もいつの間にかはぐれ、孤立していた。


 威嚇なのか拳銃による射撃を幾度も喰らい、車のサイドミラーは吹き飛び、窓には放射状のひびが入っていた。


 屋敷に連絡は入れた。すぐに助けは来るだろう。


 ――右から衝撃。ミミの悲鳴。ぶれたハンドルを、悲鳴を上げそうになりながらも何とか切り返し、体勢を立て直す。左側のバンが少し車間距離を取った。


 もう一度バックミラー越しに後ろを振り返る。


 「ミミ、しっかり掴まってなさいな」


 彼女が小さく頷くのが見えた。


 レスカは目元の涙をぬぐい、大きく息を吸うと、ギアを入れ替え巧みなハンドル裁きでバンの間を縫うように車を加速させた。


 ――誰でも良いから、助けて。


 何故か、脳裏に青蘭の顔がちらついた。


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