第六章②
ヘンリエッタは温いコーラを二本持って、アメリアの部屋へと歩いた。東洋の魔女がピチカートとシャーロットによって拘束され、宮殿は少し静寂を取り戻しつつあった。夕食を食べに魔女たちが食堂に集まってきたから、それを機会にヘンリエッタは食堂から出たのだ。一人で様々なことを考えた。答えのないことを考えていたから、少し頭に血が上って、疲れた。そういう時は、冷えたコーラとアメリアがいい。
しかし、残念ながら温いコーラしかなかった。
それでもないよりまし。
ヘンリエッタはアメリアの部屋をノックした。
「アメリア?」
ヘンリエッタは口実をまとめていた。アメリアの部屋に来たことの理由である。ただ顔を見たいから、声を聞きたいから、少し触りたいからなんて理由はヘンリエッタの口は言わない。だから、きっとヘンリエッタみたいに落ち込んでいる、アメリアに「気分はどう?」と少し優しく言おうと思った。
しかし。
なかなか、返事がなかった。眠ってしまったのだろうか?
鍵は……?
開いている。
ヘンリエッタはドアノブを回して押し開く。
風が、ヘンリエッタに降り注いで、ヘンリエッタのストロベリーブロンドを揺らす。
強い風。
思わず顔を背けるほどの風圧。
手の平をかざす。
風は、夜空から注がれていた。
シルクのカーテンがはためいて、僅かに音を立てている。
風が逃げ場を見つけて、落ち着くと、ヘンリエッタはやっと部屋の中を見回すことが出来た。
不自然に、床に転がる二つのボトル。
天井に向けて開かれた、ページがボトルの形にくり抜かれた百科事典。
回るレコードプレイヤ。
ベッドの上は滅茶苦茶で。
脱ぎ捨てられた、宮殿の魔女の制服と、その上に微笑んだアメリアの顔写真。
許可証のものだ。
ヘンリエッタはソレを手にして、窓から、顔を出した。「……どこの空を飛んでるの?」




