エピローグ①
さて、白い牢屋に閉じ込められてから五日目の朝、私たちは釈放された。釈放を告げに、白い空間の前までやってきたピチカートはエメラルドで編んだような豪華なドレスを着ていたが、その顔はとても不機嫌そうだった。
釈放を認めたくない目をしていた。
聞くところによると、パレードの前座を務めるザ・フォレスタルズのボーカル、ノウラが私たちを釈放するように国王に懇願した、ということだった。ノウラがグローブを差し出すと、国王は二つ返事でオーケーを出したらしい。国王はコレクターである。私の所有物も何点か国王はコレクションしているはずだ。
私はとても気持ち悪い、と思いながらも釈放の理由に納得し、ノウラに感謝した。ミリカが彼女と知り合いだったことは、牢屋から出て聞かされた。そしてステージを見に行く、という約束をノウラとしている、ということを聞いた。
この日は、一年に一度の、魔女たちのパレードの日だったのだ。すっかり忘れていた。去年の今頃も確か、空気が特別だった。私は何かを不意に忘れることが多い。それは誰かを愛した記憶から、積分の公式まで幅広い。昔から、何かを忘れるたびにミリカは顔を赤くして怒るのが常だった。
城壁を潜り、私たちは久しぶりに外の空気を吸った。
ファーファルタウの街は夕方から始まるパレードに向けて色めき立っていた。
その騒がしさが、今の私にはとても居心地がよかった。
振り返ると、城壁の前で、アメリアとピチカートは見つめ合っていた。
「……私が言ったんだよね、愉快になりなさいって」
「ごめんなさい、後で、部屋を片づけに来ます」
「そんな、いいわよ、だって、アメリアの部屋には私のものしかなかったじゃない」
ピチカートは優しく、アメリアの左目の下に絆創膏を貼った。
鈍感なのか、アメリアはあれだけムウミンとミリカがからかっても自分のハートマークに気付いていなかった。本人が絆創膏を剥がして鏡を見て大騒ぎするのは結構後になってからの話だ。今は詳しく話せない。とにかく、ピチカートとアメリアの関係は新しくなった。解かれたわけじゃない。去り際、ピチカートの私を睨む目を見たら、誰だって関係が終わったとは思えない。
それにしても、ピチカートがアメリアに描いたハートマークは、一体なんなのだろうか? 呪いには変わりないけれど。




