第六章④
ピチカートは東洋の魔女を牢に入れ、施錠した。その牢は特別なものだった。壁がどこにあるのか分からないほどの、立方体の全面が均一な白で覆われていた。あらゆる魔法はその空間内で瞬時に解かれ、無効化する。東洋の魔女は宮殿の魔女の平穏な生活を乱した。その罪は十年に値する。そして第一級犯罪者、とはいえないものの魔女たちのプライドを引き裂いた愚行によって、この牢に入る資格が、東洋の魔女にはある。
「コレで、ひとまず一件落着かな、」ピチカートの隣でシャーロットが息を付く。「なんだか、今日は長い一日だった、ねぇ、ピチカート、久しぶりにお風呂、一緒にはいろうよ」
「まだ、一日は終わってないわ」ピチカートは牢の中の魔女をじっと見ていた。
「……いくら、技量が高かったって、ここに入れられたら何も出来ないよ」
「分かっているわ、」ピチカートは自分に言い聞かせるように言った。「でも、まだ、何か、隠しているんじゃないかって、心がざわついているの、きっと、気のせい、よね?」
そのときだった。
ビッグ・ベルの鐘が鳴った。その音は牢のある地下までも届く。
宮殿に仕える魔女たちだけが分かる、サインを送っている。
ソレは、厳戒態勢を伝えるとともに、宮殿の異変を知らせている。つまり、魔女は早急に宮殿に終結しろ、ということだ。
異例の事態だ。ピチカートが宮殿に来て三年。ベルが、異変を伝えることはなかった。
シャーロットと顔を見合わせる。
二人は駆け出した。階段を駆け上がる。
牢の前には誰もいなくなった。
「……爪が甘い、日本だったら生きていけないよ、お二人さん、」東洋の魔女は、ミリカは目を開いた。ミリカはメイド服のポケットからマッチを取り出す。擦ると、オレンジ色の炎が上がる。それを見えない糸に近づけた。炎は糸に乗り移り、生き物のようにミリカから離れていく。ミリカはマッチを吹き消した。炎は牢を抜け、ゆっくりと階段を登って行った。ミリカは五指を組んで目を閉じ、祈るポーズをした。「ああ、神様、どうか、火種をお守りください」




