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執事とお嬢と拳銃と!‐With a Butler!‐  作者: gwちゃん
第四話:執事、お嬢、距離。
23/44

‐3‐

 見回すが案の定弁当類は無い。


 嘆息するが、仕方ないので、缶コーヒーと紙パックの紅茶を一つずつ、菓子パンを幾つかと適当に買い置き用にお菓子をオレンジ色の手籠に放りこむ。新発売、とポップのついたチョコレートに目が止まり、ついそれも籠の中に。


 「あ、すみません、肉まんを一つ」


 一つだけ残っていた肉まん……肌寒さにぬくもりを求めていた、と言うかあったかい食べ物が食べたくて、それも買ってしまった。コンビニに来るとつい買いすぎてしまうのは、悪い癖なのだろうか。苦笑した俺に、店員は怪訝な顔で俺を見つめていた。



 同日 午前1時55分


 屋敷に戻った俺は、また端っこにバイクを停車させた。荷物片手に、裏口にキーを指し、半ば回した所で浮かんだ考え。


 ――外で食べるのも、良いかもしれない。


 円塔寺の屋敷がある丘は、東奥市市街地を見渡せるほどの高さがある。その夜景を見ながらの食事もいいかもしれない。幸いにも夜なので、人目にはつかないだろう。


 鍵をひきぬき、俺はまだ見ぬベストプレイスを求め歩き出した。まるで秘密基地を探すような、ふわふわとした期待と不安とが入り混じった心持ち。一歩歩くごとに興奮の度合いも大きくなる。今や未開の地を彷徨う冒険者の気分だ。


 深夜1時過ぎ。眠さもピークを越し、不思議と気分が高揚してくる。それを俗に、深夜のテンションと人は言う。感情の赴くまま日記やら書いたりすると筆が乗りなぜか詩的になったりして、「あれ、俺才能あるんじゃね?」的に斜め方向に錯覚するが新ためて後日読むと恥ずかしさに身悶えする、そんなトラウマを生むあの魔性の時間帯である。


 うきうきと屋敷の壁伝いに歩いて行くと、屋敷の裏手に屋根らしきものが見えた。石造りのしっかりした壁に、同じく石造りのベンチが壁に沿って設置してあった。

 どうも展望台、らしい。


 それを体現するかのように、ここから見える夜景は――東奥市の中心を流れる川にかかるビクトリアブリッジがライトアップされた様や、生活の証である家々の光がまるで星々が地上に落ちてきたかのように煌めき、心奪われるほどに綺麗だ。


 ぱっと見、屋敷裏にあるので人目には付きにくい場所だと思う。


 ――ベストプレイス(仮)発見!!


 心躍る妙な達成感と満足を胸に、俺はベンチに腰掛ける。そして、夜景を見つめながら、腹の虫を黙らせるべく肉まんを手に取った。


 初夏がすぐそことはいえ、少し肌寒くも感じるその緩やかな風の流れ。柔らかい木々の葉がこすれる音がかすかに聞こえる。ともかく、なにやら一人で考え事したりするにはもってこいの素晴らしい場所だ。喧騒も街灯のまぶしさもどこか遠くの世界の事のように感じる。


 肉まんを食べ終わり、メロンパンにかじりつきコーヒーで一息淹れ、俺は深くため息をついた。夜風で石造りのベンチは冷え、その冷たさが微かにズボンの布越しに感じ取れた。


 しばらくそのまま、椅子に体を預ける。


 揺れる木々や草花の触れあう音、頬を撫でる風の感触、静かに時間を過ごすのに邪魔にならない大きさで耳朶をうつ虫の声は、とても心地よい。


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